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蝶々が怖い/おだやかケルベロス/スポットライトねこ

はにはいつも素敵な提案をしてくれる。
それは日々の些細なすごし方についてもそう。

朝、ふたりとも比較的早起きできた日に
近所の、行ったことのないパン屋さんでパンを買って
近くの公園で食べようと提案してくれた。

自転車に乗ってパン屋さんへ。
ほぼ開店と同時くらいだったので、
まだ焼きあがっていないパンもいくつかあることを
店頭の焼き上がり時間表(親切!)で知る。
はにがひそかにクロワッサンを狙っていたらしいことをそこで知る。

それでもたくさんのパンの中から
お目当てを選び、アイスコーヒーも一緒に頼めたので注文し、
近くの公園へ。

公園ではアゲハ蝶がたくさん飛んでいて、
ベンチに座った我々なんて存在しないかのように近くに寄ってくる。
なぜか幼いころからちょうちょが嫌い、というよりも
恐怖を感じる私は、ときどきベンチを立って逃げなくてはならない。
(あんなひらひらの毒もないやつらを恐れなくてはいけない理由は自分でもわからない。でも首に巻物をしたりして守ると多少対峙しても大丈夫になる不思議)
アゲハたちの襲来も少し落ち着いて、持っていた手ぬぐいを首に巻いて
パンをいただく。
なかなかいい感じ。
引っ越す前にかなりおいしくてお値段も良心的なパン屋さんがあって
引っ越したくない理由といえばそのくらい、みたいな愛するお店だったので
近所においしいパン屋さんを探していたけれど、なかなかいい線いってる気がする。
そういえば前の前の家も近所においしいパン屋さんがあった。
ほんのり小麦アレルギーな私にとって、パンを食べるというのは
日常的にできることではないので、せっかく食べるならおいしくて
少しでも添加物なんかが入っていないものを、と思うと
近所のおいしいパン屋さんはあってほしいけれど、
近所すぎると誘惑に負けまくるので、自転車でちょっと走る必要がある
このお店はその点でもポイント高し。

アゲハからパンに集中しはじめたところで
しばいぬ3匹を連れたおさんぽおじさんが登場。
それぞれ伸縮リードにつながれ、めいめい好きに歩いている。
もちろんそれぞれ細かい個性はあるけれど、
ほぼ相似形のようなしばちゃんたちは、
おだやかなケルベロスのようでおかしみがあってかわいい。

飼い主はおじさんというよりほぼおじいちゃんなので
3匹が急に走り出したり何かに向かっていってしまったときに
すばやく伸縮リードのロックボタンを押す、なんて難しいだろうな…
大丈夫かな…とも思ったけれど、
そんな心配はいらないくらい静かな子たちであった。
(でもやっぱり動物だから絶対ということはないので、
わんちゃんたちのためにも、まわりの人や犬のためにも
ほんとうはあんまりよくないとは思う)

我々の座るベンチの前も当然通ってくれるものと思って
移動ショータイムの訪れをうきうき待っていたのに、
公園の入り口を少し歩いたら踵を返してもときた道を帰ってしまった。
残念。

そのとき。

「ねこだ!!!笑」とはに。
おだやかケルベロスを見ていた目線をそちらに向けると
目の前にグレーのねこがいた。
はにが笑ったのは、あまりにも我々に見て下さいといわんばかりの場所に
突如として登場したから。
ベンチからまっすぐ前に立っている木の下に
ぽっかり日が当たって、スポットライトがさしたステージのようになっていて、そこにいた。

前の家では近所にあまり地域ねこがいなくて
諦めていたころ(たぶん住みだして2年くらいたっていた)、
体調回復のために散歩に出かけるようになったら
窓から外を眺めている家ねこちゃんたちにぞくぞくと会えるようになり、
それにともなって絶対にゼロだと思っていた地域ねこちゃんたちも
ぞろぞろと会えるようになった。

今の家に引っ越してきてからも、地域ねこは居そうにないねと
はにと話していたところ、近所の理髪店に、
ときどき看板ねこ的に出勤してくる子の存在に気づいた。
1匹会えるとねこ運が上がるらしく、どんどん会えるようになるのが
私の中でジンクスとしてあって、その子は飼われているねこだったけれども
ちょっと期待と予感をもっていたら、
やっぱり先日ついに第一地域ねこに会えたところだった。
そこからは住宅街でも会えたりして、それがこの日また強化された。

都会の地域ねこにしては近い距離でしばらく毛づくろいしたり日向ぼっこしたりしてくれていたのがうれしかった。

都会とは言えない実家のほうでは地域ねこのフレンドリーさが異様で、
当時小学生とかだった自分にも寄ってきてくれて(大抵キッズは敬遠されがちだと思うのに)、学校帰りの道々遊んでくれる
仲良しの子が何匹もいたし、そのうち1匹は子ねこの頃から遊んでいたからか、自分が産んだ子ねこ4匹を見せにきてくれたりもした。
孫ねこたちはほにゃほにゃで軽くて、生まれたてのほげほげなのに
それぞれにもう性格が全然違った。
ねこじゃらしを持った私の手の爪の根本に、いちばんやんちゃだった子の
細~い爪が引っ掛かってぶらーんとぶら下がったときは、
体重が軽いとはいえそのあとしばらく軽くトラウマだった。
今思えば感染症とかにならなくてよかったな。

もちろんどこかに出かけるのも楽しいけれど、
こういう日がすごせると、ものすごく幸せを感じる。
この家で迎える秋をとても楽しみにしていたので、
短い秋の、この気持ちのいい気候を
はにとたくさん味わいたいな。
歳を重ねて、新しい季節を迎えられるよろこびが増えて、
住む環境もだいすきな場所に出あえてうれしい。

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