見出し画像

五百字 97.、98.

97.

 削除




98.
 「ぶーんぶーん」。飛行機の真似事である。私が仰向
けになり両手両足でもって娘の身体を支える遊び。最近
の娘のお気に入りの一つでもある。
 「ぶーんぶーん、あ、向こうにトトロが見えまーす」
「ぶーんぶーん、あっちには夕日が見えまーす」「ぶー
んぶーん、もうそろそろ着陸でぇーす」。もう十四キロ
近い娘とそうやって遊ぶのは結構しんどい。でも一度で
は満足してくれない、二度三度繰り返すのだがそのうち
に私の方から逃げ出してしまう。「あとはパパにやって
もらってぇ!」。
 でもその直後に思うのだ。このぶーんぶーんを二人で
楽しめるのはあとどのくらいの間だろう。あと千回?あ
と百回?あと五十回?それを思うと急に私の心はざわめ
く。もっともっと娘と遊んでいたいのに。
 勝手なものである。やればやったでもう終わりと自分
から言い出すくせに、いざやめると時が気になってしょ
うがない。娘がぶーんぶーんを卒業してしまう時が。き
っとそれは或る日突然にやってくるのだ。そう思うと娘
に言ってやりたくなる。そんなに生き急がなくたってい
い、もっとゆっくりでも人生逃げやしないよ、と。

よかったらサポートお願いいたします。いただいたサポートは、写真家および言葉紡ぎ屋としての活動費あるいは私の一息つくための珈琲代として使わせていただきます・・・!