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和音の話をする前に、もう一つだけ。調の基準となる音、階名で言うとドに当たる音を、主音(トニック)と呼ぶ。そして、トニックから始まる、1オクターブ中の12の音のうち、#やbのつかない階名で表せる7音のことを、特にダイアトニック(ダイアトニックトーン)である、という。

前頁で度数を扱った際に、「長」をつけることのできる度数があったが、これはメジャー(特に調の話において、メジャー・マイナーをそれぞれ長短という)であるというより、ナチュラルである、ダイアトニックである、という意味合いが強い。つまり、長がつくならば主音に対してダイアトニックであり、短・増・減がつく場合にはそうではない、という使い分けが一応、可能になっている(そうでない場合は禅問答がはじまる)。


さて、和音の話になる。まず和音とは、同時に、あるいは楽曲上の一単位以上の時間内に発音される、3ないし4以上の音の、特定の組み合わせである。ただしこれは、しばしば省略、あるいは強調された結果、2音や1音となることも珍しくない。一方でその結果として、機能が失われることは少ない。

現代のポピュラー音楽において、音階に属する音を出力するときに、それがあらゆる和音と一切の関係がない、と言い切ることは難しくなっている。それは、ある楽曲(のある部分――場合によっては)を、機能和声的アプローチに基づいて解析することが基本的に可能である、ということを意味している。

本稿のもともとの目的である、楽曲の出力において、その分析・解析は前提のひとつであると言える。


調に対してダイアトニックな7つの音を根音(1度。特に和音の場合、これをルートと呼ぶ)に持ち、同じくダイアトニックな音から3度と5度を選んで加えた、3つの音からなる7つの和音を、ダイアトニック・コードと呼ぶ。

例えば、ドを根音とし、その3度(ミ)と5度(ソ)を加えた、ドミソの和音をⅠの和音と呼ぶ。これはさらにトニック・コードとも呼ばれ、強い安定性と終止感をもつ。楽曲の初めに置くにも、終わりに置く場合にも最も基本的な和音であり、起立と着席の和音であり、は・か・た・の・ときて「しお」の和音であり、どったんばったんお・お・さ・わ・「ぎ」の和音である(あーつーまーれと「もーだちー」であり、よーおーこーそじゃ「っぱりっぱーく」であり、つまり、枚挙に暇がないほどありふれたものだ)。

機能的に最も判別し易く、主音=階名ドが音名としては何にあたるのかを見極めることが、楽曲を出力する際の最初の目標になることが多い。

レを根音にもち、その短3度(ファ)と5度(ラ)を加えた、レファラの和音をⅡという。長3度でないのは、レを1度とした場合の長3度はファ#であり、ダイアトニックから外れるためだ。同様に、ミを根音とし、その短3度(ソ)と5度(シ)を加えた、ミソシからなる和音をⅢという。ミに対しての長3度がソ#であることから、これも同様である。

順番が前後するようだが、先にⅤの和音について説明する。お察しの通り、ソを根音とし、長3度(シ)と5度(レ)からなる。これを特にドミナント・コードと呼び、不安定感を持つが、これは次にⅠ(トニック)へと移動する強い動力となり、この移動を特にドミナント・モーションと呼ぶ。また、不安定な音から、安定した音へ移動することを、解決する、と呼ぶ。

実を言うと、3音からなる単純な和音は完全5度下、及び完全4度上への解決を促す効果を――強弱の差こそあれ――基本的に有している。完全5度下とはつまりⅤ→Ⅰ(ソから数えてファ、ミ、レ、ド)であるが、完全4度上も同じだ。つまりソから数えてラ、シ、ドとなる。

では、これをⅡから数えると?レ、ド、シ、ラ、ソ、あるいはレ、ミ、ファ、ソとなり、Ⅴへの動力を得られるわけだ。つまりⅡ→Ⅴ→Ⅰへの連続したドミナントモーションを行うことができ、これは非常に有用性が高いため、特にツー・ファイヴあるいはツー・ファイヴ・ワンの進行と呼ばれる。先の例であれば、「お・お」までがⅡ、「さ・わ」はⅤで、「ぎ」でⅠへと移動する(「あーつー」までがⅡ、「まーれと」までⅤ、「もーだちー」がⅠ。ジャパリパークはもうよかろう)。


ダイアトニック・コードの話に戻る。ファを根音として長3(ラ)・5(ド)を足したⅣの和音は、特にサブドミナント・コードと呼ばれる。サブドミナントは浮遊感を持ち、トニックとドミナントの中間的な機能を担うことができるほか、楽曲が展開した印象を与えることなどができる。

Ⅵはラを根音とし、短3(ド)、5(ミ)で構成される。これは実は短調(マイナーキー)におけるトニックとなり、その場合トニック・マイナーという呼ばれ方までするのだが、調の長短についてまだ記していないこともあり、詳細については今後に譲ることにさせていただきたい。

Ⅶはシを根音とし、短3(レ)、短5(ファ)を重ねる、ダイアトニック・コードの中でもっとも不安定な和音である。不安定であるということは、強く安定を求める動力がある、ということだ(女性と同じく――あるいは、人生と)。特に、5度下のⅢへの解決がしやすい。


さて、7つのダイアトニック・コードの構成についてはここまで。途中で少し触れたドミナント・モーションだが、ダイアトニック・コードだけで組み合わせてみるとⅠ→Ⅳ→Ⅶ→Ⅲ→Ⅵ→Ⅱ→Ⅴ→Ⅰとなる。楽器があれば、鳴らしてみてもらうと理解しやすいかもしれない。あなた自身の耳によって機能を聴き分けるためには、ドミナントに対する理解と慣れが重要になる。なにしろ、ポピュラーミュージックでそれ耳にする機会は、ものすごく多い。

ものすごく。

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