【備忘録】オーケストラ(エピック系)のミキシング/旋風の射手リーバル(『ゼルダ無双 厄災の黙示録』より
はじめに
自己紹介
はじめまして。いもぞうと申します。私は日ごろ会社員をしながら、趣味で作った曲をネットにあげています。紆余曲折ありDTMを始め4年ぐらい経過し、ようやく作りたい音楽や目指す方向性が見えてきました。今はゲーム音楽の作曲をすることを目標にしています。
耳コピからオーケストラのミキシングを考える
エピック系オーケストラのゲームBGMってかっこ良いですよね。ただ、オーケストラ系の楽曲に関するDTMのミキシングって良く分からないのです。オーケストラのミキシングについて書いてある記事もありますが、まず実践でやってみてなんぼだと思い、好きなゲームBGMを耳コピしました。その中で気づいたことがあるので、備忘録として残すことにしました。
※ 耳コピのやり方については割愛します。
注:素人の見解です。
耳コピした曲
「旋風の射手リーバル」(『ゼルダ無双 厄災の黙示録』より
↓公式サイト様
【本家音源】
【耳コピ】
楽曲について
まず、この曲はオーケストラの中でもエピック系オーケストラ(シネマティック音楽)と言われる「映画音楽で使われるような壮大なオーケストラ」だと理解しています。また、民族調の雰囲気も感じられます。
元作品の「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」がピアノ中心の主張の少ない退廃的なBGMが多い(プレイヤーの没入感を高める効果)のに対し、「ゼルダ無双 厄災の黙示録」では敵をなぎ倒していくのが中心となるため、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の原曲へのリスペクトが感じられる壮大でかっこいいアレンジが多い印象を受けます。楽曲については上記の動画内で色々書いているので割愛させていただきます。
ミキシング
手順
人によってミキシングの手順は異なると思いますが、①パン振り→②音量フェーダー→③奥行き→④帯域(EQ)→⑤空間(リバーブ、ステレオイメージャー)の手順でやりました。①~④はバランスが崩れていれば前の工程に戻しました(特に②のフェーダー調整)。
楽器構成について
エピック系オーケストラ及び民族調の楽曲なので、オーケストラの楽器+シンセで加工された楽器+民族楽器で構成されています。今回仕様した楽器及び音源は以下の通りです。
弦楽器:ファーストバイオリン、セカンドバイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス
使用音源:Spitfire Chamber Strings Essentials/Miroslav Philharmonik 2
金管楽器:トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバ
使用音源:Session Horns Pro/Miroslav Philharmonik 2
木管楽器:フルート、ティンホイッスル(ケルト楽器)
使用音源:Miroslav Philharmonik 2/VS TIN WHISTLE
打楽器(クロマティックパーカッション):グロッケンシュピール、チューブラーベル
使用音源:Miroslav Philharmonik 2
打楽器:バスドラム(シンセで加工されたバスドラム)、タム(シンセで加工されたタム)
ティンパニ、ウィンドチャイム、スネアドラム、スレイベル、シンバル
使用音源:DRUMATIC CREATOR/Miroslav Philharmonik 2/HALion Sonic SE/BBC Symphony Orchestra Discover
挿入楽器:ピアノ、ハープ、アコースティックギター、アコーディオン
使用音源:Ravenscroft 275/Miroslav Philharmonik 2/AcousticSamples Sunbird/Le Parisien Accordion
楽器配置
通常ホールで聴くオーケストラの配置とは異なります。本家の音源を聴いて、楽器の配置を以下の図のようにしました。横軸がパン振り(左右)、縦軸が奥行きを表しています。この配置を元にミキシングを進めます。
ミキシング工程
①パン振り
低域で楽音を発する楽器(コントラバス、チューバ)は端、同じ低域でも噪音を発する打楽器類はリズムやノリを作るため中心寄りにしています。旋律を奏でる楽器は中心寄りにしていますが、周波数帯域が被るとこもった感じになるため、少しずつずらしています。私はCubaseを使っていますが、パン振りはDAWによっても加減が異なるので、最後は耳で聴いて調整した方が良いです。
