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約束の記憶 〜小説〜 2

この物語はフィクションです。
つづきです。

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翌朝始業時間になっても、梶川さんは出社してこなかった。
「まだ寝てるんじゃない?電話して」
梶川さんと同期の橋本さんに指示されて、電話をかけるが、応答なし。

「鬼電!鬼電!」
鬼電とは充電が切れるまで、かけまくること。

1時間かけても2時間かけてもでない。

「寝坊しててもいつもなら電話はでるのに、こりゃ飛んだな」と橋本さん。
飛ぶとは突然仕事を辞めてること。
「梶川さんに限って飛ぶなんてないですよ。寝ているだけでしょう、きっと」
何事もなかったことのように、遅刻しても颯爽と現れる梶川さんを何度もみてきたので、今回もただの遅刻か、具合が悪いだけだと思っていた。

しかし、その翌日もその翌日も彼は来なかった。

独身の梶川さんの家は、荒らされた様子もなく、おそらく寝ていたであろうと思われる状態でいなくなっていた。

「女の家にでも入り浸ってるんじゃない」
とも考えられたけど、それにしても連絡がとれなかった。

「やつも、とうとう浦島ったか」
笑いながら言う社長の言葉に、ドキリとした。
ニュースで聞いているだけで、他所ごとのように思っていた事件が、まさか身近で起きてしまうとは。
まだ確定したわけではないけれども‥。

失踪した人たちは、一体どこにいったんだろう。

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2025年に自殺防止法が施行され、日本では自死できなくなった。
どういうからくりなのか、自ら命を絶とうとしても、できなくなっているらしい。
試みようとすると、なぜか助け出されてしまい、そのあと死ぬことよりも恐ろしい罰が与えられるらしい。

都市伝説的な話ではあるが、数年前に流行したウイルスのワクチンの中に、仕掛けがあるのではないかと噂されていた。

「そういえば梶川さん、最近変な夢をみるっていってたけどなんか関係あるのかな」
変な夢のせいで熟睡できないと、ぼやいていたのを思い出した。

つづく




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