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揺れる、揺れる

ガタゴト、ガタゴト…

線路に沿って電車が走る。

横掛けの椅子には私と居眠り中のクラスメイト。

さっきまで話していたのに、いつの間にか途切れていた。でも、心地のいい沈黙。

電車内には私たちと対面に座るおじいさん。競馬の結果が気になるようだ。

トンネルに入った。暗転した車内に少しだけ明かりがともる。

半身ほど空いたクラスメイトとの距離をそっと詰め、横顔を眺めた。あまり人の顔はじろじろ見るものではないが、つい気になった。

大人びているように見せてまだ子供っぽさが残る思春期の顔。いや私もそうだとは思うが。いつも私をからかうくせに、私の変化にはすぐ気づいた。数時間一緒にいて気が付いたことは、意外と勘がいいっていうこと。あとは、やさしいということ。みんなにも気づいてほしいが、私一人の秘密にしておきたいときもある。私もたいがい複雑だな。

トンネルを抜ける。窓から光が差し込んで、クラスメイトの横顔を照らす。目を一瞬しかめた後、何事もなかったかのようにまたうとうとする。私は窓際のカーテンを閉め、またおじいさんの座っている席の方を向いた。

おじいさんがこちらを見ていた。

私は、恥ずかしくなり顔を下に向けた。ちらりと確認するとおじいさんは微笑んでいた。そしてまた新聞に目を向けた。

肩に何かが触れる。数時間一緒にいたクラスメイトの暖かさが伝わってくる。夏なのに暖かく感じる。寝息が聞こえて車内の動く音にかき消される。

対面越しのおじいさんが席を立った。まだ到着駅までは遠いはずだ。

「お嬢さん、今日を楽しみなさい。」

そういって別の車両に移っていった。

顔が熱い。きっと真っ赤な顔だ。もうこの隣の人をクラスメイトと見れないかもしれない。

二人だけの車内。初めての淡い思いと、胸の高鳴り、やさしい隣からのぬくもりとおじいさんの言葉が頭の中で反芻して胸がきゅっとなる。

想いも電車も、揺れる、揺れる。

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