最近の記事

川の字

本記事は以下の画像を使用しています。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ryokan-hakone-en-4.jpg © 2007 Micha L. Rieser. The copyright holder of this file, Micha L. Rieser, allows anyone to use it for any purpose, provided that the copyright holder is pro

    • 「自明な正しさ」を分解し、再構築する 生命式 / 村田沙耶香

      作品のあらすじ 舞台は、人口減少が深刻化し、性行為の機能から「性愛」や「快楽」が排除され、「生殖」のみに重きを置かれるようになった世界。  そこでは、故人の肉を食べて男女が交尾をする新たな葬式「生命式」がスタンダードになっていた。  主人公の池谷は、人肉食が「人間の本能」によってタブー視されていた時代をよく覚えているが故に、人肉食の慣習に違和感を持っていた。しかし、その違和感を共有する相手だった同僚の山本が亡くなり、その葬儀を執り行う過程で、池谷はこの世界の「正常」を受容し

      • 戸締り

         目を覚ますと、薄暗い床を眺めていた。そのままカーペットに沿って視線を移動して行くと、大窓を通して外の様子が目に入る。日はとっくに沈んでいるようで、辺りはすっかり暗くなっていた。  点けっぱなしになったテレビは、繁華街のネオンサインのように、まるっきり意味のない光を明滅させている。どこか足元の方では、右から左へ、あるいは左から右へと、一定のリズムを繰り返しながら、扇風機の送風音が聞こえてきた。  私の身体は、リビングのソファの上にうつ伏せになって転がっていた。鳩尾に汗が染