マガジンのカバー画像

💭どこかの街の、架空の思い出たち💭

18
短編小説や詩などを載せています。
運営しているクリエイター

2020年9月の記事一覧

『乾杯のレモン水』

 わたしの母はレモン水が好きなひとだった。キッチンで丁寧にレモンを切り、透き通った水のなかにそっとレモンを添える母の白い指を、いまでもときどき思い出す。レモン水を優雅に飲む母の姿はとても美しくみえて、わたしの憧れだった。  そんな母をみているうちに、わたしも飲んでみたいと、必然のようにそう思うようになった。でも、まだわたしには似合わないと冷静に考えている自分もいた。もっときちんと年を重ねて、きちんと大人になったら飲んでみよう。幼心にそう決めていた。  だから、そのときがく