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せんすい島とすうちゃん

朝から準備万端でソワソワとカメちゃんとうーちゃんを待ってると外から
「すーうちゃん!」
「オーイ!起きてるか?」
声がして慌ててポシェットをかけて外に出た。
「起きてるよ!おはようカメちゃんうーちゃん」
「なんだ、てっきりまだ寝てるかと思ったのになー」
うーちゃんを見るとニヤニヤしてる…何か言ってやろうと口を開こうとするとカメちゃんが私とうーちゃんの間に入り
「ハイハイ!そこまで!今日は喧嘩は無しだよ!すうちゃんもうーちゃんも仲良く行こうね?」
そう言われ楽しみだったのを思い出して
「そうよだね、うーちゃんの挑発になんか乗らない!」
私が答えるとうーちゃんが不満そうな顔をしたけど直ぐに
「ちぇ、まあいいか!それじゃ早く行こうぜ!」
「うん!」
「行こう?すうちゃん」
手を差し出されカメちゃんと手をつなぎ一緒に歩いた。
うーちゃんは何処から拾ってきたのか木の枝を振り回しながら私達の前を歩いていた。
私は
「ねえ、今から行く所はどんな所?」
カメちゃんとうーちゃんに聞くと、うーちゃんが振り向きながら
「色々あるぞ!」
ムッとしながら
「色々って、そんなんじゃ分かんないよ!」
「ふふ、それは行ってみてのお楽しみかな」
カメちゃんに言われ渋々
「カメちゃんがそう言うなら…」
一体どういう所なんだろうと考えながら歩いてると今までは土の道だったのが急に黄色いレンガで舗装された道に出た。
規則正しく並べられた黄色いレンガの道をカメちゃんとおしゃべりしながら歩いているとうーちゃんが振り返り大きな声で指をさしながら
「ほら、すう!見えて来たぞ!」
うーちゃんの声に黄色いレンガの道の先を見ると赤い大きなテントが見えた。
赤いテントはお店全部を覆っているようだった。
私はふと違和感を感じてよくよく見ると赤いテントが宙に浮いている?
なんで?とビックリしながら
「うわー!あの赤いテントどうなってるんだろ?」
隣のカメちゃんを見るとカメちゃんも首をかしげ
「そう言われてみれば…どうなってるんだろう?」
と不思議そうだった。
するとうーちゃんが
「確か誰かが魔女のばーちゃんがなんたらかんたらって言ってたような?」
「え?は?なんたらかんたら?って何?」
「魔女?ああ!リリーさんの事だよね、そうかーリリーさんしかこんな事出来ないもんね!」
うん?どういう事?今うーちゃん魔女って言った?聞き間違い?でもカメちゃんもリリーさんって…居るの魔女が?
「あの…さ」
恐る恐るカメちゃんちうーちゃんに
「何?どうかした?」
「ま、魔女って居るの?本当に?」
カメちゃんとうーちゃんは不思議そうに
「何言ってるんだよ?」
「え?すうちゃんの世界に魔女さん居ないの?」
「居ないと思うけど…こっちには居るの?」
「居るに決まってんだろ」
「でもすうちゃん、なんで魔女って言葉知ってるの?」
「魔女は私の世界にはたぶん居ないよ。けど本の中には魔女のお話はいくつかあるからそれで知ってぐらい」
「そっか、すうの所魔女居ないのかー、だったらリリーのばーちゃんのお店にいって見ようぜ!どうせ今日行くつもりだったんだろ?カメ」
そうなのとカメちゃんを見ると
「うん、せっかくならリリーさんにすうちゃん紹介したいし」
カメちゃんの言葉
「リリーさんのお店…?」
カメちゃんはニッコリと笑って
「そうなのリリーさんのお店は雑貨とか色々な物を売ってるの!あ!ほら見えて来たよ」
カメちゃんの視線の方を見ると黄色いレンガの道が無くなり赤いテントの中に入ると色とりどりの色々なお店が広がっていた。
思わず目を見開き
「凄い!まるで市場みたい!本当に色んなお店がある!どこから見たらいいのか分かんない!」
本当に色んなお店がある
一見一体何のお店か分からないお店もある…そして行き交う物や動物達!
どうしようワクワクする!
カメちゃんとうーちゃんが笑いながら私を見て
「取り敢えず何処から行くんだカメ?」
「う~ん?すうちゃんは何からみたい?」
「私?だったら水筒とお弁当箱は最初に見ておきたい」
そう伝えるとカメちゃんが私の手を引っ張り
「じゃあやっぱりリリーさんのお店だね」
「リリーさんのお店は本当に雑貨屋さんなの?」
魔女って云うと怪しい薬とかそういうイメージだけど…大丈夫なのかな?
