サラ・カイリイ

福岡で詩を中心に書いています。 詩集「リードマイリップス」(福岡市文学賞詩の部門受賞)…

サラ・カイリイ

福岡で詩を中心に書いています。 詩集「リードマイリップス」(福岡市文学賞詩の部門受賞) 「コロンビーナの口紅」(福岡県詩人賞受賞) 「ヴァージン・キラー」(書肆侃侃房) crossコトバプロジェクト https://twitter.com/ksarahkylee

最近の記事

読書記録(不定期)①

わたしは普段からセックスは日常であると思っているし、発言してきた。 この『遊郭の産院から〜産婆50年、昭和を生き抜いて』を読み、妊娠出産も日常の延長線上にあるのだと気付かされた。 それは生も死もひっくるめた人間の日常である。 今はSNSを中心に出産時の辛い経験を語る女性が増えてきた。 それはヴェールで隠されていた現実を知るには良い兆候だと思う。 一方で、あまりに強烈な痛みや恥の個人的体験は、まだ出産を体験していない女性が出産自体にネガティヴな印象を持ってしまう側面を否定でき

    • 【詩】それは遺書

      逃げるな 現実を見ろ 消費するな 声を聞け わたしは叫ぶ 背後でまた人が死ぬ 黙ったまま死んでいく もういいんだ と微笑む 口もとは引き攣っている わたしに何ができる わたしに何ができる 叫んでくれ と彼は言った おれは叫べない 赤黒いインクで紙を埋める それは遺書 呪咀 嘆願

      • パメラ

        パリのファッションウィークに現れたパメラ・アンダーソンはすっぴんだった。 パメラといえば、『プレイボーイ』誌の表紙や、ドラマ『ベイウォッチ』の水着姿など、セクシーなイメージに彩られた女性だ。 セックスシンボルの一人だったとも言える。 これまでの彼女は濃いアイラインに、輪郭をしっかり描いたリップメイク、たっぷり膨らませて鏝で巻いたブロンドヘア、身体のラインを強調したドレスで現れるのが常だった。 しかし、世界中の注目が集まるパリのファッションウィーク、数多のフラッシュの中、着飾っ

        • 第4回詩の会cross まとめ

          2021年11月20日に行われた詩の会cross まとめが遅れて申し訳ない! やる気はありますが、ためこみがちなサラです。 第4回も初めての方含めて素晴らしい会になりました。 以下出席者の詩の抜粋です。(敬称略) 「Un happy song」寺本寿生    花に咲く果実を鳥が啄む    これが愛でるという事です    君に僕の命をあげよう    そう言ったとき    先妻の孕んだ腹がつぶれた この世界を愛している、と世界を殺していくという二律背反が、美しく描かれてい

        読書記録(不定期)①

          第3回詩の会crossまとめ

          久しぶりの更新になりました。すみません。 10月30日に第3回詩の会crossを開催いたしました。 初めて出席される方もおられ、充実した会になりました。 以下作品の抜粋と作者名(敬称略)です。 「鳩おばさん」 かなえんぬ 別にいいじゃないですか。あたしが何をしてるっていうんです か。鳩にパンくず撒いているだけでしょう。ただの一般市民が公 園で鳩に餌やってるだけ。それのどこがいけないっていうんです。 ☆「鳩おばさん」と呼ばれる女性の語りで綴られた詩。一見迷惑なお

          第3回詩の会crossまとめ

          I am yours

          「精神性ばかり振り回してないで、セックスとかした方がいいと思う」 と、ツイートしたら詩人にはことごとくスルーされたが、素晴らしいミュージシャンであるK氏にいいねされたのは、思わぬ喜びであった。 セクシーな詩人がほぼいない昨今。 こんなにセックスセックス言っていたら、サラ・カイリイは色狂いか!?と思われてしまうなあ、しかし似たようなものなので世話はない。 セックス、性を、それも人間と人間とが向き合う性を物書きが描かなくなって、久しい。 もちろんベテランの方々は性を今も描いて

          第二回詩の会cross まとめ

          7月24日TAO CAFEで、第二回詩の会crossを開催しました。 出席者は、見学者を含めて8名。 今回は詩だけでなく、短歌の持ち込みもあり、バラエティーに富んだ会になりました。 以下提出作品の抜粋と作者名です。(敬称略) ①二十一世紀の日本より愛をこめて 寺本寿生 古代の遺跡に 迷い込んだかのような 孤独を湛えた 静寂のうちに 千年ぶりに出会う きみはあの星々よりも美しい 命のある言葉をきみにあげよう 命のある歌をきみにあげよう 壮大なラブレターのよう

          第二回詩の会cross まとめ

          第一回詩の会cross まとめなど

          去る6月26日、第一回詩の会crossを開催しました。 当日は定員10名を予定していましたが、無事10名集まり、6名の詩を見学者含め10名で読み、語りました。 以下各人の詩の一部抜粋です。(敬称略) 「君が注いだ血税は」(西の子) かたや わたしは見つけたい 皆が見つけていること わたしは見つけていない 見つけてばかりだ 大事なことばかりだ 「しっぽ」(かなえんぬ) お

          第一回詩の会cross まとめなど

          赤と赤

          手を引かれて歩く 夜のはじまりの街 うすい墨色の空に 積み木のような 輪郭をなしている いくつものビルディング つながれた手もそのままに わたしは夢をみる ひとつ ふたつ みっつ どの屋上がもっとも空に近いでしょうか どの屋上がばっさり命を断ってくれるでしょうか 手首の包帯は血が乾いて皮膚に貼りつき 薬のせいで頭はぼんやりしています 死なねばならない と知っていました ものごころついたときには 死ななくてはならないと 涙ぐんで拳をつくりました い