ゆるキャン二次創作SS「リアル・オア・ドリーム?」

【これは何?】
ゆるキャンの二次創作SSを勢いだけで書いてみました。pixivにも投稿したものを、折角なのでこっちでも投稿してます。文章中の【 】はメッセージのやり取り部分を表しています。

「リンちゃん、朝だよー。おーい、リンちゃーん」

上の方から誰かの声が聞こえた。
その声に反応して、私は目を開けた。
ぼんやりとした視界ではあるが、ピンク髪の元気な奴の顔が目に映った。
「やっと起きたー。おはよう、リンちゃん」
なでしこはフワッとした笑顔で挨拶をした。

「おはよ......」
私はまだ意識がはっきりと目覚めていないまま、上体を起こし、周りを見渡す。
見慣れた窓、机、ベット。
うん、私の部屋だ。
そして側にはなでしこ。
可愛らしいエプロンを着て私を見ている。
「...っておい。なんで、なでしこがここに居る」
起床直後にツッコミを入れる。
なでしこは小さく首を傾げる。

「私とリンちゃん、今は一緒に暮らしてるよ?」
「は?」

当たり前のように答えるなでしこに、言葉の意味が分からない私。
起きた直後で回転していない頭をフル活動させようとする。
......確かにそうだったかもしれない。
何がどうなってこうなったのかは忘れたけど、確かに一緒に暮らしていた......と思う。
「今日はソロキャンプに行くんだよね?早く支度しないと遅くなっちゃうよー」
なでしこはそう言うと部屋を出る。
「キャンプ......あー、そうだった」
確かに今日はキャンプに行く日だった。
窓から外を覗くと、まだ太陽は出ていない薄暗い景色が見える。
「とりあえず、顔でも洗お......」
私は起き上がり、ぼんやりとした意識のまま洗面所へと向かった。

その後、玄関で靴を履く私を、なでしこが後ろから残念そうに見つめている。
「むー、私もリンちゃんと一緒に行きたかったのになー」
「バイトなんでしょ?仕方ないって」
「そうだけど......」
なでしこはバイトで、今日は私1人でキャンプをすることになったんだ。
「写真送ってあげるから、バイト頑張りなよ」
「はーい」
靴を履き終えて立ち上がり、振り向いてなでしこの方を見る。
「じゃあ、行ってくるね」
「うん、行ってらっしゃい!」
外に出てバイクに跨り、走らせる。
ミラーで後ろを見ると、まだなでしこは大きく手を振っていた。
その仕草に少し安心感を覚え、私はキャンプ場に向けて出発した

——————————
昼過ぎにキャンプ場に到着して、いつものようにテントを張り、いつものように椅子に座り読書をする。
目の前には湖が広がり、周りでは木々が風に揺れて心地よい音を鳴らす。
まだ寒くなく、穏やかな空気が私を包んでくれる。
夕方が近づき、そろそろ日が沈む時間になった。
湖の水面に夕焼けが反射して、幻想的な風景となっている。
「そろそろご飯の準備をしなきゃな.......ん?」
椅子から立ち上がろうとした時、机に置いていた携帯が震えた。
私は携帯の画面を覗いた。
「なでしこだ」
なでしこからのメッセージが届いていた。

【リンちゃん、リンちゃん、そっちはどう?】
【いいところだよ。バイトは終わったの?】
【うん、今は家で晩ご飯の準備をしているとこー】
【へー。何を作るの?】
【これー!】
ポン、と写真が送られてきた。
うどん?いや、違うな。
【ほうとうか】
【うん!あきちゃんに作り方を教えてもらったの!】
千明か。確か前に風邪をひいたなでしこに作ってあげたんだっけ。
【美味しく作れたら、今度リンちゃんにも作ってあげるね!】
【うん、楽しみにしてる】
【楽しみにしててね!】

そこで一旦メッセージのやり取りが終わった。
私には、出来た料理を美味しそうに食べるなでしこの顔が頭に浮かんだ。
なでしこ製ほうとう、私も食べたくなってきたな。
この時、なでしこの事を考えていると、あいつの声がふと聞きたくなった。
だから、私はついメッセージを送ってしまった。

【ねえ、電話してもいい?】
いつもだったら気恥ずかしいんだけど、今日は何故か恥ずかしくなかった。
1分後にメッセージが返ってくる。
【電話?何かあったの?】
【ううん、特に用事はないんだけど。電話したくなって】
【もちろんいいよー!】
私はなでしこがOKしてくれたことにホッとして、通話ボタンを押す。

数秒後、
「もしもし、リンちゃん?」
「もしもし、なでしこ。ごめんね、電話しちゃって」
「ううん、全然いいよ!えへへー、リンちゃんから電話してくれるなんて嬉しいなー」
「なにそれ」
毎日のように聞く明るく元気な声に、私はどこか居心地の良さを覚える。
「ねえリンちゃん!今日バイト行く時にね、あおいちゃんと会ってね!」
「へえ、そうなんだ」
「うん!それで、あお......ちゃ...........って.......ら......」
「?」
急になでしこの声が遠くなっていく。
「なでしこ?」
通話は続いているのにもう声が聞こえなくなった。
それだけじゃなく、周りの視界もぼんやりとして.........

