【おかつゆうす主催】将棋V初心者大会の観戦記 2日目後半


※何これ!

 おかつゆうすさんの企画「将棋V初心者大会」の非公式な観戦記です。対局量が多いので、サクッと行きますよサクッと。

配信アーカイブ

5、アルベルタ・フェルディナント・クライン 対 南蛇井淳

・棋譜

・解説

 序盤は両者ともに角道を開けてから、居飛車の展開。先手のアルベルタさんは土居矢倉の金銀が逆になった形、後手はカニ囲いから新型雁木に囲っていく。かなりじっくりとした序盤戦に。

 ここから先手が面白い指し手を見せる。金を上に上げて角を引いてから飛車を8筋へと振り、向かい飛車の形に。これを見た後手は機敏に△6五歩に△4五歩と、角道を通して攻めて行く。先手は端に桂馬を跳ねてしまったために、6五歩はなかなか取りづらい。

38手目 △4五歩。後手の攻めが厳しそうだが果たして。

 しかし先手は気にせず▲8六歩とぶつけて、△同歩、▲同金、△8六歩打に▲6五歩とし、飛車角交換になった。後手が△8九飛打としたが、ここは右側から飛車を打ちたかったところ。結果として打った飛車が捕まってしまい、後手優勢だった形勢をかなり戻してしまった感じ。

49手目 ▲7八銀。後手は雁木のため、あまり飛車渡したくなかったところ

 飛車を香車と交換してなんとか先手陣を突破しようと試みるものの、上部に金銀を固めていた先手がなかなか固く、後手が攻めあぐねる展開に。先手が頃合いを見て角を出し、馬を作りながら先手の飛車を抑えることに成功。駒得もあり、先手優勢の展開に。

71手目 ▲6四桂打。後手の雁木に手がつき始め、先手優勢に

 後手は先手の薄い左側から手を作っていこうとする。先手も後手の囲いをじっくりと崩して行く構えで、なんとか後手も左側を突破するが、如何せん先手玉は遠くて駒も無いという状況。かなり苦しい局面が続く。

101手目 ▲6三桂打。雁木は残っているが、下段に龍が効いている。

 後手も敵のコマを回収しながら粘りを見せるが、先手も受けるところはしっかり受けて、じわじわと攻め寄せる。左右から挟撃の形を作り、いよいよ後手玉に受けが無くなってきたというところで、馬の効きを見逃す開き王手の反則をしてしまい、先手の勝利となった。

126手目(反則手) △6一銀。馬の効きを見逃してしまい反則

 先手のアルベルタさんの面白い指し回しが光る将棋となり、見事決勝へ進出となった。後手の南蛇井さんは序中盤では優勢だったものの、一度悪くしてからなかなか形勢を戻せる機会が無かったので、その辺りが悔やまれるところ。

6、天使鐘 対 紫花チノ

・棋譜

・解説

 後手のチノさんはここでついに本領発揮のアヒル囲い。対する鐘さんは雁木囲いを選択した。チノさんがアヒルを指しこなせるかというのも気になるところだが、鐘さんがアヒルに対してどう指すかも気になるところ。

23手目 ▲6七銀。一般的にはアヒルに対して雁木は指しやすいと言われている

 後手のアヒル側から2筋を伸ばしてくるのに対して、先手は▲7五歩を突いてから銀を上げて、飛車を圧迫していこうという構え。△7四歩、▲同歩、△同飛で△6五銀と上がるも、飛車を逃げた後に△7三桂と銀を追われてしまい△7六歩打が決まって、先手の▲7五歩を逆用して後手が形よく7筋に攻めの形を作る展開になった。

39手目 ▲6七金。先手としては少し怖い形に

 7六の歩は少し気になるが、先手は角道を開けてじっくりと攻め手を作ろうという感じ。後手は△2四角から端を狙おうとするも先手がしっかりと受け、△2四飛と飛車交換を狙う手も先手は応じず、後手としては少し攻め方に困っている様子。

59手目 ▲1六歩。端から手を作ろうとしたが抑えられてしまう

 端から手を作ろうとしたが▲1六歩から先手に香を拾われて、田楽刺しが決まってしまって角香交換となる。しかし、これがアヒルの強みが出ているところで、次に7筋からの攻めや香打ちで先手陣を攻めていこうという段階だったが、先手がここで▲1四歩打としてしまい、二歩の反則負けとなってしまった。

71手目(反則手) 1四歩打。これは惜しい二歩となってしまった。

 少し後手側に形勢に触れてもおかしくない局面だが、これからの場面で先手の鐘さんは痛い二歩となってしまった。後手のチノさんとしても有利を意識するかもしれない局面だったが、思わぬところで一勝を拾うことが出来たといった感じ。

