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ちいさな童話屋さん

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童話を少しずつ載せています。
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『きみがくれた名前』

とある雨あがりの翌日のこと。 とおるくんが公園をお散歩していると、一匹のスズメくんが広場の真ん中に座っていました。なにやらちいさな木の葉の上にのって、うつらうつらしています。 「あ、スズメさんだっ」 とおるくんはゆっくりと近づき、スズメくんの前にしゃがみました。 「お昼寝してるのかな……?」 とおるくんがそうつぶやくと、なんと、スズメくんがチラッとこちらを見上げました。 「もしかして、ぼくのことば、わかるの?」 びっくりするとおるくんに、スズメくんはこくん、とちい

短編小説『チョコレートと赤い家』

今日は遠回りして帰ろう。高校生のとき、そんな気分になる日がときどきあった。理由は特にないけれど、ただなんとなく、時間を無駄にしたくなることがたまにあったのだ。 だからその日も授業を終え学校を出ると、いつもは右へ曲がる道に背を向けて、ゆっくりと歩き出した。 途中足元に転がっているちいさな石を蹴りながら、「小学生のときはよく友だちとこうして遊んでたな」と思い出に浸ることも楽しみのひとつだった。一種の現実逃避なのかもしれないけれど、構わずにゆっくりと道なりを進んでいく。 それか

宙からのおくりもの

✽あらすじ✽ お母さんのスズランと一緒に静かに暮らしていた、ハリネズミのライラック。ある夜、宇宙でとある“お仕事”をしているという、ちいさな妖精さんが空から落っこちてきました。お迎えがくるまでのあいだ、ライラックは宇宙であった楽しいお話を聞かせてもらいます。そして夜が明けたころ、妖精さんを探しにきたものはなんと……? ◇◆◇ とある色とりどりの花が咲きほこる、小さな村。そこに、小さな小さなハリネズミの親子が暮らしています。お母さんの名前はスズラン、子どもの名前はライラック