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Pitch Dredgeへの対策カード、および対対策カード

0.はじめに

こんにちは。sapuriと申します。前回記載した『Silversmote Dredgeについて考える』が想定していたよりも多くの反響を頂きました。信じられないことですが、2022年5月1日時点でMOのトーナメント環境に存在するDredgeデッキの多くがSilvermote Ghoul入りのものに取って代っています。狭い界隈ではありますが、ゲーム環境に1石を投じることができたと非常に嬉しく思っています。

さて今回はDredge Playerの腕の見せ所である対策カード編を書く事にしました。まずはじめに1項ではDredgeへの対策カードの方向性を記載した上でそれらを分類します。その上で2項ではDredgeの対対策カードを紹介していきます。そして3項では対策カードと対対策カードのマトリクス表を記載し、本論のまとめとします。

1.Dredgeのサイドボーディングと対策カード

以前の記事でも記載したとおりですが、Dredgeはメインボード最強と言われるデッキです。そのため、基本的にG2及びG3は相手の対策カードを乗り越えるための対対策カードを投入したゲームプランとなります。ただし、Dredgeへの対策カードはいずれも劇的な効果を持つものが多く、さらに多くのデッキにはそれらのカードを6枚から8枚程度サイドボードに投入しています。それ故に対対策カードを取っても、G2以降からはDredge側は基本的には不利または非常に不利な立場に置かれることが多く勝つことは容易ではありません。本旨では苦戦を強いられるG2以降のゲームに対しての理解を少しでも広げることを目的としています。

一般にVintageのDredgeはG2を様子見の捨ゲームにして相手の対策カードを確認し、G3で正確な対対策カードを投入して勝つデッキと言われています。確かにこの考え方は一面的に的は得ています。しかしながらVintageの大前提としてTierデッキはLegacyやModernと比べるとかなり限られています。即ちある程度の事前の予測や絞り込みが可能ということです。よって相手のデッキにはどんな対策が入るかを把握しておき、G2の時点からできるだけ確度の高い対対策カードをサイドインすることが重要です。例えばDoomsdayには大体の場合《Leyline of the Void》4枚と《The Tabernacle at Pendrell Vale》1-2枚が取られているので、《Wasteland》《Strip Mine》《Force of Vigor》をサイドから投入する…といった具合にかなり精度の高いサイドボーディングができます。墓地対策があるゲーム(特にDraw Firstのゲーム)は非常に厳しいものですが、対対策カードがうまく噛み合ってしまえば勝ってしまうのがDredgeというデッキでもあります。この噛み合いに大きく関わってくるのが事前のメタゲーム理解です。上記のDoomsdayの例のように敵のサイドボードを予め想定し、G2のインアウトを決め打ちすることは大切なポイントになります。

それでは環境に存在する対策カードとその傾向を確認してみましょう。対ドレッジカードは基本的に下記のいずれかパターンに当てはまります。

(1)墓地対策カード(アーティファクト・エンチャント)
最もオーソドックスなDredge対策となります。種類が最も豊富で劇的に効くカードも多数存在しており、各種のカウンターで弾くか《Force of Vigor》で破壊するか、使い切りのカードであれば相手に墓地対策を使わせるようなプレイをするかのいずれになります。ただし、《Leyline of the Void》はゲーム開始時から存在しているため、カウンターすることが出来ません。効果も劇的で破壊する方法も《Force of Vigor》しかないため、サイドボード後はいかに《Force of Vigor》を引き込めるかがポイントになってきます。

《Leyline of the Void》《Grafdigger's Cage》《Soul-Guide Lantern》《Tormod's Crypt》他

(2)墓地対策カード(クリーチャー)
戦場に存在すること・起動することで墓地のカードの効果を無効化するクリーチャーが多いです。プレイアブルなカードの種類は多くありませんが、一度着地してしまうとその後の対応が限られるケースがほとんどです。《Force of Will 》《Mental Missteps》のようなカウンターで弾くか、《Contagion》のようなピッチ除去で破壊するか、キャスト前にハンデスで落とすかのいずれかで対応することになります。

《Containment Priest》《Yixlid Jailer》《Deathrite Shaman》《Endurance》他

(3)墓地対策カード(それ以外)
(1)(2)以外の墓地対策が該当します。直接的な対処はカウンターで弾くしかありませんが、墓地にカードを無碍に落としすぎないプレイをするというケアがあります。

