見出し画像

専門家不在でユーザーリサーチをはじめた話

この投稿は、さくらインターネット Advent Calendar 2022の記事です。
ツールや参考にしたおすすめの本も紹介しています。

お客さまの課題を知るため、定性調査をはじめて2年近く経ちました。専門家がいないなか、試行錯誤しながらBtoBやBtoBtoCのユーザーリサーチやユーザーテストをしています。アクセス解析やアンケート調査などの定量調査ではわからない文脈や背景がわかるようになり、1件あたりの情報量の多さに驚いています。まだまだ件数は少ないですが、デザインしやすい環境づくりのために少しずつ知見や経験をためていきたいです。

なぜはじめたのか

生活周辺を含めてユーザーのことを知りたいと思ったのは、ユーザーコミュニティでの体験が大きかったです。コミュニティの場ではユーザーの生の声が聴けるので、ユーザーコミュニティを通じて観察やリクルーティングの場としたかったのですが、ご存じのようにオンサイトで集まるイベントがなくなってしまいました。

最近はハイブリッドのイベントも増えてきたのがとてもうれしいです。参加者から熱量が伝わってきます。オンラインは場所を問わずに参加できるよさはあるものの、あの空気感はオンサイトならではで、出会いがあるのも魅力ですね。

募集しても全然あつまらない

オンサイトで集まりにくい状況になったので、まずはオンラインのインタビュー調査をすることにしました。最初は外部サービスを使ってみたり、メルマガを通してリクルーティングしてみましたが、なかなか希望するセグメントのお客さまが見つかりません。
ITエンジニアさんやウェブディレクターさんからお話を伺いたかたのですが、それ以前の問題で毎月目標を達成できない状態が続いていました。びっくりするほど集まらないので焦ります。そこで友人やコミュニティで知り合った方にお願いして紹介してもらうことを思いつきました。あとで知りましたが機縁法というそうです。

お勤めの業種や業態によってリクルーティングの難度が変わると思います。お知り合いがいないのであれば、同僚や社内に協力を求めてお知り合いを紹介してもらうとよいと思います。

兼務しながらリサーチは大変

はじめる前は低く(あるいは高く)見積もりがちです。なんとかなるだろうと思ってましたが他の業務と兼務はかなり大変です。

調査するために仮説を用意します。はじめてなので手元に情報はゼロです。ユーザーセグメントは利用料の中央値に、アクセス解析やお問い合わせの内容からひとまず仮説を立てました。

インタビュー台本の作り方は『UXリサーチの道具箱 イノベーションのための質的調査・分析』と『リーン顧客開発「売れないリスク」を縮小化する技術』を参考にしました。『プロダクトリサーチ・ルールズ 製品開発を成功させるリサーチと9つのルール』もおすすめです。ユーザーリサーチを始めるならこの3冊でおおよそ事足りると思います。

インタビューをした後はAIで文字起こしをしています。最初はUDトークを利用していましたが、今は Adobe Premiere で文字起こしをしています。この文字起こしが、専門用語が多い業界だとうまくできないので修正が膨大な量になります。1時間のインタビューの文字起こしを修正するだけで3時間以上かかっていました。
あまりにも大変なので、今は文字起こししたデータを共同編集できるように Office365 の Word や notion を利用してタギングした個所だけを修正するようにしています。重要そうな単語や文に線を引いておいて、チームで話し合いながら最終的に重要なものだけに絞ります。前後の文脈に関係するところを修正するとだいぶ楽になりました。

モデル化は共感マップとジャーニーマップにしています。東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクトで紹介されていた方法がシンプルだったので採用しています。インタビューした内容をマッピングするとインタビューを始めた初期はとくにそうなのですが、聴けていないところが可視化されるのでやってよかったです。とはいえ、マッピングに夢中になっていると時間が溶けていきます。

プロトタイプは Figma が今ならいいでしょう。すでに Xd や Sketch を利用しているのであればそれでもいいと思います。Penpot や ProtoPie も気になりますね。

レポートはあまり時間をかけずにプロジェクトのメンバーに伝わるようにテンプレートを作って簡略化したいです。PREP法をベースにテーマ、背景、期間、人数、方法とプロトタイプを付け加えるようにしています。ドキュメントの整備などまだまだ改善点がいっぱいあります。結果やまとめ方は業界やサービスによってケースバイケースだと思うので試行錯誤しながらやっているところです。

大変でも得られるものが大きい

これまでユーザーリサーチをした経験を活かして、新規事業でも調査を行っています。デザイン思考とリーンも取り入れて少しずつ活用する範囲を広げることができています。また、デザインにデザイナー以外も参加してほしいという思いもあって、社内でインタビューやユーザーテストをできる人を増やす活動もしています。それもこれもリサーチで得られる一次情報の価値に強烈なインパクトがあったからです。
この辺りは長くなるので、また次の機会に書きたいと思います。

まとめ

だいぶ端折っていますが、日程調整から本番前のインタビューの練習、モデル化、レポート作成とプロトタイプまで含めるとやることがいっぱいあります。ボトムアップでユーザーリサーチを兼務するのはかなり大変なので、5件ほどやってレポートを共有して社内の理解を得るとよいと思います。

ユーザーリサーチは専門家じゃなくてもはじめられます。解像度が高まることでアイデアも評価の仕方も変わります。気になっている方は是非チャレンジしてみてください。まずはお知り合いを探しましょう!そしてインタビューの終わりに次のお知り合いを紹介してもらうとよいと思います。

ここまで読んでいただいた方、これまでユーザーリサーチに協力していただいた皆さんに感謝しています。

参考にした書籍

  • UXリサーチの道具箱 イノベーションのための質的調査・分析

  • プロダクトリサーチ・ルールズ 製品開発を成功させるリサーチと9つのルール

  • ランニング・リーン

  • リーン顧客開発「売れないリスク」を縮小化する技術

  • The Design Thinking Playbook

  • エンジニアのためのデザイン思考入門

  • About Face 3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?