空想生物の作り方
はじめに
こちらはMisskey.art Advent Calendar の企画記事になります。
どうも、Misskey.art Advent Calendar19日担当のサフィアです!
私が説明できることっていったらなんだろうなって考えて、人はそんな得意じゃないしいつもドラゴンか何かしか描いてないし、だったらできるのは現実には存在しない不思議ないきもの(以下空想生物と記述します)の作り方くらいだろうなと思ったので、一つ書いてみることにしました。もちろんこれ通りに作る必要は全くない(だって空想の生き物だもの!)けれど、空想生物を描いてみたいけどどういう風に始めればいいかわからないとかの悩みに対して少しでも参考になれば幸いです。
まずは既存の空想生物を見てみよう
一から作る前に先人の作った空想生物たちの姿を改めて見てみましょう。新しく作るための参考になります。というわけで、今回は外見でざっくりと分けた2例を紹介します。
空想生物の大半は既存の生物・道具の複合体
空想生物は複数の生き物を複合した形状のことがとても多いです。例えば有名どころで見た目から分かりやすいものだと…
グリフォン・・・鳥+ライオン
キマイラ・・・ライオン+ヤギ+ヘビ
上記の通り、生物を組み合わせて作られています。フェンリルも狼を3匹合体させた生物と言えばこの複合体パターンに当てはまったりします(あと蛇もついてる)。また、天使は人+鳥の複合体、人魚も人+魚なのでこちらの複合体パターンに当てはまる空想生物ですね。
ちなみに来年(2023年現在)の干支の主役である辰(龍)は9種類の生物(ラクダ・鹿・鬼・牛・蛇・蜃・鯉・鷹・虎)の複合体とされる説があります。多すぎでは???
…鬼とか蜃(※蜃気楼を作る空想生物 竜かハマグリの姿をしている)みたいな空想生物も複合されてるけどこれは生物として判断していいのだろうか?まあいいや!次!
要素から能力を連想
例えば火の精霊・サラマンダーは上の合成獣と違い、元の生物の持つ要素から能力を付与されて幻獣としての形を得たパターンを取っています
サラマンダーの元にされている生物、イモリ(サンショウウオ)は古代ヨーロッパで『触れたときに冷たい、この冷たさだと火も寄せ付けないだろう、もしくは触れればその火を消してしまうほどだろう』と信じられていたとされています。(ちなみに実験で焼け死ぬことも当時の時点で確認されているそうですが、それでもこの迷信は中世まで続いたそうです。思い込みの力ってすごいね)
その結果、16世紀に錬金術師パラケルススによって炎の精霊であるとされ、サラマンダーという幻獣が生まれました。
上記ルールを元にオリジナルの空想生物を作ってみよう
パターン1:既存生物からの複合体
まずは既存生物から複合する方法で作ってみましょう!
※初めて作るときにイメージするといいこと
いきなり多数の生き物を合体させると混乱してしまうので、合成数は最初のほうは抑えたほうがいいかもしれません。
熱帯系の魚類・鳥類・昆虫・花等は配色がとても鮮やかな為、色のみを複合要素として取り込むのもお勧めです。
あと翼や棘は最強アイテム、付ければ一瞬でファンタジー生物の完成です。
2~3種類くらいに生物を押さえる
配色に迷ったら熱帯地方の生き物から色だけとるといいかも
迷ったら翼とか棘とかつけとけ
というわけで今回は下記三体を使用してさっくり空想生物作ります!
熊
今回のデザインの素体として使います!
合成するときにはある程度体の形を本来の生き物から崩しても大丈夫です。なぜなら今から描くものは空想生物であって、本当に存在する生物を描くわけではないからですね。デカい・重い・早い!割とこのままでも強いというかとにかく危険な生き物ですよねこいつ…もうそのままファンタジー世界に行け。
ライオン
熊にネコ科のしなやかさと防御力を増やしたいなー!あと尻尾が欲しい と思って合成するものを決めました。熊の尻尾も可愛いけど、今回はもっと長いのにしましょう。
ライオンのタテガミはただの飾りではなく、前方からの攻撃を防ぐための盾としての能力があります。元々筋肉の塊みたいな熊にさらにタテガミを追加することで四つ足になったときの防御力を上げるイメージでの追加です。あとは猫科も熊も木に登れるからという共通点も見出してのチョイスです。
鳥(ズグロモリモズ)
配色の為と背中が寂しいので翼を付けるためにチョイスです。今回は鳥と生物を指定して追加していますが、単純に翼つけたいとかだったらあんまり品種は気にしなくていいしファンタジーな形状で大丈夫です。ちなみになんでちょっと色味の地味な鳥にしたかというと気分的に毒属性付与したかったからです(この鳥は羽に毒があるのだ)。ここではそういう性質のある鳥使ったけど属性も特に気にせず後付けでも大丈夫。
そしてこれらをま~ぜま~ぜして完成したのがこんな感じの空想生物です!
熊を素体に首周りにタテガミを付け、尻尾がライオンのものになりました。背中には鳥要素をそのまま載せるように合体させてます。なので器用な足が一対増えました。懐に入ったら多分頭を鷲掴みにされる。手足はライオンのものにしていますが、熊の爪も残したかったので上のほうに棘のように生やしました。
色はそのまま持ってくると生き物によっては違和感のある雰囲気になってしまうので(今回の場合そのまま持ってくると囚人服みたいなの着てる風になってしまった)程よく模様とかを入れておくと違和感が減ります。この辺りは雰囲気とノリでどうぞ。
今回は乱雑な組み合わせにしていますが、慣れてきたら創りたい生き物のさっくりした生態を先に考えてから組み合わせる生物を決めていくと、いい感じに纏まった創造生物ができやすいです。例えば最初に伝えた『迷ったら翼を付ける』というのも、小鳥から猛禽までそれぞれ種類・生息地・生態 その他諸々な要素が関わった結果同じ鳥でも翼の形が全く違うので、そこだけでも選択肢が数千以上あるという事になります。この辺りは動物に対しての知識が必要になってくるかも…?