《Surgical Extraction》《Ravenous Trap》他

(4)《Bazaar of Baghdad》対策カード
土地破壊系は実は最もそれ自体を咎める方法がなくゲームの早期に行われるとドレッジ側としては一番キツい対策となります。《Bazaar of Baghdad》を破壊する対策としては予めDredgeカードを落とす、あるいは《Noxious Revival》で《Bazaar of Baghdad》を戻すかのいずれかになります。《Bazaza of Baghdad》の起動を封じてくる対策はそのパーマネントを《Force of Vigor》で破壊するか、カウンターで弾くことが対策の基本となります。

《Wasteland》《Strip Mine》《Pithing Needle》《Sorcerous Spyglass》《Assasin's Trophy》《Boseiju, Who Endures》他

(5)追加マナを要求するカード
呪文を唱えることに対してマナを要求してくるカードです。デッキ構成にもよりますが、基本的にPitch Dredgeはマナが出るカードがサイドボードに取っている《Wasteland》《Strip Mine》のみとなります。よって追加マナ要求をされると基本的には一切の呪文を唱えることができなくなります。追加マナ要求カードはこれ単体では墓地対策とはならないため、直接の影響がない場合も存在しますが、上記の1)から4)と組み合わせられると対応するアクションが一切取れなくなってしまうので、注意が必要です。

《Trinisphere》《Thalia, Guardian of Thraben》《Thorn of Amethyst》《Sphere of Resistance》他

2.対対策カードの紹介

本項では実際にDredgeに投入されている対対策カードを確認していきます。

《Force of Vigor》
Pitch Dredgeをデッキとして成立させている立役者です。全てのDredgeデッキにメインサイド合わせて4枚が取られています。本カードの登場により《Leyline of the Void》をマナを支払うことなく破壊することができるようになりました。アーティファクト・エンチャントの両種を2枚まで破壊することができるので、見ることができる範囲は非常に広いです。先述した《Leyline of the Void》を始めとした墓地対策カードを破壊することはもちろんですが、対対策以外でも《Paradoxical Outcome》を唱えてきた相手のマナファクトをスタックで破壊したり、着地してしまった相手のパワーカード類(《Oath of Druids》《Bolas's Citadel》《Underworld Breach》)を破壊したり、各色Moxを破壊してマナを縛ったりと万能な使い方ができます。ただし、相手ターンにしか唱えることができないので《Defense Grid》のようなカードには要注意です。加えて追加マナを要求するカードを先置きされてしまうと唱えることができなくなる点にも留意が必要です。
また、MH2以降では《Urza's Saga》を破壊するという大命を帯びることになりました。

《Contagion》《Sickening Shoal》
クリーチャー対処枠で、1-3枚ほど採用されています。いずれも他のフォーマットではほとんど投入されていないカードです。いずれも手札の黒カード1枚(と前者はライフ1点)を追放することでマナを払わずにプレイできます。使用用途はクリーチャー除去で主な対象となるのは《Containment Priest》《Deathrite Shaman》《Yixlid Jailer》と言った墓地を止めるクリーチャーを除去します。稀に相手の通常のクロックを止めるのにも使います。《Contagion》は1点のライフを失いますが、複数のカードを対象に取れ、さらに手札の《Cabal Therapy》を追放した場合でもタフネス2のクリーチャーを落とせます。またマイナス修正の形で除去するので、《Monastery Mentor》を確実に除去できるのがポイントです。《Sickening Shoal》は《Contagion》よりも大きなマイナス修正を狙えますので時に大きなクロックを落とせます。どちらを採用するかは好みですが私個人としては《Cabal Therapy》を追放したときに《Deathrite Shaman》を破壊できることができる点、タフネス1のクリーチャーの場合だと2枚破壊できる点がメリットとして大きいと思いますので《Contagion》に分があるように感じています。
稀に《Force of Despair》を採用されている方もいますが、Hollowvineのように大量展開を行うデッキには効果があるとはいえ、後引すると何にもしない上に、自分のターン中にFlashで唱えられた《Containment Priest》に対応できないのでおすすめしません。

