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Girls like me

 パパが訊くなら言わなきゃいけないよね、まだわたしのこと知らないでしょ。紹介したい人がいる、きっと驚くけど悲鳴は上げないで。彼女は料理は苦手だけど、わたしが代わりにやってるの。洗濯は二人でする、彼女は畳むの得意なの。彼女はわたしより脚が長いけどくびれはわたしのほうがあるかもね。

 パパは未来の旦那を怒鳴りつける準備をしてただろうけど、そんなこと考えなくて済む。だってわたしが紹介したいのはガールフレンドなんだから。

 女の子の汗の混じった甘い匂いが好き、しっとりした皮膚と、ふくらんだ胸と赤い唇、そばかすやしみまで好きなの、小さい頃から、きっと生まれたときからね。

 それともう一つはっきりしてるのは、女の子達もわたしを好きってこと、わかる? 女の子達はわたしが好き。わたしは柔らかく女らしくも振る舞える、あの花柄のワンピースはお気に入りだけど、時には毒を持ったとかげのように機敏に鋭くも振る舞える。女の子達はそんなわたしを見てたまんない気持ちになるの、ねえ、パパ、知ってた?
 つまり、わたしは昼間は美女で夜は野獣なの、これは驕りじゃなく、女の子達はわたしをそう呼んでくれる。野獣ってよりは、わたしは自分のことを蛇だみたいだと思うけど。

 舌を吸わせてくれたらわたしがどれだけ魅力的か女の子達は知ることになる、そう、パパ、男達には悪いけどわたしは女が好きなの。男とキスしても得られない喜び、言葉に表せないねっとりしてかつきらきらしたものを女は与えてくれる。女とキスするのが好き、女の白い乳房と腹の境目に舌を這わせるのが好きで、女に足を撫でられるのが一番気持ちいいの。

 誤解してほしくないけど、わたしは女にまさしく心を渡している。彼女の瞳を、瞳孔が収縮するのを見ていると、心のかけらをそこへ捧げたくなる。きっと価値のあるはずのそれをどうか受け取ってほしいと必死なの、確かよ。
 女と一緒にいるとわたしは女帝のように立派で尊く威厳に満ちた存在になれる。私も女をそんなふうにしてあげたいといつも思うわ。

 暗い部屋で音楽をかけていると、ドラッグでも吸ったかのように何かのスイッチが入り、月明かりの中頭と腰を振るわたしは、驚くほど美しく獰猛で愛しいのだと彼女が言う。わたしは彼女の存在すら忘れて曲に没頭し、Tシャツが背中と腹に張りつくまで踊り続ける。動きを止めて荒く息をするとエアコンの風が汗を冷やし、ベッドの上でわたしを見つめている彼女に気づく。彼女はわたしの冷たい汗を孕んだ腕で唇を求められるのが好きだと言うの。

 ねえ、どうか気絶しないでよ、パパ、わたしは女が好きってだけなの。女もわたしが好きなの、わたしの髪も、目も鼻も、唇も、女のために割る腹筋も愛してとろけてくれる、それだけよ。
男は大きくて面白いとは思うけど、女の子は楽しくて可愛くてかっこよくてセクシーでわたしの胸をゾクゾクさせてくれるから、わたしにとっては全然違うもの。女が好き、女はわたしが好き、パパが訊くから答えただけよ。


※トドリックホールのI Like Boysを聴きながら書きました。

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