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中橋ネジキ"Jukugaeri Juvenile" 最速インタビュー 宅録での表現・ベッドタウンでの終わらない誇大妄想について

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 アメリカ、イギリス、日本のロック〜オルタナティブロックを偏愛する中橋の宅録名義での初音源 "Jukugaeri Juvenile"が4月14日リリースされた。
全て中橋の自室で制作された今作は、彼のバックグラウンドを独自に咀嚼した宅録サウンドでありながら、一貫して郊外のベッドタウンに渦巻く様々なムードを映し出している。今回のインタビューを敢行したのは、まさにその中橋の自室である。
今回初めてインタビューを受ける彼だったが、今回のミニアルバムの制作の経緯から、宅録への思想、次回作の展望まで余すところなく語ってくれた。


インタビュー本編

1.宅録というフォーマットで作品を作ったわけ、スタンス、サウンドの影響元について


中橋ネジキ

——今作は作詞作曲〜ミックスダウン、アートワークまで全て一人の手で制作したとのことですが、なぜそのような形で音源を作ろうと思ったのですか?

中橋:はい、前やってたバンドがあんまりうまくいかずに解散しちゃって….
そのバンドではもっとポストパンクっぽいものをメンバーでセッションして作ろうとしてたんですけど、なんというか、終わってみると自分の本来好きなものだったり言っときたいことを押し殺してる感じがすごいあったなって思って… だから、自分のそういうのを可能な限り薄めずに作ったものを一回出したいみたいな感じでスタートしました。

——その本来好きなものっていうのはどういうものだったんですか?

中橋:ロックだったら、基本的にビートルズの影響を何かしらで感じさせる音楽が好きなんですけど。こういう形で作ろうって思ってから特に「俺はこういうやつが好きなんだ!」って意識したのは同じ宅録派だとSparklehorseとかEelsとか、あと日本だと中村一義とか家主の田中ヤコブのソロとかですね。
あと、一時期狂ったようにPet Sounds聴いてました。


——Logic Proでの宅録というフォーマットはどうやって決めたのですか?

中橋:俺のサークルのOBにJohn Tremendousっていう名義で活動してる人がいて。Khakiの先輩にも当たる人なんですが、彼のSoundcloudがすごい好きでよく聴いてたんです。
彼が去年の春くらいに、Soundcloudの曲を再録してベストアルバム作るレコーディング(俺もちょっと参加してます)に立ち会って…まあ無料で使える部室のスタジオ開けられる現役生が必要だったからってだけなんですけど…そこで彼が、Garageband開いたiPad天井から吊るして、構成頭にあるからって言って、ドラム、ギターと多重録音して行って、みるみるうちに10曲くらい形にしたの見て、なんかこう…俺はLogicを開くのに時間がかかるタイプって自称してたんですけど…そういう言い訳みたいなのがいかにアホくさいか見せつけられて… 



——まあ、やらないことには始まらないと。

中橋:はい。そういう出来事もあってLogic使って作り始めたんですけど、その過程でやっぱり、ドラムとかギターの音はなかなか思うようになんないとか、色んな変な音好きなだけ試す時間があったりで、初期七尾旅人とかtujiko norikoとかのサイケデリア経由する形でタイトル曲ができて、音楽的な方向性が固まり出した感じですね。あと、元々入ってるプラグインいじって、やっぱりミニムーグとかメロトロンとかハモンドオルガンとかちょっと古っぽいやつが好きだなと思って、そこら辺は結構アルバム通した質感みたいなものを作るのに効いてる気がします。
制作中、DX7とか出てくる前の70年代の電子楽器でバッハの曲やるアルバムとかもよく聴いてたのとかも影響してるかもしれませんね。チープで泣けるんですよ。あと冨田勲もよく聴いてました。Dick Hymanのオルガンとかも好きです。


2.インタビューとか読んで妄想するのが好きだったんです


中橋ネジキ
中橋ネジキ


—— 一人で試行錯誤した結果サウンドができてきたという話ですけど、中々孤独な作業でもありそうですね。

中橋:そうですね…基本完成するまで誰にも聴かせたくなくて、一人でずっと作業してたんですけど、プレイバックを何十回と聴いたり、突飛なアイデアを見つけてボツにしたりしなかったりを繰り返してると、「これは相当すごい。天才的だ」と「もしかして全然よくないんじゃないか…?」を行き来する感じになってきて、しかもだんだんその波がひどくなってくるんですね。基本音の足し算で作ってたのもあって。

