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【映画】出遅れながらもアリアスターを巡る旅

脳内がミッドサマーに囚われて早一ヶ月が経過しました。
囚われた過去且つ現在については下記note×2をご参照ください。長いです。

↑通常版

↑DC版

ミッドサマーを観てから、誇張なしに、多分一ヶ月間、一日三回程度はミッドサマーについて考えていたと思います。noteに一先ずまとめて落ち着いたはいいものの、案の定、今度はアリアスター監督そのもののことが気になり、ミッドサマー⇒ミッドサマーDC⇒過去の短編作品+アリアスター短編読本⇒長編映画デビュー作である『ヘレディタリー/継承』と、アリアスター監督巡りを一先ず終えたのでまたnoteを綴ります。今回は本当に日記程度です。自分で言うのもなんだけど、ミッドサマーのnote長過ぎでしょ引くわ。


●アリアスター短編と、その読本

こんなにも私がミッドサマーに囚われていた中、「映画パンフは宇宙だ」さんがアリアスター短編作品徹底解説読本というとんでもないものを作ってらっしゃいました。

しかし、これについて私は見事に出遅れ。第一版がすでに売り切れていて手に入らなかったのは仕方ないにしても、そんな人のために、予約すれば全員が手に入れられる受注生産という対応を行ってらっしゃったのに、締め切り日の後に気づいてしまうという……しばし落ち込みました(情弱)。

ただその後、再版分を無事ゲットしたので結果良ければ全て良し!

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中身に関して詳しい言及は避けますが、大満足でした。
装丁、内容、制作に至るまでなど、全てをとっても千円はどう考えても安すぎます。

なんてったってタイトルがいい。『”I HOPE THAT PEOPLE WILL FEEL UNSETTLED.”(みんなが不安になってくれるといいな)』ここに全てが集約されている……。

こちらの本は、アリアスターがデビュー前に制作していた過去の短編作品の脚本翻訳+それぞれの短編についてのコラムが主となっており、短編一本一本を味わうのに適した内容となっています。さらには短編映像のURLにリンクすることができるQRコード付。親切!

本編とコラムがセットでおいしくいただけるのが良い。特に好きだったのは「ジョンソン家の奇妙なこと」に間する精神科医・斎藤学先生のコラム。あの作品を観た後に読むものとして適しすぎててちょっと震えました。「ジョンソン家の奇妙なこと」は「こうきたか……」と冒頭で頭を抱えながら思える作品だけど、なんと本編後のコラムでも同じ感情を抱けるという。
「みんなが不安になってくれるといいな」をアリアスターだけじゃなく執筆者もしかけてくる仕組みになっています。たまりません。

余談ですが、これに関連して、一緒に住んでいる彼氏の話をします。アリアスター作品は好き嫌いがわかれることは間違いないと思います。私のように好きかどうかはちょっとまだよくわからないけど何らかの魅力で囚われる人間もいれば、嫌い、もう観たくない、という人もいる。ただ、好き嫌いが分かれるであろうこと以前に、そもそも触れたくすらない、と感じている人種もいるという話です。
私がミッドサマーを観たい、と言い始めてから、実際に観に行き囚われ、さらにDC版を観に行くに至るまで、彼はずっと横で「いってらっしゃい」と送り出してくれました。
私は決して彼を誘って行こうとはしません。私には『セブン事件』という前科があり、「え、観てないの? 面白いから一緒に観ようか」と、かの有名作である『セブン』を観せたところ、彼が精神の回復に一日くらいかかったという事件です。

話を聞く限り、彼はどうしても登場人物たちの辛い運命に共感して精神的に辛くなってしまうらしいのです。私は純粋に作品として面白いからと思ってすすめたのですが、「面白いけど、面白いのはわかるんだけど~……」となってしまうらしい。

などという前科があったので、私はミッドサマーについてちょっと情報を得てるだけでも「これは絶対ダメなやつだろうな」と確信があり、誘いもせず一人で観に行った。時期も時期だったし。観て「面白かった!!」とは言ったけど感想を述べることもなく、DC版観に行くのも特に誘わず一人で。

ただ、前述したようにミッドサマーについてとにかく囚われていたし、人に話そうにも飲み会とかやるようなご時世じゃないし、だんだんと身近な人に話したいことがたまってくる。ミッドサマーは絶対ダメだろうけど、短編についてなら、ちょっとくらいいいんじゃないかな(注意:自分基準)と思い、さらには読後のイキイキしたテンションも影響してしまって。「ジョンソン家の奇妙なこと」について、ちょっとだけあらすじを話してみてしまったんですよね。
「息子が自慰行為をしていて、そのとき見ていた写真が実は●●で」のあたりからもう一気に彼の表情が沈んでいき、最終的には「聞きたくない」といってYoutubeでステーキを焼く動画を見始めたのでした(心を落ち着かせるためらしい)。続けて斎藤学先生のコラムについて、「このオチが……」とも話したんですけどダメでした。「もう二度とその監督の映画には触れないようにする」とも言い出す始末。アリアスターのことにこんなに興味を持っている人間と、二度と触れないようにしている人間が一緒に住んでいるの、意味わかんなくておもしろい……。
などなど余談でした。「みんなが不安になってくれるといいな」というキャッチフレーズを聞いて「嫌だやめて!」と思わない人、そもそもアリアスターに興味がある人にはおすすめです。

