見出し画像

話のネタに、柿の種

例えば、コーラが偶然から生まれた発明というのはそこそこ有名な話だと思う。
とある薬剤師が薬として作ったものが、世界中で愛される飲料になった。


他にも、今や料理に欠かせない電子レンジは、軍事用レーダー研究の副産物だったとか、ドーナツの穴は偶然できたものだとか。そういう逸話は枚挙にいとまがない。

世界には偶然や失敗から生まれた素晴らしい発明が沢山ある。けれど、せんべい界の世紀の大発明も偶然から生まれたものだとは、知らなかった。




柿の種だ。


小さな三日月形のそれは、お茶請けにもビールのお供にもなるスグレモノ。誰もが、つまむ→口に入れる、その永久運動からは抗えない。


柿の種の由来を知ったのは「お菓子風土記」という本だ。神保町の古本屋で見つけた本で、50年以上前に出版されている。

年季入ってます
所々に、前の持ち主の書き込みが



この本によると、柿の種の元祖は新潟県長岡市にある浪花屋製菓さんということだ。
こんな記述がある。

いわゆる柿の種はいろんな店で売っているから、
この登録にも業者間のすったもんだはついて
まわったが、結局は浪花屋が「元祖柿の種」で
おさまったといういわくつきだ。

そういえば、デパートの郷土菓子コーナーで、素敵なデザインの缶に入った柿の種を見たことがあった。
柿の種といえば亀田製菓さんしか知らなかった私は、いつも不思議に思っていたのだけど、やっと謎が解けた。


そして、柿の種の形については、

先代の今村与太郎さんが小判型のせんべいを
つくろうとして工程の失敗から偶然できたのがこの柿の種だった。 

とある。浪花屋製菓のHPを覗いてみると、もう少し詳しい説明があり、どうやら小判型の金形を誤って踏んでしまい、ひしゃげた形をそのまま使ったことで、あの三日月形が生まれたらしい。

ひしゃげた金型をもう使い物にならないと思わずに、
「試しにこれで焼いてみるか〜!」
という発想がすごい。私なら、踏んづけたことを隠蔽いんぺいするために、金型を捨てたかもしれない。(←おい)


そんな開発者の発想の転換&ポジティブシンキングによって生まれた柿の種。



そして、柿の種から派生したのが柿ピー。


柿ピー。正式名称(と言っていいのかわからないが)柿の種とピーナッツ。柿の種単体より柿ピーの方好きという方が多いかもしれない。私もそうです。


柿の種のエッジの効いた風味を、パターピーナッツのほの甘さが受け止めてくれる。

村上春樹は自身のエッセイで、柿ピーを漫才のボケとツッコミに例えていた。切れ味の良いツッコミの柿の種と、のらりくらりと交わすボケのピーナッツ。
まさにその通りだと思う。やはり天才。
(村上氏も、まさかそこを褒められるとは思ってないだろう。)


個人的に、一番柿ピーのイメージに近いコンビはフットボールアワーだと思っている。

後藤さんのシュッとした感じと、岩尾さんのすっとぼけた感じ。二人のシルエットも、雰囲気も柿ピーにぴったり。私は柿ピーを食べていると、フットの漫才が見たくなる。

(かまいたちもイイ線いってるけど、やっぱり1番はフットボールアワーだと思う)


かなりどうでもいい方向に話がズレたけれど、柿の種のおかげで、話のネタは尽きない。

尽きたとしても、柿の種がそこにあれば、きっと間を保てるはず。きっと、喋ることより、食べることに集中してしまうから。


追記

タイムリーにも、浪花屋製菓が阿部幸製菓に事業を承継することが、一昨日のニュースになっていた。浪花屋製菓はコロナ禍の煽りも受け、経営が厳しかったらしい。
残念だけど、阿部幸製菓さんには、代わりにその味を守り続けて欲しい。素敵な缶詰もなくさないで欲しいなぁ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?