「......ン?......リ........い」
誰か、別の声が聞こえてきた。

——————————
「おーい、リーン。起きなよー、リンー」
私はうつ伏せの状態から顔を上げると、短い黒髪が目の前にあった。
「斉藤?」
「うん、斉藤さんだよー。おはよー、リン」
斉藤が苦笑いをした。
「あれ?私、寝ちゃってた?」
周りを見渡す。
オレンジに染まった本棚が目に入り、窓から夕焼けを照らす太陽の光が差し込んでいる。
「ぐっすりだったよー。誰も来てなくてよかったね」
「あー.......」
意識が覚醒していく。
ストーブの温もりに負けて居眠りしてしまったのか。
「リンってば、ずっと気持ちよさそうに寝てたよ」
「見てたのか」
「うん。眺めてると面白かったよー。写真見る?」
「消せ」
いつもの調子で喋る斉藤。そしていつもの調子でツッコミを入れる私。
「どんな夢見てたの?」
斉藤が尋ねる。私は少し思い出そうとしたけど、
「うーん......忘れた」
そう、忘れた。
「そっかー。私はてっきり、なでしこちゃんの夢を見てたんだと思ったけどな」
「なでしこの?」
「リン、寝言でなでしこちゃんの名前呼んでたもん」
「マジで?」
私は一瞬固まる。
え、寝言言ってたの?恥ずかしいんだけど。
「さあ、どうだろうねー」
「どっちだよ」
「ふふふー」
斉藤は悪戯っ子のように笑う。
これ以上聞いてもおそらく答えは出ないだろう。
私はため息をつく。

「それじゃ、私はそろそろ帰るね」
斉藤が図書室の扉を開ける。
「リンも目が覚めたら帰りなよー?」
「ういー」
私は適当に反応する。
そして斉藤が図書室を出ようとした瞬間、
「あ、そうそう。リンの寝顔写真は野クルのみんなに送ったからねー」
「は!?」
「冗談だよー。それじゃねー」
そう言って斉藤は図書室を後にした。
驚きで立ち上がってしまった私は一旦深呼吸をする。
あいつの冗談のおかげで目が覚めたし、私も帰る準備をしないと。
.......冗談、だよな?

———————
その夜、晩ご飯を食べ終えた私は部屋に戻る。
明日の準備も終えて寝るだけなんだけど、夕方に居眠りしてしまったからなのか、まだ眠気はやってこない。
「居眠りか」
私は、あの時に見た夢を思い出そうとする。
けど、あまり詳しいことは思い出せない。
キャンプに行ってたかもしれないけど。
なでしこは居たような......居なかったような.......
「まあ、所詮は夢だしな」
別にどうでもいいことだろうし、あまり気にしないことにした。

と、その時、机に置いていた携帯が震えた。
私は携帯の画面を覗く。
「なでしこだ」
なでしこからのメッセージが届いていた。
【リンちゃん!私、こういうの作っちゃった!】
メッセージの数秒後に写真が送られてきた。
「これは......うどん?いや、違うか」
答えを送ってみる。
【ほうとう?】
【うん、正解!あきちゃんに作り方を教えてもらったの!】
千明か。確か前に風邪をひいたなでしこに作ってあげたんだっけ。

「.......あれ?」
確か似たようなやり取りをやったような.......
「気のせいか」
気のせいだな、うん。

【美味しく作れたから、今度リンちゃんにも作ってあげるね!】
【うん、楽しみにしてる】
【楽しみにしててね!】

「なでしこが出来たほうとうを美味しそうに食べている姿は簡単に想像つくな......ん?」
やっぱり、どこかデジャヴを感じる。
「どこだったっけ?」
少し考えても思い出せない。
そして、そのまま無意識に、

【ねえ、なでしこ。電話していい?】
送信。

......送信?
「って、何を送ってんだ私は!」
自分のとった行動に戸惑い、心を落ち着かせようとする。
何故送ってしまったのか、整理しよう。
ふと、なでしこの声が聞きたくなった。
整理終了。
「いやいやいや.....そう、眠れないから少し話したいだけだ。うん、そうだ。それに、斉藤の奴が本当に写真を送ってないかを確認しなきゃならんし。うん。そうだよ」
自分で自分を納得させようとする。

【電話?どうしたの?】
【特に用事はないんだけど。眠れなくて】
【そっかー。私はいつでも良いよー!】
私は通話ボタンを押す。

「もしもし、リンちゃん?」
「もしもし、なでしこ。ごめんね、こんな時間に」
「ううん、平気だよ!えへへー、リンちゃんから電話してくれるなんて嬉しいなー」
「なにそれ」
私は苦笑しつつも、なでしこの元気な声を聞いて安心する。
「そうだ!今日、野クルで集まった時に、あおいちゃんがまたホラを吹いてねー。実は.......」

なでしこが今日あったことを喋っているのを、私は聞き続けている。
夜でも元気な奴だけど、私はこの時間を心地よく感じている。
メッセージを無意識に送った時は慌てたけど、送ってよかったな。


「......へえ、そうなんだ。私もそこに行ったことは....ふわぁ」
結構時間が経ったのか、私は眠気に襲われた。
「リンちゃん、そろそろ眠くなった?」
なでしこの声も、いつも以上にフワフワになっているのが分かる。
「そういうなでしこも、眠そうだな」
「えへへー」
「今日は話相手になってくれてありがとう」
私はなでしこに感謝を述べる。
「私もリンちゃんとお話できて嬉しかったよー。また今度もやろうね!」
「気が向いたらね」
「いつでも気を向けて良いんだよー。それじゃあ。リンちゃん、おやすみー」
「うん、おやすみ。また明日ね」
ポン、と終了ボタンを押した。

私は部屋の電気を消し、ベッドに潜り込む。
そして私はさっきまでのなでしことの会話を思い出し、1人で小さく笑う。
「ありがと、なでしこ」
私は、そのまま目を閉じた。

(終わり)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?