サピエントゥス男爵

無為徒食なりに何かの経験を書いてみたくなった。放心癖を持つディレッタントが日常と非日常…

サピエントゥス男爵

無為徒食なりに何かの経験を書いてみたくなった。放心癖を持つディレッタントが日常と非日常を綴るエッセイ。過去記事は不定期に加筆・修正している。

最近の記事

ローマ旅 DAY 6 -ヴァティカン博物館-

非日常のなかの日常ローマに来てからずっと好天に恵まれてきた。昼間はうららかで温かい。日本からダウンコートを持ってきたが、当分着る機会がなさそうだ。おかげで毎日晴れやかな気持ちだけ軽装してローマの古今を歩き回っては観察し、勉強し、大いなる精神に陶酔している。世界の都を充満する理性と感性の美を自分の中に結晶させるには沈殿の時間が必要だが、今はとにかくミツバチのように採蜜に勤しんでいる。これほど充実した日々を過ごしたことが果たしていままでの人生にあっただろうか。ホテルに帰ってくるの

    • ローマ旅 DAY 5 -泉、そして博物館-

      トリトーネの噴水、トレヴィの泉そのまま歩いて、スペイン階段を下って、広場で左折する。ほどなくして、トレヴィの泉に出会う。昨日の帰り道を逆方向に辿っているのに、昼と夜とではまるで別世界のような光景を目にしている。この時間のローマの街は開演前の舞台セットのようだった。 昨日、トッレ・アルジェンティーナでカエサルを偲んだあと、ハドリアヌス神殿に寄り道してからホテルに戻ろうとした。ところが小路に入ってしばらく歩くと、眼前にひしめく烏合の衆に泡を食った。然もありなん。帰路の道程にはロー

      • ローマ旅 DAY 4 -イエズス会、そしてカエサル暗殺現場-

        ドミティアヌス競技場、ナヴォーナ広場バチカン市国に赴いたものの、元旦は特別入場券がないとサン・ピエトロ大聖堂に入れないとのことで、仕方なくマルスの野に引き返した。 マルスの野は軍神マルスに捧げられた場所で、ポメリウム外ということで、練兵場として利用されたり、ケントゥリア会が開催されたり、凱旋式を控える将兵の待機場所になったりした。共和制末期になると、市内が窮屈になっていたため、公共施設や住宅が雑駁とここに進出し始めた。昨日訪れたアウグストゥス廟もマルスの野にある。 現在ナヴ

        • ローマ旅 DAY 3 -広場、そしてアウグストゥス-

          スペイン広場、ポポロ広場大晦日。未明の紺碧の空と凛々しくライトアップされた大理石の建物のコントラストは美しい。トリニタ・デイ・モンティ教会から階段を下って、舟の噴水に至る曲線軸は伸びやかな優雅さを作り出す。その中段に設置されているクリスマスツリーも見事に広場にマッチしている。イタリアでは、12月8日の聖母無原罪の御宿りの日から1月6日のご公現の日まで、教会の内外にツリーとご降誕のジオラマが飾られる。空気がひんやりと肌に触るが、さわやかな気持ちになる。 「写真を撮ってもらえない

        ローマ旅 DAY 6 -ヴァティカン博物館-

          ローマ旅 DAY 2 -古道散策-

          カラカラ、弟殺し、浴場、市民権時差ぼけを逆手にとって、街が眠りから覚めぬ未明に出かけた。地中海気候のローマの冬は京都より暖かい。12月30日本日の最低気温は10℃を超える。良い散策日和だ。今日はアッピア道を歩く。 目的地に向かう街歩きこそ楽しいはずだ、という思いから、今回の旅はあまり電車を使わないことにしている。そのため、24時間券などではなく、回数券を使った。100分以内ならバスと電車を€1.5で何回でも乗れる仕組みである。ローマ地下鉄のエスカレーターは、手すりのほうが踏段

          ローマ旅 DAY 2 -古道散策-

          ローマ旅 DAY 1 -羅馬到着-

          空から陸、窓からの景色書物から了解している地理を実際に機窓から見るのは、心躍る体験だ。9年前に大学院を出たあと、九州の友人を訪ねる際に上空から鳥瞰する関門海峡は、そのときに感じた充足感とともに今でも鮮明に思い出す。疲れが取れない機中泊から目が覚めて、パーソナルモニターを使って現在地を確認しながら窓外を見下ろすと、カラッとした雄壮なアナトリア高原が広がっていた。長く飛んできたアジアはそろそろ終わる。続く現れるコンスタンティノポリス。330年5月11日に完成を祝した大帝の名を冠す

          ローマ旅 DAY 1 -羅馬到着-

          ローマ旅 DAY 0 -台北乗継-

          ローマに17日間旅をする。ローマとその周辺にしか行かない。安いB&Bに泊まる。写真をあまり撮らない。グルメを求めない。ひたすら知と美を追い求める、思索の旅を作っていく。 出発、関西国際空港空港という場所は、めったに訪れないからこそ心を振るわせる魔力をまとう。ひと月前の急遽の台湾出張によって、旅の劈頭を飾る部分がそれほど鶴首たる興奮を伴わなかった。リュックと30Lのスーツケースといういつもの軽装主義を携えて7時半過ぎに家を出たものの、特急はるか号に乗るや否や、朝食後の牛乳を飲

          ローマ旅 DAY 0 -台北乗継-