「うん!凄く可愛い物がたくさんあるの!あ!すうちゃんは可愛い物好き?」
「うん!好きだよ!」
カメちゃんの手をブンブンと振ると、うーちゃんがニヤリと
「それだけじゃないけどなー」
うーちゃんの言葉に
「何?今何て言ったの?」
「別に~さ、早く魔女の店に行こうぜ!」
カメちゃんを見るとニコニコと
「こっちだよ、すうちゃん」
カメちゃんに引っ張られて
「さあ、着いたよ!」
そう言われて言葉を失った。
「……え?」
そこはお菓子の家が建ってた。
どういう事?
リアルなお菓子の家だ…
そんなバカなとお菓子の家に近くと
壁はビスケット屋根はチョコレート窓は飴だろうか
「これって…本物?」
「うん本物のお菓子だよ、ちゃんと食べれるよ美味しそうだよねー」
「美味しそうでも食うなよ?絶対に食うなよ?ダメだからな!」
内緒で一口噛ってもいいかなって思ったけど…
「ゴホン!食べないよ!うーちゃんこそなんでそんなしつこく言うの?」
「別に!何でもいいだろ!とにかく食うなよ」
「ふふ」
カメちゃんが笑うとうーちゃんが
「なんだよ!カメ笑うな!」
「ごめんなさい…さあすうちゃん中に入ろう!」
とドアに近くとドアノブはキャンディーだろうか、ドアの装飾にはクリームやグミやクッキーで飾られてるしクッキーの良い匂いがした。
「凄い!本当にお菓子なんだ可愛いね!」
「でしょ?すうちゃん好きそうだなって思ってたの!」
「カメちゃんはよくこのお店に来るの?」
「うん、お母さんが好きでよく来るから」
成る程ウマ美さんのお勧めのお店だったんだと入ろうとして気がついた。
さっきから同じ位置で動こうとしないうーちゃんに
「あれ?うーちゃんは来ないの?」
私が言うとうーちゃんは顔をしかめて
「こんな可愛いお店俺の趣味じゃねーもん!俺此処で待ってるからカメと行ってこいよ」
私はお店の中を見て確かに可愛い物が沢山飾られてる
「うーちゃんはこういうのは苦手?」
「う!…苦手だ…」
だったら申し訳ない事をしてしまった。
私達が選んでる間うーちゃんを待たせてしまう…私はどうしようとカメちゃんを見るとカメちゃんは笑いを堪えるように
「違うのよ!うーちゃんはお店のリリーさんが苦手なの」
「カメ!…別に凄い苦手って訳じゃないぞ!少し…ちょっとだけ苦手なんだ!」
「なんで苦手なの?」
カメちゃんに聞くとカメちゃんは笑いながら
「うーちゃんお腹が空いて…このお菓子のお店食べちゃったの」
「……は?」
私には噛るなよって言って自分はこのお菓子の家を食べたの?
ジーとうーちゃんを見ると気まずいのか視線をさまよわせてる
私は改めてお菓子の家を見て
「何処食べたの?」
聞くとカメちゃんが
「壁のビスケットを食べちゃったの」
「それでお店のリリーさんに怒られたの?」
うーちゃんに聞くと
「…怒られてねーよ」
怒られなかったんだ…でもだったら、なんでちょっと苦手なんだろう?
「そうよ、リリーさんは怒るような人じゃないんだけど…食べてしまったのは、しょうがないが食べて空いた穴はちゃんと直しなさいって…」
「…それはもしかして…」
「そう、うーちゃんひたすらクッキーを焼かされたんだって!もうそれからうーちゃんリリーさんのお店に入りたがらないの」
どんだけ壁のクッキーを食べたんだろうか…うーちゃんを見ると
「う、しょうがないだろ!腹減ったもんは!」
何も言ってないのに、余程大変だったんだろう…美味しそうに見えるけどこっそり食べるのはやめとこうと心に誓った。
「それはそれは、すまなかったね」
振り返るとお店の中から黒い帽子に黒いローブ姿のおばあさんが出てきた。
おばあさんは、まさにお話に出てくる魔女そのものの格好だった。
私はその姿にヘンゼルとグレーテルを思い出した。
あれも確かお菓子の家だったはず…て事は
「……!」
固まっているとおばあさんは私達に
「そんな所で話なんかしてないで店に入っておくれ」
不機嫌そうにそう言われ、
それを見たうーちゃんがさっと逃げようとしたけど魔女のおばあさんは持っていた杖でうーちゃんを捕まえて
「ほら、あんたもおいで」
「ぎゃー!」
と連れて行かれてしまった。
唖然と見てるとカメちゃんが
「私達も入ろう?すうちゃん」
一瞬ためらったけど魔女のお店って何を売ってるのかと好奇心が押さえられず
「うん」
それにおばあさんに捕まったうーちゃんは大丈夫なんだろうかとカメちゃんと一緒にお店に足を踏み入れた。