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また、ひとり去る日に

昨日の記事の「分岐点」の彼である。

同業の代理店へいくと、昨日退職していかれた。彼へのせめてものはなむけに書いた。

退職してからの道は、それぞれだ。

まったく異業種に進む人、前職に戻る人、自分で起業する人もいる。

今回の彼のように、同業他社へうつる場合は、周囲の目は、どうしても冷たいものがある。

今まで励まし合い、情報を共有しあった戦友が、敵側にまわるのだ。

「裏切りやがって」という気持ちも多分にある。

言葉には出されなくても

まわりからの牽制と猜疑心を感じただろう。痛いくらい、ひしひしと。

最後の挨拶をした彼の目は、なにも見ていないようだった。心を完全に閉じていたようにわたしには感じられた。

「遠くへ行くわけではないので、またどこかで見かけたら声かけてください」

とはいっていたが、

(どうせ辞めてしまったら声なんてかけないでしょうけどね)

との彼の精いっぱいの皮肉が感じられた。


ひとつの組織を去る、ということは今までのコミュニティを切り捨てることでもある。

よくも悪くも、それを含めての新たなスタート。

直接の挨拶はできなかった。電話をしようかと考えたが、

それくらい彼とわたしの間柄が濃かったわけでもなく、すこし重いかな、と思ったので

メッセージを送った。

「適当な気持ちではないよ。本音でいうよ。また会おうね。」


彼からの返信は三時間後だった。

「はい。また会いましょう。僕も本音です」


それが果たされなくても、結果軽い締め言葉で終わったとしても。

そう伝えたことを

わたしは後悔はしない。





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