パターン2:要素から連想して生成しよう
次に生物の要素から生成していきましょう。こちらは生き物の要素からデザインを引き出していく形になります。
というわけでこちらはカニを使いましょう。カサカサ…カサカサ…
カニの要素をざっくり分けると…
前脚が鋏である(切断しそう・なんだか口みたい)
水辺に住む生物(水属性かな?)
甲殻に覆われている(堅そう)
さあ連想ゲームの時間です!まずは生物の要素から付与したいイメージを考えます。
鋏に甲殻 切断しそうだし…金属みたいな色味にしてみよう ただ金属カラーだけだと地味だから、警告色みたいにカニ本来の色を模様で入れようかな
水属性だから水を纏わせたいよね 鋏も口みたいだしそこから高圧洗浄みたいに水発射できると格好いいかも!
とかなんとか色々考えてつくったカニ強化版がこちらになります↓
甲殻ゴリゴリ。関節とか腹の所に指突っ込むと多分カブトムシの首のところに指挟まれたみたいなやつのもっとグロい版になる。なおなんかとげとげしてるのは硬いモノ描くときの趣味です。手癖って抜けない。
今回は説明なのであっさり目の連想で済ませていますが、例えば鋏を顔に見立てたり、今回連想の元にしなかった場所(潜望鏡のように伸びた目とか幼体だと形が違うとか)からさらに伸ばしていくともっと違う姿になるかもしれません。作ろう自分だけの最強のカニ。
ちなみにこれの派生で必要な要素のみを抽出して、限界までそれ以外を削り落としてデザインするという方法もあります。例えば鳥から翼、羽ばたくという要素だけ抽出してあとは全部消して鳥と言い張るとか。
ルールを組み合わせるとこんなことも
このイラストは私がオリジナルキャラクターとして作成した空想生物(ドラゴン)です。
このキャラクターは最初に『ART鯖をモチーフにしたドラゴンを作りたい!』と考えて作り始めました。
最初は要素から始めていますが、その過程で
ドラゴン(素体)
ART鯖のロゴ(全体的な色合い・額の模様が実はM)
絵筆・紙(ここまでは最初の発想 たてがみと翼)
羽箒(上から派生 耳飾りっぽくなってお得)
絵具(緑単色だとなんかつまらなかったので模様として絵具をぶちまけた)
ヘッドホン(実は角がこれ 巻き角にすることで嵌めてる風に)
五線譜(絵の要素ばかりで音楽要素ない!足りない!って思って追加 腹部の模様)
鉛筆(文章書くには必要ですよね、筆記具 背中の棘)
と、連想・複合する要素を追加していっています。無機物でもこうやって複合生物にしようとすれば可能だったりします。ただ無機物はものの形がしっかりしている分、うまく有機物に混ぜ込むのが難しいのでけっこうセンスを磨くことになります…
これに関してはミック小野様が製作している人種『サーガル』が見た目だと分からないほどにかなり綺麗な形で組み合わせているので見てみるのもいいかも…あのくらい私も綺麗に組み合わせたい…!!
要素組み合わせが思いつかないよー!どうしよう!ってなったら要素ガチャを使って(作って)出たものつかってもいいかもしれないですね。ART鯖だと土曜開催のアートキャラデザワンドロでも使用されているキャラデザ要素ガチャがあるので、それを使って考えてみたり?
おまけ:作る際に参考にしている本
いくつか参考にしている本は所持していますが、その中で特に使用することが多いものを3冊紹介します。
幻想世界 幻獣事典
私が空想生物を描く際に既存空想生物を探すために使う本です。有名な幻獣から比較的マイナーな幻獣までかなりの範囲がイラスト・簡易的な説明と共に記載されているので、ここからインターネット等で詳細を調べる際の足掛かりに使うことが多いです。
幻獣と動物を描く
とりあえず空想生物描くならこれ買っとけ!!!って感じの本です。動物の組み合わせ方や要素を取り出してデフォルメ化するやりかた、生態の考え方等が描かれており、文章より絵での説明が多いため見て覚えることがやりやすいです。あと単純にリアルで世界も出来上がってるので見てて超楽しい。
動物画の描き方
これは空想生物ではなく、陸上動物の描き方を説明した本になります。動物の動きもいくつか記載されているので、リアル寄りで空想生物を描きたいという方は、これを見ながら骨格や部位のつながりを描いて覚えていくと動物も描ける!空想生物も描ける!かけるもの増えた!ってなります。一冊でとてもお得。
上記三冊以外にもお勧めするのは図鑑や動物の飼育本です。動いてる姿勢や生物の体色・体格が写真で記載されているので、資料として使いやすいです。なんなら知らない生物も記載されてることもあるので生物知識が上がります。合成するときに知識を複合して作れるようになったりするのでお得。
おわりに
駆け足気味の説明になりましたが、私の場合はこういう感じで空想生物を作っていくことが多いです。絵柄が厚塗り多めであまりデフォルメ系とは縁遠いので、比較的現実にいそうな形を考えがちですが、私だと思いつかないような組み合わせも見てみたい! というわけで…
みんなも自分だけの素敵な空想生物、作ろう!楽しいよ!
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