7、決勝1局目 紫花チノ 対 アルベルタ・フェルディナント・クライン

・棋譜

・解説

 決勝戦は三番勝負ということで、初戦は紫花チノさんが先手となった。チノさんはアヒル囲い。対する後手のアルベルタさんは金無双向かい飛車を選択。端を絡めて攻めるアヒルに対して金無双での振り飛車は有効な戦法ということで、アルベルタさんは対策を持ってきた様子。チノさんもしっかり右の金は上げて対振り用のアヒルに構えている。

20手目 △8二銀。9三が厚くなるため、端への殺到がしにくい。

 ▲2五歩を突いているため、後手は逆棒銀を狙っていく。角を前に出して飛車に当ててから3三に銀を上げて、△2四歩から攻めていく。受けようが無いので先手は9筋から攻めていこうとするが、受ける際に▲2六歩と突いたのが逆に攻めを呼び込む手になってしまい、金銀交換になり後手有利の形勢に。

41手目 ▲7五角。△2九飛成が痛い

 後手は9筋の攻めは無視して、少々重たいが△2八金打から攻めていく。しかし、▲8四歩を受けなかったのが痛い一手となってしまい、▲9二飛成から▲8三歩成で一気に後手玉がピンチに。△7一銀と引くも受けに失敗して、▲7一龍で詰んでしまった。

57手目 ▲7一龍。5一玉と寄っていれば続いたがかなり厳しい。

 後手のアルベルタさんとしては逆棒銀が決まって作戦勝ちはしていたが、受け損なってしまい一気に逆転を許してしまった。先手のチノさんは一瞬の隙を見逃さずに綺麗に詰めていったのは、かなり上手い指し回しだと感じた。

8、決勝2局目 アルベルタ・フェルディナント・クライン 対 紫花チノ

・棋譜

・解説

 二局目は先後反転での対局。1勝を挙げた後手のチノさんは前局と同じくアヒル戦法採用。先手のアルベルタさんは、今度は硬さ重視で居飛車穴熊を選択し一直線に穴熊を組んでいった。

19手目 ▲7九金。今度は固さ重視の陣形へ

 △1三角、▲5九金から後手が早々に思い切った手を打った。△7九角成と角金交換を挑み、先手はこれを取らずに▲6八金と寄り。この金も取り込んで角と金二枚の二枚替え。後手としてはかなり駒得となり、アヒル囲いの打ち込みの少なさからかなり後手有利に形勢が振れた。

25手目 ▲6八角。角と金2枚の二枚替えに

 ここから先手は完全に受けに回る展開に。後手は金2枚を使って先手陣を荒らしまわり、先手はとにかく自陣に駒を打って受けていく。こうなると後手のアヒル囲いが固くなかなか手の付けられない状態に。先手はとにかく受けながらチャンスをうかがうが、かなり厳しい形勢に。

62手目 △1九龍。先手はいつの間にか矢倉みたいな形に

 何とか受けようとするが、持ち駒が無い先手は香打がとても痛い手に。△6四香打から形を崩されてしまって2枚の龍に下段に潜られてしまう展開となり、なんとか受けようとするも△8九龍で先手玉は詰んでしまった。

76手目(投了図) △8九龍。歩もないため、二枚龍が厳しい

 アルベルタさんとしては序盤で金二枚と角の二枚替えになってしまったのはかなり痛かったところで、そのあとはなかなか反撃のチャンスもなくどんどん駒を取られて行ってしまったといった感じ。チノさんは思い切った角切りが功を奏して、そこから綺麗に指し切って勝つことが出来た将棋だと思う。紫花チノさんは、見事に2連勝での優勝となった。

全体を通しての感想

 端的に言えば、みんな強い。ここまでしっかり戦法を指して、まさか相手の対策までしてきて、それを指しこなすような、そんな大会になるとは正直思ってなかったので、普通にすごいなぁと思いました。

 優勝した紫花チノさんはしっかりとアヒルを使いこなしており、あなたはもう立派なアヒル使いです!おめでとう!とはいいつつ、アヒルだけじゃなくて、劣勢ながらも手を作ったり、優勢になってからは形勢を維持するようにしっかりと指し回したりと、地力の強さもかなりのものだと思いました。
 準優勝のアルベルタさんは、1ヵ月であんまり勉強す時間も取れなかったということだったのですが、色んな作戦を指してなかなか破綻してないのは純粋にすごいなという感じで、手を読む速さや大局観はなかなかのものだったんじゃないかなと思います。

 みんなの分を書いてるのと長くなってしまうので、とりあえず優勝者と準優勝の人だけ!みんなすごかったよ!

 それでは最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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