見出し画像

唐揚げと串カツのあいだ

私はいま、非常に胃がもたれている。

お昼のランチに、某お蕎麦のチェーン店へいった。

安い、早い、そこそこうまい。

営業マンの聖域のようなお店。

「いらっしゃいませぇぇ!」

こ気味のいいお母さんたちの掛け声に、ついついよく利用してしまう。

一人です、と指を一本たてると、

「はあい、こちらの席にどーぞぉ!27卓さんご来店でぇす!」

「いらっしゃいませぇぇ!」と波乗りあいさつ。

一人だったからか、厨房にいちばん近い席に通された。

こんなに近くで調理場を見るのは初めてだ。

推定年齢、平均60才。

お母さんたちのチームワークときたら、まるで女子バレーボールの試合のようだ。

「はいっ!お水おねがいしますっ!」

「15番さん、オーダーいったよっ!」

「はあい、蕎麦盛りねっ!プチのほうねっ!」

「はあい、誰かレジいけるっ!?」

「私いきますっ!」

その抜群のタイミングと動きの早さに、口が空いたままボーッとしてたら、

ひとりのお母さんがオーダーをとりにきた。

「はいっ、お客さんなんにしましょ!」

私はメニューはあまり悩まないほうなのだが、

何せメニューよりもお母さんたちに気がとられてしまい、ちょっと決めるのに時間がかかった。

早くしないと、この抜群のチームワークを崩してしまう!

男性向けの店なので、まあまあボリュームも多い。お残しはしたくない。

焦った私。
いちばん量がすくなそうなものを注文しようと

「くっ、串カツ定食で!」と言ったが
なぜか声がどもってしまった。

お母さんは私が迷っているあいだにも、
ホールの進捗状況をチラチラと確認していたが、

「はいっ!唐揚げ定食ねっ!」

と 満面の笑顔。

お母さんは、やっと次の動きに進めるうれしさか、

「い、いやっ、串カツ・・」という

私の声も聞かず、
厨房へオーダーを通してしまった。

「はいっ!唐揚げ定食ご注文いただきましたっ!」

「はいよっ!唐揚げ定食ありがとうございます!」

「はいっ、23番さんお帰りっ!」

私みたいなひよっこの

「あっ、くっ、串カツ・・」

の声なんか、軽くかきけされてしまう。


じっとメニューを見るピリカ46歳。

どう見ても写真には唐揚げが6個も乗ってある。
私は体格はいいが、いっぺんに入らないタイプだ。

まあいいか、同じ値段だし。

神様が今日は唐揚げだよ、

って言ってると思おう。

「はあい、唐揚げ定食お待たせしましたあ!」
ニコニコと別のお母さんが持ってきてくれる。

「ちょっと焦げたからさ、一個オマケね!」


じゅうじゅうと音をたてながら、

私の前に7個の唐揚げが鎮座した。


ええい、ままよ!

ここで食べなきゃ女がすたる!

私は熱さに目を白黒しながら完食し、

790円PayPayでチリーン♪とお支払してお店をでた。

レジをしてるあいだも、

「はいっ!」「はいっ!」と声掛けしながら、
お母さんたちは抜群のチームプレーでお店を切り回していた。


いやはや、私、
まだまだだわ。いろんな意味で。





ピリカグランプリの賞金に充てさせていただきます。 お気持ち、ありがとうございます!