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長いからこそ分かる良さ

私の母は好き嫌いがはっきりした性格だ。「興味がない」ものは殆ど関心を示さない。そんな母(と父)からある日、お土産をもらった。それが↑のお菓子。叶 匠壽庵(かのうしょうじゅあん) という店の品だ。

世界に誇る長編小説「源氏物語」の作者・紫式部が、物語の着想を得た場所が滋賀県にある石山寺と言われている。この店も石山寺にあり、紫式部にちなんだお菓子を売っている。買ってきてくれたのは羊羹。なんと母はこのお菓子を

「5mmだけ欲しい」

と言った。それならと本当に5mm測って渡した。食した彼女……→ 無反応。何かコメントないんかーい。

話は変わるが、私は源氏物語が好きだ。好きと言うより興味深い。高校生の頃、瀬戸内寂聴さんの現代語訳を読んだ位だ (大変長かったことだけ覚えている) 若かったのか、「光源氏サイテー」「男尊女卑も甚だしい」なんて感想を抱いた。登場人物三世代に渡る長編にも関わらず、良さがイマイチ分からなかった。というか

こんなに長い必要ある?

と思ってしまった。しかし大人になってみて色々調べるにつれ… あの作品はあれだけの長さが必要だったのだ、と考えるようになった。全部で54帖(ちょう)、これで完成形なのだ。若かった私には奥の深さというか、作者が本当に伝えたかったことが理解出来なかったのだろう。

源氏物語を、母に読むよう勧めてみたらどうなるか。多分彼女はこう言う。

「私は読まないわ」と。

しかし、やってみて分かる良さというのは存在する。中には「本当に無駄だった」なんてこともあるだろうが、世界的評価を受けている作品なので読んで損はないと思う。

お菓子も5mmで良いと言った母だ。気の進まない本を読むなんて難易度の上がること、きっとしないであろう。そして5mmでそのお菓子の良さが分かったのか、それもノーコメントだったため謎である。何となく想像はつくけど、

ねえ、どうだったの?

今更聞く程のことでもないが、書いていたら気になってしまった。そして彼女は話し出すと長いのだが、その良さも今のところ分からない。いつか分かる日が来るのであろうか(否、多分来ない) 仲良し母娘もいるが、一般的に母と娘は上手くいきにくいという。何か良い方法はないだろうか。そこを親子関係の難しさならず、女社会の面倒臭さを経験した紫式部に聞いてみたい。

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