ちなみに、「映画パンフは宇宙だ」さんの活動は今回初めて知ったのですが、過去の制作物もめっちゃいい……かもめ食堂のとかすごくかわいい……。


●『ヘレディタリー/継承』恐るべきデビュー作

出遅れアリアスター巡りは、ミッドサマーと短編を経て、ついに、順番は逆ではありますが長編デビュー作である『ヘレディタリー/継承』へ。
以下ネタバレ有りとまでいかないけど、観た人向け。

やっと手を出しました。再上映も行われているのでギリギリまで迷いつつも、ご時世的に断念して家で鑑賞。ただ、見終わった後に思ったのは「映画館で見たかった」ということ。どうせなら味わい尽くしたかった。

というのもやっぱりアリアスター作品、音が怖い
前述したアリアスターアレルギーの同居している彼氏(一本も見たことがないけど)を起こさないように、夜に部屋を暗くして小さめの音で見たんだけど、音が気になる箇所があり、翌日昼に気になった箇所を再度流していたら、やっぱ音が怖かった。一つひとつ噛みしめて聞きたかったところ。後半の、あの、ね、天井から落ちる音とかね、うん。

後、顔が怖い
お母さん役のトニ・コレットと娘役のミリー・シャピロ、失礼かもしれませんが、いや、ホラー映画に適しすぎでは?(すみません)顔が怖いのはその二人だけど、とにかく母も娘も息子も父も、皆演技が迫真過ぎる。
息子役(アレックス・ウルフ)は『ジュマンジ』でも観たお顔だけど、ミッドサマーのフローレンス・ピューと同じく、若いのに演技力が凄まじくて驚くばかり。悲惨な事故の後、車から降りてからの、流しっぱなしのシーン素晴らしいですね……。父役(ガブリエル・バーン)も、『ユージュアルサスペクツ』や『エンド・オブ・デイズ』などの印象的でトリッキーな役からは一転して、最も冷静で平凡なお父さん役を見事に演じきっていました。

ヘレディタリーとミッドサマーは、家族がテーマであること。起きる悲劇のこと。何かを「信じる」人間のこと。など共通点がかなり多いように思えたので、観た順番が非常に関わりそうだと思うけど、私はミッドサマーがやはり好みのようです。
ヘレディタリー、全体的には好きで、特に前半と、後半のラストにかけてはかなり好きな感じなんだけど、一般的なオカルトではない不気味さが漂っていたはずが、中盤から後半にかけてオカルトオカルトしだす描写はちょっと逆にびっくりした。まっすぐに通っていた線がちょっとだけぶれる感じ。

でも、デビュー作であることとかを考えるとマジで? という出来。決して珍しくない、昔ながらのホラーを描きつつも新鮮で目新しいというのは凄まじい。恐ろしい。「ホラー映画の新たな基準となる」などの声も囁かれているけど、ホラー映画好きとして嬉しい。もっともっと怖い映画をいっぱい観たい(強欲の壺)。

とにかく物語の作り込み方、伏線をちりばめる構成や、独特なカメラの構図や演出など、いちいち「うひょ~」となりますね……。ヘレディタリーでは、母がミニチュア模型作家で、物語自体もミニチュアハウスから始まりそこで終わるという構成がなんともしっかり統一してて、美しい~と思います。どこまでも誰かに作られた箱庭である象徴。
ミッドサマーだって、純粋に絵面としてすごく綺麗なだけじゃなく、映像としてしっかりまとめあげられてるのがいい。アリアスター作品は一つの映像作品としての緩急や引き締め、スマートさがなんとも完成度が高くて、くすぐられる。意味のないシーンがない映画っていいですね~。


ということで出遅れましたが、アリアスターを巡る旅をしてきたので、旅日記でした。
出遅れたとはいっても、アリアスター監督の長編映画作品としてはまだ二作。これからも色んな映画が見れるであろうことが楽しみすぎる。

私がはたして監督のファンなのか? というとまだよくわからないんだけど、これからもこの監督の色んな作品が観たいと思っているし、追ってしまうのだと思います。これはファンになったということなのか、それとも共同体とやらの、嫌だけど逃れられない運命というやつなのか……。


もっと書きます。