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夕暮れ症候群

夕暮れが訪れた時に切ない気持ちになるのはなんでだろう。海に行きたくなるのは何でだろう。雨が降ると落ち込むのは何でだろう。

子どもの頃、夕暮れになったら家に帰らなければならなかった、楽しい時間の終了がオレンジ色だったからかな。思い出して切なくなるのかな。5時の針が嫌いだった。今も少し寂しく感じる。帰ったら勉強をしないと、塾にも行かないと。大嫌いな街がオレンジ色になってた。大人になっても、空がオレンジ色になったら、どことなく寂しい気持ちになるのかな。大人になるってなんなのかな。僕はまだ甘いものが好きだし。

海に行きたくなるのは、僕らは海の生き物から進化したからだとか言い伝えがあるけど、海に行きたくなるのは空気が美味いからだと思うし、泣いてもバレない。潮風のせいにできるから、きっと都合がいいのよ。夕暮れ症候群の僕ら、きっとみんな海が好き。広い海が好き。大きな海、水平線に沈むオレンジ色、時計の針は5時を刺している。なんだかその日は寂しくなかった。夕暮れ症候群の僕らは、明日もオレンジ色を見上げる。

片親だったアイツの方が幸せそうだったのは強がっていたのかな、告白できずにいるアイツは勇気がないのか、自分に自信がないのかな。都会の光を眺めているサラリーマンはきっと孤独。ビル風に前髪を乱される女性社員さんは細長い指で前髪を守る。その指でなぞるのは男の頬だ。スタートを折り畳む女子高生はキープが3人いる。丸坊主のアイツは性愛だけだと思う。力強い赤いリップのあの子は夜は弱い。イケメンで頼れるアイツはきっと夜は弱い。でもみんなオレンジ色の空を見上げている。理由なんてない。きっと天国の色がオレンジ色なんだと思う。無意識に感じているんだよ。

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