奇才の写真家、深瀬昌久をご存知ですか?
『私はみめうるわしい可愛い猫でなく、
猫の瞳に私を映しながら、その愛しさを
撮りたかった。』
今じわじわと深瀬昌久の再評価が
高まって来ている・・・気がします。
彼は土門拳の31歳年下で、荒木経惟さんと
森山大道さんの4つ年下である。そう言うと
だいたい年代はイメージ出来るかもしれません。
ただ残念なことに上記のビッグネームの
陰に隠れてしまい、あまり世間的には有名では
ないというのが実際のところなのではないでしょうか。
荒木さんも森山さんも陰キャラか陽キャラ
かで言えばどちらかと言えば前者でしょう。
ただ、深瀬さんはさらにその上を行く
陰キャラの極地といえそうです。ちょっと
ダーク過ぎて万人ウケはむつかしそうですが
どうもニューヨークの近代美術館MoMAでも
共同個展をやったりしているそうです
(wikiによると)。また展覧会の解説によると
彼の写真は写真集『RAVENS』(カラス)を筆頭に
アメリカで高い評価を受けているそうです。かなり
ぶっ飛んだ写真集で、今はプレミアがついてかなり高いです。
たしかにアメリカ人にはかなりウケがよさそうなテイストです。
東京都写真美術館(※)で彼の作品が展示されて
ありました。今年(2023年)の中ばの個展です。
メインは土門拳でしたが、2階で深瀬さんの
写真が回顧展に近い形で展示されていました。
つまり初期から後期まで個人蔵、※蔵も含め
多くの写真が展示されてありました。
それでは展覧会の解説を僕個人の美術ノートに
メモしてあるので、それらをまとめて説明していきます。
✴︎
1976年の春、深瀬さんは結婚生活を破綻されてしまい、そこから逃れるように旅行に出られます。幼年の頃過ごした北海道へと向かい、函館から故郷の美深町まで北上し、根室の納沙不山町、釧路、標茶(しべちゃ)、トドワラ、美幌、綱走、襟裳岬、などを訪れ、これらの地域に数多く生息するカラスにレンズを向けました。東京に戻り、彼の知人の山岸さんと言う方に写真を見せるとカラスがよく写っていることから「鴉」をタイトルにすることを薦められ、1976年に15年ぶりに写真展「鴉」を開催されたそうです。この展示により翌77年に第2回伊奈信男賞を受賞し、本作は深瀬さんの代表作の一つとなったそうです。展示後、道中ではあくまで原風景の一部として捉えていたカラスそのものを意識的に取ろうと決めたらしく、北海道や彼の妻である洋子さんの故郷・金沢で撮影を続けられたそうです。その数日後には「ぼく自身が鴉だと居直っていた」という心境にさらのる変化が訪れたみたいで、写真の視座にもカラスの視点から見た風景への変化が見られるようになったそうです。
彼は日本のダークな側面にフォーカスし、床が血まみれになった豚の屠場、妻だけ上半身ヌードの謎の家族写真、憂鬱な影を引きずるビジネスパーソンたちの後ろ姿などなど、見ているだけで気持ちが沼の底に引きずり込まれるような被写体ばかりです。ただ、あまりにも写真がネガティブ過ぎて、見終える頃には、逆に気持ちが軽くなってる自分がいるから驚きます。悲しい時には悲しい音楽を・・・の写真版と言えそうです。機会があればぜひ見てほしい、推しの写真家です。今人気のソール・ライター、ヴィヴィアン・マイヤー、ウォルフガング・ティルマンスもすばらしい写真家です。しかし日本にかつて生きた彼らに匹敵する奇才深瀬昌久もぜひとも覚えていただきたいです。今混沌とした社会に生きる僕たちに彼の写真は多くの訴えかけてくる何かがあるように思います。
✴︎
✴︎
✴︎参考url
✴︎✳︎✴︎
個展への道中見つけた光景
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?