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約束の記憶 第三章 7話

前回は更新できず、本日は遅れて申し訳ありません(>人<;)

この物語はフィクションです。

ここまでのお話はマガジンからどうぞ↓
https://note.com/saorin11/m/me6fc5f2a8b10


病院内ではワクチンを打った人と打たない人で別れたが、打たなかった人は感染防止のためという名目で雑用に回され、結局打つことにしたり、辞めていったりした。

恵は強い風当たりを覚悟していたが、不思議なことに何もなく、以前より周りが優しくなっているようにさえ感じた。

「夢だからかしら」

夢の中で夢と思えるのは変な話だけど、ここでの出来事が現実を変えるとも思わなかった。
ただ、違う選択をしたらどうなっていくのかだけ知りたかった。

後輩看護師の双葉が亡くなりショックで辞めた人や、ウイルスのせいなのかワクチンのせいなのかわからないけど、体調不良のまま職場復帰できなくなった人。
毎日のように院内のスタッフがいなくなっていき、まさに戦場だった。

「このあとはどうなったんだっけ」

そこまでの記憶はあるけど、自分が辞めるまでの記憶がはっきりしない。
今回は双葉がワクチン打っていないし、状況が違うからここから変わっていくのか。
なぜ記憶が曖昧なのかもわからないけど、思い出そうとすると頭痛がする。

「有沢さーん、ご主人がいらしてますよー」

病棟から戻ってきたら、ナースステーションのカウンターに、大きな袋と花束を持って笑顔で手を振る夫がいた。

「どうしたの?」

「どうしたのじゃないだろ。ずっと家に帰ってこないし、ちゃんと休めてるか?着替えと差し入れ持ってきたから、みんなで食べて。あとお花も」



無類の花好きな私に何かあるといつも花束を買ってきてくれる。

「ありがとう。人がいなくて帰れなかったの。心配させてごめんなさいね」

荷物を差し出し、心配そうな顔をして。

「早く帰ってこいよ。心配で眠れなくなってしまうよ」

と言って帰っていった。

「有沢さんのご主人、イケメンで優しいし、将来有望だし。いうことないですね。うらやましい」

「たしかに優しいわね」

そう、誰からも羨まれる。どうして私を選んだのか未だに不思議なぐらい。いい縁談はいくらでもあっただろうに。
夫の両親から結婚を反対されて、親と縁を切ってでも結婚するとまで言って、結局両親が折れたという。
そこまで愛されているのか。
実感はないけど‥。

「いたたっ」

夫のことを考えると頭痛がしてきた。
思い出してはいけないことがあるんだろうか。

つづく
(次回は6/19にUPします)

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