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名古屋シネマテーク閉館とミニシアターの現状

以下は2023年7月25日に綴った文章です。

ミニシアターが閉館するたびに、世間のニュースでは必ず「コロナ禍で客が減少」と言う謳い文句が付いていることに疑問を感じていました。
単にコロナだけではない、様々な原因が絡み合っていると思います。それは制作側にもあるのでしょうが、私は観客の立場から見て、考察してみようと思います。

私が高校生だった90年代初期は、ミニシアターブーム全盛期で、本当に良い条件で映画が観れていたのだと、与えられていたのだと今は思います。現代の日本は人口減少によりシニアは増加し、私が実際にミニシアターに行くと客層は自分を含めて中高年が圧倒的に多く、観る映画に寄りますが、感覚的には若者が少ないです。

アナログだった私の青春時代とは違い、これだけ配信が充実し、YouTube、SNSなどの膨大な映像コンテンツ、更に増え続ける映画から追われる感覚だと例えられる気持ちも正直分からなくはないです。
時間や精神的に余裕のない若者が増え、彼らを中心に倍速視聴をして映画(映像)を情報として消費する有り様には、虚しさを覚えます。価値観の多様性により、映画館で映画を観る感動や、有り難みを知らないことは、結果的に自分の首を絞める事になります。心の豊かさを失い、日本も戦争の時代へと逆行しているのです。

しかし、若者が全く映画館で観ない訳ではなく、まず映画館で観たい映画がない事と、実際には、2000円を払ってまで映画館で観る価値があるほど本当に面白いのかと、他人が評価した良作及び傑作しか観ないと言う消極的な姿勢も見受けられます。そのように、自らが能動的に映画を観ないため、映画を見極める目が養われず、ますます映画離れし、良質な映画館が潰れていきます。ミニシアターでは、シネコンと違い上映期間や上映時間が限られるため、目当ての映画を観るために、こちらも努力が必要ですが、その一期一会で得るものが大きいのです。
それができない悪循環と、日本の映画や芸術に対する価値観の乏しさが、ますます表面化した結果だと思います。

名古屋シネマテークの閉館を知って、早くも2ヶ月が経ち、あと4日で閉館を迎えます。言葉に表せないほどの喪失感に打ちひしがれています。
しかし物質的な場所は消えても、ここで映画を観た体験はずっと消えませんし、一生の宝です。シネマテークで映画を観て、涙を流しながら(一般的な感動モノでは全くありませんが)劇場を後にしたことが何度もあります。シネマテークで私の映画の世界が広がった事、深く映画を味わえたことを、これまで映画館を存続させるため41年間努力を続けてこられた名古屋シネマテークの関係者の方々に、心から感謝しております。
優れた映画は時代を超越し、改めて映画は永遠であること、後世に引き継がれていくべき芸術だと思います。そのために考えていきたいです。

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