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散文詩集

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2024年5月の記事一覧

いつか咲く花へ

波がよせてまた返すように 返してはまた寄せるように 去りゆく人と 巡り合う人と そうして織り成されるこの世に 永久に続くものなど何処にもなく ひとつが終り ひとつが始まり そうして繰り返される 今日も明日も 私たちがここからいなくなったら その後この場所に 何が残るだろう 私たちがこの場所に背を向け それぞれの道を歩き始めた時 この場所は どんなふうに朽ちてゆくだろう 朽ち果てゆく中でそれでも ひとつくらい花は 咲くだろうか できるなら そんな日が来るなどと一片も思い煩

石ころの呟き

石蹴りはもう飽きたの 次は影踏み鬼 そうして散り散りになる 子供のはしゃぎ声もやがて遠のき、 小石はそのまんま 置いてゆかれて 斜めに射す冬の日差しが 小さい影を描く 冷え切った路上に まるでこの 石ころみたいだよ アスファルトの上 いつまでもどこまでも蹲って 気付いたら凍えてる 指先も 唇も 髪の先までも こんなに …何 言ってんの、ばかみたい そんなこと言うくらいなら さっさと自分で転がればいいじゃない 体を温めたいなら 自分で転がってみればいいじゃない あたた

手紙を 君へ

別に理由なんかない 不意に思ったんだ 真っ直ぐに ただ真っ直ぐに 手紙を書こう 君に 手紙を そう思った   元気ですか   ギター弾いてますか   今も唄ってますか そんな、 ありきたりすぎる言葉の前で立ち止まる 君と話したくて 君に手紙を書きたくて 立ち止まる 筆を持つ手が震えて うまく先へ進めないよ 一行書いては千切り、 千切ってはまた同じ一行を書き出し、 気づけば床は便箋の海 いつのまにか 窓辺に置きっぱなしにしたサボテンの 影が長く手元まで伸び 夕闇が忍び込む、開け