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Gaboのショートショート「百年の誤読」

コロンビアのノーベル賞受賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケスは、”Gabo” の愛称で親しまれていた。ノーベル賞受賞の理由となったのは、1967年出版され、日本でも1972年に翻訳された「百年の孤独」である。GARNET CROWによるアニメ映画『真救世主伝説 北斗の拳ZERO ケンシロウ伝』主題歌のタイトルや麦焼酎の銘柄名に採用されるほどに有名だが、あまりの大作で、実際の読者は多くなかったのであろうか、50年の時を経てやっと文庫化されることになり、今年6月26日に発売が決定されたそうだ。老眼には、文庫本を購入して読み通すのはしんどいので、代替の短編作品でも読んでみようかと思い立ち、"Gabriel García Márquez microrrelato" と検索してみると、"El Drama del Descantado" という99語からなる作品がネットに溢れている。その出自を調べてみると、1981年5月11日、スペインの El País 紙に掲載された “Como ánimas en pena” という記事の中で語られた小作品で、きちんと出版されたものではないようだ。下にその新聞記事のリンク、物語部分の抜粋、どなたかが朗読したYouTube動画を挙げておく

El Drama del Desencantado

…el drama del desencantado que se arrojó a la calle desde el décimo piso, y a medida que caía iba viendo a través de las ventanas la intimidad de sus vecinos, las pequeñas tragedias domésticas, los amores furtivos, los breves instantes de felicidad, cuyas noticias no habían llegado nunca hasta la escalera común, de modo que en el instante de reventarse contra el pavimento de la calle había cambiado por completo su concepción del mundo, y había llegado a la conclusión de que aquella vida que abandonaba para siempre por la puerta falsa valía la pena de ser vivida.

"El Drama del Descantado" Gabriel García Márquez 


ぱっと読んでわからない単語も多く、いろいろな自動翻訳サービスを試してみた。

…幻滅した男のドラマ。10階から路上に身を投げ、転落しながら窓越しに見たのは、隣人たちの親密さ、家庭内でのささやかな悲劇、密かな愛、つかの間の幸福の瞬間、そしてニュースだった。彼らは共通の階段に到達したことがなかったので、通りの歩道に激突した瞬間に、彼らの世界の概念は完全に変わり、彼らは自分たちが永遠に放棄していた人生は、この階段によって永遠に放棄されたものであるという結論に達しました。偽りの扉 生きる価値があった。

Google翻訳

前半はいいにしても、「彼ら」が登場してから意味不明。

... 10階から通りに身を投げた幻滅した男のドラマ、そして彼が落ちた時、彼は窓越しに隣人の親密さ、家庭内の小さな悲劇、密猟の愛、束の間の幸せを見たが、そのニュースは一般的な階段には届かなかった。だから、通りの舗道に飛び込んだ瞬間に、彼は世界の概念を完全に変えた。そして彼は、偽のドアによって永遠に諦めた人生は生きる価値があるという結論に達した。

みらい翻訳

彼はどこでもドアで助かったのか?

…幻滅した男が10階から通りに身を投げ、転倒した時、窓越しに隣人の親密さ、家庭内のささやかな悲劇、ひそかな愛、つかの間の幸福の瞬間を見たが、その知らせは共通の階段に届かなかったので、通りの舗道にぶつかる瞬間に、彼は世界の概念を完全に変えてしまった。 そして彼は、偽りの扉から永遠に残そうとしている人生は生きる価値があるという結論に達しました。

Bing翻訳

偽りの扉は時空間を捻じ曲げるという星新一風のSFショートショートか?

…失望した人は10階から街の芝居に飛び込んだ。彼が転んだ時、彼は窓から隣人の親密な関係、核家族の悲劇、浮気、短い幸せな時を見た。彼らのニュースは普通の階段を登ったことがなかったので、彼が街の歩道にぶつかった瞬間、彼は彼の世界観を完全に変えた。彼が出した結論は、彼が永遠に偽の門を離れる生活はやりがいがあるということだ。

百度翻译

芝居、転ぶ、核家族…単語レベルの誤訳が多い。中国の現状を考えると、「核家族」の間違いはシニカルで、小さな悲劇では済まされない。

...10階から通りに身を投げ、落下しながら窓越しに隣人たちの親密さ、家庭内の小さな悲劇、ひそやかな恋、束の間の幸福を見た、幻滅した男のドラマ、その知らせは共用階段には届かず、通りの舗道に飛び出した瞬間に、彼は世界に対する観念を完全に変え、裏口から永遠に去ろうとしている人生は生きるに値するものだという結論に達した。

DeepL翻訳

さすが、大本命!大意は捉えられているようです。しかし、新聞記事などの翻訳で使うときは、もっと精度が高いので、文学作品というコンテキストのせいか、Gaboの癖のある文体のせいなのかを判断する能力は私にはありません。

…失意の男の痛ましい物語、その男は10階から通りへ身を投げたのだが、落下しながら窓越しに見えてきたのは、親しげな近所付き合い、家庭内のちょっとした揉め事、秘めた逢瀬、束の間の幸せ、そんなニュースは共用階段まで届くことはなかったものだから、通りの石畳にあたって砕ける間際になって、世間の捉え方が一変し、三途の川を渡って人生に永遠の見切りがつくという矢先に、そんな人生でも生きられた甲斐があったのだという結論に至ったのだ。

拙訳

あと出しじゃんけんでもなお拙い私訳です。私見ですが、"puerta falsa" の訳は、「偽扉(ぎひ)」が適切だと思うのです。古代エジプトのお墓で生の世界と死の世界を繋ぐとして設置された飾りの扉のことだそうで、敢えて日本文化に寄せて「三途の川を渡る」としてみました。10階は日本では11階であるということ以上の根本的な間違いがあるかもしれません。そのときは、御指摘いただけると、嬉しいです。


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