《Strip Mine》《Wasteland》
《The Tabernacle at Pendrell Vale》《Bazzar of Baghdad》《Urza's Saga》対策枠で0-4枚ほど採用されています。特に《The Tabernacle at Pendrell Vale》はマナが出ないPitch Dredgeでは致命傷となるカードなので最優先で破壊すべきカードとなります。相手が《The Tabernacle at Pendrell Vale》を持っている場合やあるいは持っていそうな場合はむやみに他の土地を壊さずに温存して立てて置くといったことも時に求められるプレイです。
Dredgeとのミラーマッチ時やHollowvine相手には相手の《Bazzar of Baghdad》を壊すことでかなり優位になります。ただし、ミラーマッチで後手の場合は次ターンに2枚目を起動されるとそのまま負け試合になりがちですので、過信は厳禁です。
マッチ頻度は低いですが、Vintage環境にも存在しているDark Depth系のデッキ相手には相手の起動に合わせて《Dark Depth》を破壊することでコンボを未然に防ぐことができるので先置くことでコンボ抑制ができます。また、レガシー環境などと同様に単純なマナ縛りとしても機能するので、多くのデッキ相手に投入ができます。《Force of Vigor》同様MH2以後は《Urza's Saga》を止める役割が重要になってきました。

《Force of Will》《Force of Negation》《Mental Missteps》
メインボードから入っている各種カウンターです。メインボードでは自分よりも早いタイプのデッキを止めることを主眼として使われているのに対し、サイド後は相手の対対策カードを弾くという点に重点が置かれます。
それぞれのカードが一長一短ありますが、《Force of Negation》以外はサイドアウトされることはほとんどありません。《Force of Negation》はクリーチャーが消せない点・自分のターンには唱えられない点が弱く《Leyline of the Void》に頼りきった墓地対策をしている相手にはサイドアウトすることがあります。
Dredgeはサイドボード後はマリガン時に何枚青いカードを残すかということを意識して戦う必要があります。その時点で《Force of Will》《Force of Negation》を引けていなくても《Bazaar of Baghdad》の起動で引き込める可能性があるからです。特に《Leyline of the Void》以外の対策カードを使う対戦相手の場合は1回対策カードをカウンターできることがゲームの分水嶺となるため、非常に重要な考え方になります。

《Grief》《Unmask》《Cabal Therapy》
いずれも強力なハンデスカードです。戦場に出る前に墓地に落としてしまえばどんなに強力なカードでも対策できます。ただし、ゲーム開始前に戦場に出てしまった《Leyline of the Void》だけはどうにもできないので、《Leyline of the Void》を採用している相手には数を減らすことが多いです。また、Draw Firstのゲームの場合はハンデスでは間に合わないことが多いので、その場合も同様に数を減らすことが多いです。一方で自分よりも高速なコンボデッキ相手には対対策カード以外にも有効な時が多く、頼りになるカードでもあります。

《Noxious Revival》
《Bazaar of Baghdad》の破壊をリカバリーできる唯一のカードです。このカードの存在のおかげでメインボードから土地破壊4-5枚取ってくる墓荒らし系やHollowvineといったデッキに対して強く出ることができます。また、それ以外のケースでも痒いところに手が届くカードで、相手の不要杯をデッキトップに積み込むことで疑似《Time Walk》したり、《Deathrite Shaman》や《Surgical Extraction》に対応して使用することで効果を立ち消えにさせたり、緑なので《Force of Vigor》の餌にしたり、Dredgeとのミラーマッチでは使い捨ての墓地対策にしたり、墓地にある《Narcomeba》《Creeping Chill》とトップに戻して意図的に使いまわしたりとかなり幅の広いプレイができるカードです。私がVintageを始めた2020年頃は空いた枠に1枚程度入っているだけでしたが、最近はメイン・サイド合わせて2-3枚取られることが多いです。《Wasteland》デッキが多い環境であれば4枚取っても良いカードだと思います。

3.まとめ

いかがでしたでしょうか。最後になりますが対策カードに対するDredge視点からの評価と対対策カードのマトリクス表を記載させていただき本論の結びとさせて頂きます。対策カードの評価と対対策カードへの評価はあくまでも私の主観によるものですが参考になれば幸いです。

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今回、それぞれのデッキへのインアウトを記載しませんでしたが、

1)今後採用カードが変化していくにつれて情報が古くなる可能性があること2)個々人が環境デッキのリストを把握したほうがゲームへの理解につながると思うこと
3)自分のサイドボーディングにまだまだ課題があること

という観点から敢えて記載を控えました。今回の記事が、ご拝読いただいた皆様のサイドボーディングを検討していただくためのヒントとなれば幸いです。ご拝読ありがとうございました!

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