—— つまりだいぶ誇大妄想的な状態になっていたと。

中橋:なんか、友達みんな東京で遊んだりライブしたりしてて、俺は…まあ遊ぶ時もあるけど、郊外の実家の自分の部屋に引きこもって制作して、勝手に全能になったり絶望しかけたりしてるっていう状況っていうのは俯瞰すると滑稽で、すごい子供っぽい感じだなと思って。俺は元々相当空想好きで、未だに曲に合わせてエアギターしたりとかしますし、インタビュー読んでその気になったりとかもやってましたし…俺もその時は言うこと用意しとこうみたいな…大体あなただって俺の妄想じゃないですか?
なんか、こういう、小さい頃から漫画とか読みすぎてて、色々ごっちゃにしてるし、部屋の中ではすごいことになってるけど、でも全然実家暮らしだし、しかも親が遅くて家で一人の時が多いから、尚更…最終的に、自分で自分のインタビューをこしらえるとこまで行く…。
なんか、そういう、未熟ゆえの万能感みたいなものってみんな一度くらいは経るものだと思うんですが、ベッドタウンではそれが20歳を超えても続くんです。愛憎半ばした思いです。かといって自立して東京に住む胆力もないし。飯も美味いし。俺と似たような出自の人には伝わるんじゃないかと思うんですが。
成熟/未成熟のアンビバレンスっていうのは割と普遍的なテーマだと思うんですけど、日本のベッドタウン(郊外)におけるそれをテーマにしてる作品って、その業の深さの割にはあんまり無いんじゃないかと思って、それを一番形にできるのが、こういう宅録での制作なんじゃないかと。
だから今回はミックスとかも全部自分でやりました。人に頼んだ方が客観的な良し悪しもわかるだろうし、クオリティもより高くなるだろうけど、今回に関しては、人に言わない頭の中みたいなものを、純度の高い形で出力したかったんです。自分の曲を一人でいじりまくる中での自家中毒みたいな要素が無意識的に入るみたいなことを期待したのもあります。

——なるほど。今作に関して影響受けた作品やアーティストは他にありますか。

中橋:はい。リストを作ってきました。

  • Eels- Electric Shock Blues

  • Elliott Smith- Either/Or , XO

  • Paul McCartney- McCartney, McCartney Ⅱ

  • Sly & The Family Stone - There’s A Riot Goin’ On

  • Sparklehorse - Vivadixiesubmarinetransmissionplot

  • R. Stevie Moore - Phonography

  • The Beatles- White Album

  • Grandaddy- The Sophtware Slump

  • Guided By Voices-諸作

  • Pavement- Wowee! Zowee!

  • The Beach Boys- Pet Sounds

  • Syd Barrettのソロ2作

  • Softcore Express - Electronic Bach:Switched-On Versions

  • Dick Hyman - Charmaine and Other Beautiful Songs

  • tujiko noriko- From Niagara to Hospital 

  • スピッツ- 惑星のかけら

  • 田中ヤコブ-おさきにどうぞ

  • 中村一義 - 金字塔

  • 神聖かまってちゃん -デモ(ボッ期~5学期)

  • ART-SCHOOL - SONIC DEAD KIDS、ミーンストリート

  • 七尾旅人- 雨に撃たえば...! [disc2]

  • MANGA HOUSE - # 3 

  • the pillows- Please, Mr. Lostman

  • John Tremendous- Welcome to Ultra Space World: Shitty Suburban Sounds from Chiba 2011-2023

  • 桃子腦TC- Soundcloudの曲群

  • 汐千博- 仮病なぼくら


——ありがとうございます。やはり、総じて、宅録的なフォーマットで作られたり、個人的な表現に根ざしている作品、それゆえどこか危ういムードを纏った作品が多いですね。今作において、何か言っておきたいこだわりはありますか?

中橋:このアルバムには「君」や「あなた」が一回も出てきません。

——最近の音楽に思うことはありますか?

中橋:

——あの。

中橋:もう答えてるだろ?

——今のはモンクの真似ですね?

中橋:

中橋ネジキ

3.バンドをやりたい

中橋ネジキ

——今回が初リリースだというわけですが、この後の活動の展望はありますか?

中橋:あります。バンドやりたいです。今大学4年生なので色々忙しいんですが、ともかくやりたいです。宅録のアルバムできるまではバンドやらない!って言ってたら忙しい時期に入ってしまいました...今はこう、ポップソングの、三分間で嫌な気持ちがひとまずどっか行く事もある、みたいな美点をもっと追求したいです。Queenで言うとYou’re My Best FriendとかLover Boyとか、あとMayor of SimpletonとかDa Doo Ron Ronとか、そう言う感じの曲を目指したい…
宅録で得たことをどう落とし込むかみたいなことにも興味があるし… 

——本日はありがとうございました。

中橋:こちらこそありがとうございます。次回作のタイトルは『ビタービタービタースウィートスウィートスウィート』で行きます。


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