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星のや京都で思い出した、おふくろの味

私のおふくろの味

子どものころ、母が作る料理で好きだったもの
お好み焼き、たこ焼き、かやくご飯

ここまで読んで、気付いた人もいるかもしれない
母は大阪出身です

30年前の関東でお好み焼きやたこ焼きの全国展開のチェーン店は少なく、食べられる機会はお祭りの出店くらいだったと思う
だけど、我が家は日常的にたこ焼きが食卓に出てくる
母にリクエストをしたら二つ返事で用意をしてくれる
それくらい日常的で親しみのある味で私にとってのおふくろの味だった

かやくご飯も同じ
お茶碗に盛られて炊き立てをホクホクしながら食べるのも、おにぎりにして時間が経ってから冷めて味が染みて食べるのも、どちらも好きだった
漢字を学ぶようになって「かやく」は「火薬」だと思ってなんだか物騒な気もしていたけど、醤油が染みたごはんの色や部分的に出来る焦げが火の漢字と繋がる気がして、だから「火薬」なのかなとなんとなく思っていた

それが他の家庭では「炊き込みご飯」とか「五目ごはん」と呼ばれていると知ったのはずいぶん大きくなってからだった気がする
ただそれ以上深堀する事もなく「かやくご飯」という呼び方は私の母や祖母が勝手につけた我が家独自のものなのかな、と思っていた
(母やその母の祖母は、食べ物や持ち物に独自の呼び名をつけて愛着を持つことがよくある人だった)

かやくごはんについて他人に説明するのも億劫で、というか、そもそも炊き込みご飯について周りの人と話す機会にはめぐりあわず、かやくごはんは私の記憶の中で知らぬうちに姿を消していた

思わぬ場所での再会

かやくごはんと思わぬ再会を果たしたのは、夫と結婚記念に行った星のや京都の夕食の懐石の時だった

御飯 冬の加薬飯

お品書きを読んでいてふと目をとめたこの文字
脳内で読んでみるかやくめし
瞬間的に、母が作ったかやくご飯を食べた時の幸せな気持ちが思い出された

強肴(しいざかな)の後に出されたお椀に入っていたのは、上品だけどどこか懐かしい出汁の香りが染みたお米の炊き込みご飯だった
炊き込みご飯を「加薬」ごはんというのは京都などの関西ならではの表現だとスタッフが教えてくれた

上品なお椀に盛られた加薬飯(写真は数年前の物なので現在は変わっている可能性があります)

母や祖母の造語じゃなかったんだ

突然長い伏線が回収されたような爽快感と共に子どもの頃の食卓や母や祖母の姿が思い出されて懐かしい気持ちになった

子どもの頃の食卓、母が作ったかやくご飯おにぎり、母や祖母の姿と
上品な設えや食器でおもてなしを受けている星のや京都の食事の席
日常的で生活感たっぷりな幼い日の記憶と、非日常的で特別な自分が置かれている空間がお椀に入ったかやくご飯を通じて重なった

連鎖的に子供の頃の母とのやり取りや、大阪人の両親ならではのエピソードが思い出されて夫とそれぞれの子供の頃の話で盛り上がった

京都 嵐山の水辺の邸宅で幼い日の記憶が思い出される

旅先と自分が繋がる、旅の面白さ

ふとしたキッカケで過去の思い出や体験を思い出す事があるけれど、それが旅の途中だとより特別感がある
いつもと違う非日常的な空間でリラックスしているから、普段はおざなりにしがちな自分の感覚に目を向けられるからかもしれない
(日々の家事や仕事のタスクを育児をしていると考える隙間が無い)

旅行にでかける、その地域ならではの環境を楽しむ
自分の外側にエネルギーを使っているのに、自分の内側にある価値観に意識がむく
そんな体験が出来るから旅行って面白い
そのきっかけが旅行ならでは、地域ならではだとなお、旅先と自分の繋がりを感じたようで面白い

最後に星のや京都公式の素敵な写真をお届け


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