②音量フェーダー
各トラック内のダイナミクス(ボリュームの大小)を作った後、セクション(弦楽器、金管楽器等)ごとに全体の音量バランスを調整しました。ある程度整ったら、セクション内の音量調整をしました。一番聴かせたいトラックを軸に他のトラックの音量を調整しました。音量バランスについては下記の記事を参考にしています。
③奥行き
弦楽器、旋律を奏でる楽器(ティンホイッスル、アコーディオン)は前に持て来ています。エピック系のパーカッション音源はリズムやノリの要となるため、埋もれないように最も前に置きました。金管楽器はアタックが強く飛び出しやすい(特にトランペット)ため奥に置いています。効果音の役割が主な打楽器(ウィンドチャイム、チューブラーベル、シンバル)、音が前に飛び出しやすい打楽器(スネア)は奥です。ティンパニは全体の周波数帯域のバランスを見て左に配置しました。
奥行きを出すためには、コンプレッサーを利用する方法(アタック感を調整して音の前後の距離感を調整する)もありますが、難しいと感じたので、Smack Attackと言うトランジェントを使っています。それに加え、極端に飛び出る帯域のある楽器はダイナミックEQやマルチバンドコンプレッサーでフレキシブルに調整します。EQを調整すると楽器の音色が変わる可能性があるため、特定の帯域が飛び出たときのみ制御をかけるようにします。
※高さ
高さを調整するプラグインは調べても出てこないのですが(あったら教えていただきたいです)、「高い音はまっすぐ細く伸びていきます。」「低い音は音の発信源を中心に円を描くように広がっていきます。」「高音は低音に比べ反射しやすい性質を持っています。」と言う物理的な面と、「左右の耳でキャッチする音には「時間の差」と「強度(音圧レベル)の差」が生じ、人はこれらを手掛かりとして音源の方向を判断している」「直接音だけでなく、反射音なども含めて総合的に両耳に届く音のさまざまな差を脳で分析し、音の方向を特定している」と言う音を聴きとる仕組みの面から、高い音は上から、低い音は耳と同じ高さかそれより下から聴こえやすいと言う印象があります。高さを直接調節するプラグインはないようですが、リバーブやステレオイメージャーを駆使して音の広がりや空間を調整することはできます。
④帯域(EQ)
EQは、音像がすっきり聴こえるように帯域を調整します。ただし、オーケストラの場合はポップスのやり方では上手くいかないようです。②音量フェーダーでも参考にさせていただいた記事から引用します。
⑤空間
リバーブ、ステレオイメージャーを使って音像の広がり方を調整します。モニタースピーカーやモニターヘッドフォンによって聴こえ方に差が出ることもあるので、耳だけで調整せずにアナライザーを使い本家の音源と耳コピした音源を視覚的に比べます。私はMMultiAnalyzerを使っています。
最後に全体にEQをかけ、MS処理やL/Rの帯域調整をして、本家の音像に近づけます(やりすぎると定位が狂います。)
リバーブはTrueVerb、ステレオイメージャーはS1 Stereo Imager、EQはFrequencyを使いました。
おまけ:マスタリング
ミキシングが終わったら、音楽を聴く媒体に応じて(配信向けなのかCDなのか等)マスタリングを行いますが、私は細かい調整はあまりしていません。iZotopeのAIマスタリングツールOzoneを刺せば、音圧が上がり良い感じに仕上がります。どうしても0dbを越える場合はコンプレッサーをかけるか、Ozoneのoutputの量を減らすかして調整します。
私が使っているのはOzone9 ELEMENTSですが、現在Ozone11まで出ているみたいです。iZotopeは時々OzoneやAIミキシングツールのNeuronの一番グレードの低いELEMENTSを無償配布することがあるので、セール情報をチェックしておくと良いかもしれません。
最後に
挨拶
最後までお読みくださりありがとうございます。今回はオーケストラミキシングの勉強ために耳コピをしてみて、非常に時間はかかりましたが勉強になりました。素人の見解なので、間違いやアドバイスがあればご指摘をお願いいたします。
また、日ごろはゲーム音楽の作曲家を目指してオリジナル曲を作っています。ピアノやオーケストラ系の曲が多いですが、チップチューン音源を使った曲やジャズ・フュージョン寄りの曲も作っています。下記に作った曲のリンクを貼るので、聴いていただけると大変嬉しいです。
作品リンク
【youtube】
【X(旧Twitter)】
@ImozouIm
【サブスク】※ALL BGM CHANNELより
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