楽聖死すべし

ここはひとまず安全だ。《爆破》は荒い息をついて座り込んだ。あいつは化物だ。《狙撃人》《狙撃帯》は殺られたし、《流飛火》も時間の問題だろう。《隠密》の姿が見えないが、それはいい。隠れていようが、死んでいようが、俺にはわからない。

こっちに走ってくる足音。瞬間、身を竦ませたが、あいつは無様に走ったりはしない。転がり込んできたのは、《手首》の若造だった。




「あんたか、《バッハ》」若造は喘ぎながら言った。「他の皆は?《シューマン》《シューベルト》が殺られるのは見たよ。《ルートヴィヒ》は?」

「耳のやられた奴に、どうやって撤退を伝える?」

溜息。「頼みの綱は、《ハイドン》だけか」それが、《リスト》の最期の言葉になった。次の瞬間、若造は臓物をぶち撒けて息絶えていた。いつの間に来ていたのか。

ちくしょう。《天神》となんて、どう戦ったらいいのだ?それに応えるように、《アマデウス》は言った。


「俺の尻をなめろ」


《つづく》

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