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こぼれ話〜飲食店トンデモバイト〜

その時は気付かなかったけど、後から冷静に考えると「あれって、おかしかったよな」とか「一歩間違えたら、大変なことになってたよな」と思うことが、人生にはあります。


それについて考えるとき、私はいつも、学生の頃バイトしてた喫茶店を思い出すのです。


15年以上も前のことです。
その店は、京都の中心地にありました。


川沿い、京都一の歓楽街、と書けばピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。



ザルの目のような細かい路地に、居酒屋に雀荘、スナックにバー、キャバクラからホストクラブまで、様々なお店が集まっていました。

その中にあった私のバイト先は、昭和の雰囲気を残した喫茶店で、家族経営のアットホームな雰囲気。
看板メニューは、関西ではお馴染みの厚焼き卵のサンドイッチで、テレビや雑誌で紹介されることもありました。

※画像はイメージです



都会には色んな人がいる


私はそこでホールの仕事をしていたのですが、お客さんの大半が水商売の人だったり、何を仕事にしてるのかわからない感じの人が多くて、今にしてみれば、すごい所で働いてたなと思います。

キャバクラや風俗店の面接に使われるので、スーツの男の人と若い女の子が神妙な面持ちで話し込んで、たまに女の子が泣いたりしていたし、


謎の黒ずくめの女の人たちが、
毎週のように集会を開いていたし、


修行僧のような白装束の人が、紅茶に大量のミルクを入れて、店のママさんのひんしゅくを買ったりしていました。


その濃い人間模様を、今なら話のネタにしようと観察したでしょうが、田舎から出てきたばかりの私は「都会にはいろんな人がいるなぁ〜」くらいにしか思ってなかったのが、我ながら図太いというか、笑ってしまうところです。


出前先はワンダーランド


その店は出前もしていたので、料理を届けるのもバイトの仕事でした。
(自転車で運んでいたから、今思えばウーバーイーツの先駆者です。)


その出前先がまた様々で、舞妓さんが来るような高級スナックからお洒落なバー、カジュアルな居酒屋、キャバクラにSMクラブまで、いろんな店に出前に行きました。


私は当時から全く色気がなかったので、夜の街をうろちょろしても、その界隈からスカウトされる事がなかったのは不幸中の幸い(?)でした。


多分、今後どう転んでもSMクラブを訪れることはないでしょうから(ないと思いたい)、女王様を一目見れてよかったな、とは思っています。


そして、もう一つ、忘れられない出前先があります。


謎の事務所


そこは店のすぐ近くの雑居ビルの2階で、お店の人たちはそこをアルファベット3文字で呼んでいました。

とても狭い事務所に、ダブルのスーツを着たおじさんがいて、何をしているのかわからないような場所でした。事務所の看板も、案内も何もありません。

あまり覚えていないのですが、そのおじさんはパンチパーマだったような。とにかくいかつかったのです。そして、見た目はいかついけど、態度は割と普通でした。




まさか、、と思いました。
まさかね、と。




店の人も特に、あの人には気をつけなさいとか言わなかったし、当時の私は、自分の生活圏内にそんな人達が現れるなんて夢にも思ってなかったので。

だから、またこう思うだけでした。
「いろんな人がいるなぁ」と。



そこに何度も出前を届け、その度にVシネマから飛び出してきたようないかついおじさんと顔を合わせました。



知らぬが仏?




私は大学卒業までそのバイトを続けました。



卒業後に、バイト仲間に会う機会がありました。ちなみに、この店は一日に一人しかバイトが入らないので、仲間といっても一緒に働いてはいないのですが。 


久しぶりで思い出話に花が咲きました。
そして、そのバイト仲間がためらいながら、
でも興奮気味に言ったのです。





「あの雑居ビルのとこってさ、、組事務所だったよね?」




私たちは見つめ合いました。




その真相は今となっては、確かめようもありませんし、私たちの勘違いかもしれません。
けれど、時が経つにつれて、変なバイトだったな、という確信は深まっていきました。  




ちなみに、その場所を店の人たちが何と呼んでいたのか、思い出そうとしても思い出せないのです。
でも、アルファベット3文字とはいっても、絶対に「YKZ」ではなかったことだけは覚えています。


《教訓》
おかしな事というのは、案外その渦中
にいると気づかないから、気をつけよう。

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