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思い出のストリップ劇場6 「郡山ミュージック」

 福島県郡山市。福島県には1980年代1館しかストリップ劇場がなかった(温泉場は別として)。当時の住所は郡山市本町1−6−15。JR郡山駅から徒歩15,6分の住宅街の中にあった。
 開館がわからないが、そこそこ古い劇場なので、元は芝居小屋だったのではないか、と思う。

 ここは私の所属するチェーン館で、初乗りは1988年。当時の「栗橋大一劇場」(現ライブシアター栗橋)とチェーン館同士でも仲がよく、栗橋で社長をしていた方が郡山の社長となり、香盤にバラエティ色が出てきた。とても前向きな考え方で、お客様が喜ぶなら何でも取り入れる、といった方だった。踊り子さんの意見もよく聞いてくれた。とはいえ、ホンバン、個室サービスはもちろんあった。明るい、朗らかな人柄の社長で、よく従業員や踊り子を飲みに誘ってくれた。近所の中華屋が定番で、社長おすすめの「えび餃子」を食べさせられた。「ほら、ヒロミちゃん、食べて、ビール飲んで。エビ餃子おいしいでしょ!」いや、ありがたいのだけど、開演中の時もあり、ステージ前の餃子はきつかった、、、。

 場内はそこそこ広く、キャパ50人。本舞台、花道は狭く、大きな盆がデン!とあった。ただこの盆、モーター部と盆の間の隙間が広く、ロープが絡まったり、踊り子さんが足を取られたりと、ちょっと厄介ものであった。
 お客様はおとなしい方が多く、ムッツリスケベ型。私は黙々と演し物をこなしていたが、ヤジるお客さんもいなかった。私のように独り没入型にはやり易い雰囲気だったが、コミュニケーションを取るにはやり辛い劇場だったかも知れない。
 そう、ここの常連さんの一人に何かのアーティストな方がいて、手作りの応援グッズを頂いた。すごく嬉しかったなぁ。


 友となった後輩の牧瀬茜嬢(アイドル踊り子、今も現役)のファンの方だった。そう言えば茜ちゃんは、自らが企画した演奏ライブをこの場内で行ったり、近所の飲食店で行ったりと郡山ライフを楽しんでいたっけ。
 そして4回めの夜ともなると、温泉場からの団体様、興味本位のヤンキーたちなどがいて賑やかな場内となっていた。社長はそんなお客様を嬉しがって、見送りに一段と声を張っていた印象だ。

 楽屋は、ほとんどの踊り子さんが泊まりだ。私は個室をもらっていたが、通常二人で一つの楽屋。大部屋もあった。食事はなし。台所があり、夜のつまみにシャウエッセンを炒めていたのを思い出す。

 この劇場に乗るのが楽しみだった理由の一つに、道すがら瀬戸物屋があった。大きな店で、日常使いの食器などが売られていたが、その中に作家のオリジナルぐい呑があった。この店になぜ入ったか覚えていないが、おそらくショーウィンドウにガラス製のぐい呑が飾られていたのだろう。普段このような店に入ることもないが、つい、入ってしまった。そして一品物のぐい呑に惹かれてしまった。10日間の興行の間に何日通ったか。そしてお気に入りのぐい呑を楽日に1点買うのだ。たった1点のために何回も通う私にお店の方は優しく対応してくれた。こう書くと高額商品みたいに思われるかもしれないが、ちょっぴりの贅沢くらいだ。またここの手提げ紙袋が良い。真っ白な紙袋だが、墨字で季語が書かれ、一文字判子が押されている。粋な店なのだ。
「大田大一劇場」の項で書いた友達になった踊り子「友ちゃん」ともこの瀬戸物屋のことで話に花が咲いた。「この紙袋が良いよね」と。
 しかし残念ながらここで買ったガラス製のぐい呑は1つも残っていない。なぜなら、酔っ払って割ってしまったから。酔っ払っているのにすぐ洗いたくなる。そして手が滑り、落とす。あーあ、、、。

 もうひとつ、劇場とは関係ない話だが、私は青森県にある霊山「恐山」に興味を持ってい、一度行きたいと思っていた。
 1994年。この劇場でプチSM大会があった際、ふと思い立った。郡山から恐山の青森ならそれほど遠くない。よし、行こう!と楽屋で決めたのだ。それから本屋で調べたり、時刻表の本を買ったり、計画をねっていた。そしてもう一つ。下手の横好きだが写真を撮りたいと思った。今みたいにスマホがあるわけではない。「写ルンです」で撮るのもちょっと違うかな、と思い、カメラを買う決意もした。バカチョンですけどね。
 郡山駅前に「ヨドバシカメラ」があった。そこへ通い自分なりに好みのものを選んだ。キャノン「オートボーイ」。当時発売されたばかりで、バカチョンでも10万円位したと思う。これまた楽日のギャラ支払いを待って、買いに走ったのだ。
 いやー、行って良かった。これを最後に郡山には乗っていないから。そして帰りは初、夜行列車の旅ができた。いい思い出となった。

 郡山ミュージックの閉館は2009年。照明や従業員は栗橋の劇場へ引き継がれた。
 ステージ中の思い出はあまりないが、泊まりとなると、踊り子さんの個性が見えてしまう。拒食症の人、怒ってばかりいる人などマイナス感情が溢れていることもあり、私はつい、心を閉じてしまう。なので10日間、自分の心をしっかり保つことを考えるのだが、なかなか難しく、意味もなく散歩に出かける。自分のマイナス感情を人に移さないように。
 でも今は後悔している。もっと人と話せばよかった、と。好きな劇場の一つだったのだから。
 

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