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手紙を 君へ

別に理由なんかない
不意に思ったんだ
真っ直ぐに ただ真っ直ぐに
手紙を書こう 君に
手紙を
そう思った
  元気ですか
  ギター弾いてますか
  今も唄ってますか
そんな、
ありきたりすぎる言葉の前で立ち止まる
君と話したくて
君に手紙を書きたくて
立ち止まる
筆を持つ手が震えて
うまく先へ進めないよ
一行書いては千切り、
千切ってはまた同じ一行を書き出し、
気づけば床は便箋の海
いつのまにか
窓辺に置きっぱなしにしたサボテンの
影が長く手元まで伸び
夕闇が忍び込む、開けた窓の隙間から
  元気ですか
  ギター弾いてますか
  今も唄ってますか
もう一度書いてみる
何度でも書いてみる
書いてみる けど
違うんだ
そんなんじゃない
そんなんじゃなくて

書き散らした 投げ散らした便箋の海の只中に
浮かんで ぷかり ぷぅかり
灯りをつけ忘れた部屋
地平は何処にも見えなくて
途方に暮れる
途方に暮れて、
それでも
手紙を書きたいんだ、君へ

君はもうそこに いないかもしれない
書いて出してみたって 届かないだけの
手紙になるのかもしれない
そもそも一通さえ結局
書き終えることができないかもしれない
それでも
手紙を書くよ、君に
 君に書きたいんだ 僕が君に
  そこに在ますか
  そこに在ますか
  僕はここに在るよ
  今日もここに 在る
そうさ、
書き続けるよ、君に
いつでも どんなときも
ここから書き続けるよ、君に
真っ白な便箋に 群青色のインクで
僕は君に
  そこに在ますか
  君は在ますか
  僕は

  ここに在るよ

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にのみやさをり
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