見出し画像

懲戒逃れに対応する弁護士法改正を

依頼者からの預かり金や弁護団の預かり金を着服したとされる弁護士が、弁護士会の懲戒手続きが開始される前に弁護士登録を抹消して懲戒手続きから逃れる事態があることが報道されています。


【弁護士が依頼人の金銭着服、逮捕・起訴相次ぐ…「懲戒逃れ」?直前に退会も】https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20240408-OYTNT50053/


他に、性加害で勤務弁護士の女性が自殺した件の弁護士も懲戒手続き開始前に弁護士登録を抹消していたケースもありました。

弁護士法では、弁護士の登録を取り消して弁護士でなくなった者に対しては懲戒処分ができません。懲戒請求の手続きが開始された後は登録取消しができなくなるので、懲戒手続きが始まるのを察して登録を取り消して懲戒処分から逃げていると疑わしい者がいます。

もちろん、弁護士登録を取消していても、横領等の犯罪に該当する行為があれば刑事責任を問われ有罪判決が確定すれば刑罰を受けますし、民事責任としては被害者に対する損害賠償責任が問われます。

懲戒逃れと言われるような事態が生じているようでは、弁護士に対する懲戒制度の維持に国民の疑いが生じるでしょうし、ほとぼりが冷めてから支障なく弁護士に再登録されるようなことがあれば弁護士資格に対する信頼性の点でも問題でしょう。

税理士については、近年、税理士法の改正により、税理士登録を取り消しても、懲戒処分を受けるべきであったことの決定ができるようになっています。

(懲戒処分を受けるべきであつたことについての決定等)
第四十八条
 財務大臣は、税理士であつた者につき税理士であつた期間内に第四十五条又は第四十六条に規定する行為又は事実があると認めたときは、当該税理士であつた者がこれらの規定による懲戒処分を受けるべきであつたことについて決定をすることができる。この場合において、財務大臣は、当該税理士であつた者が受けるべきであつた懲戒処分の種類(当該懲戒処分が第四十四条第二号に掲げる処分である場合には、懲戒処分の種類及び税理士業務の停止をすべき期間)を明らかにしなければならない。

税理士法

弁護士についても、税理士の場合と同様に、弁護士であった者について懲戒処分を受けるべきであったことの調査・決定ができるように、弁護士法の改正がされるべきではないかと考えます。
そのような改正をして、弁護士登録を取り消した者について除名が相当であったという決定が出た場合は、除名処分がされた場合と同様に弁護士資格の欠格事由と改正できます。除名相当でなくても懲戒すべきであったという決定が出ていれば、弁護士の再登録の際の資格審査会の登録の拒絶をする事由として明確になります。

弁護士会や日弁連は、このような弁護士法の改正を「建議」(弁護士法33条2項13号、46条2項1号)をしてはどうかと考えます。もしかしたら私が知らないだけで、既にそのような建議をしているのかもしれませんが。


あと、懲戒逃れが疑われる件の元弁護士は、弁護士会の会長や副会長など役員経験者だったりします。問題発覚時の弁護士会の執行部(会長・副会長)が会として懲戒請求を進める前にその動きが問題の弁護士に漏れていなかったかどうかについて、報道機関は調査していたら良いなと思います。

この記事が参加している募集

業界あるある

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?