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残りカス


すごいものは教えたくなるし、美しいものは見せたくなる。

最初はそんな小さな想いだけだった。

私が写真を始めたきっかけはライブハウスだった。

ライブハウスは当時の私にとって異世界そのものだった。

フライヤーやバックステージパスが張り巡らされた受付スペース、

重い扉を開けると真っ暗で、スモークがたかれてひんやりとした空気に包まれていた。

その異世界感は私の今までの経験とのギャップもあったのだと思う。

実を言うと私はクラシックの畑の人だったので、ライブハウスと言う箱の中身なんて見たこともなければ想像したこともなかった。

初めて見に行ったライブは関東の中でも田舎で、キャパシティも300人くらいの小さめの箱でその日のお客さんは20人いたかいなかったかだった。

今でもよく覚えている。

始まるまでのあの無の時間。

これほどの手持ち無沙汰感はこの先数年はないだろうと思うほどの手持ち無沙汰感だった。

なんならこの日友達に誘われて2人で行っていたのにあの無の時間がとてつもなく長かった。

しかもお目当のバンドはなんと交通事故で欠場(笑)
命に別状はないみたいで良かったですが。

初めてのライブにしては色々と思い出深い一日となったわけです。

しかし私が写真を始めるきっかけになったライブはここじゃなかった。

これを機に私はバンドというもの、ライブハウスという空間、全身が音と波に包まれるような感覚、空間の境目、バンドマンという人間に興味を持った。

今となっては客観的に物事を見るようになって、バンドマンも舞台人も私の中では同じようなくくりになっていると言っても過言ではない。

なぜ今その話かというと、私はのちに舞台人へ強烈な興味を持ち同じようにその世界へのめり込むのだから本当に私という人間は何度ざるにかけて液体を捨てても流れない何かが残り続けるんだなあとしみじみ思った。

これが駆逐されない私の”私”の部分なんだろうか。

きっと舞台人についてはまた書いてしまうと思う。


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