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共生工房猿蟹川「黒砂糖」と合わせるブランデー

種子島の黒砂糖。
この黒砂糖は、今までのどんな黒砂糖よりも複雑で深みのある味わいでした。

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最初に驚かされたのは、半生の黒砂糖だということ・・・。触っただけでも柔らかく、ねっとりと弾力がある食感が斬新で、勝手に「半生黒砂糖」と名前を付けていました。そして味わい・・。素朴でいて、複雑・・・。洗練されている印象はないのだが、豊かな風味に温かな甘さ、生産者の揺るぎないこだわりと頑固さを感じさせる味わいに、驚きを隠せませんでした。無添加なのはもちろん、こだわりを感じさせるもう一つの要素として、忘れてはならないのが「賞味期限」の短さです。黒砂糖だというのに、驚く事に賞味期限はたったの「半年」しかないのです。なぜなら、本来砂糖は最も変質しにくい食品で、消味期限表示の義務も法的規制もない食材だからです。しかし、この黒砂糖を食べれば、こだわり抜いた末の結果で、本来の味わいを楽しめる「6か月間」という短い時間になってしまったのだと・・・。本物の味を知ってもらいたいという情熱が、この異例とも言える短い賞味期限にさせたのだという事に気がつくのに時間はかかりませんでした。サトウキビの蜜の旨みと複雑さを極限まで凝縮した味わいは、他のどんな黒砂糖よりも真面目で素材の個性を最大に生かした正直な味わいです。コーヒーや紅茶はもちろん、カレーの隠し味にチョコレートを入れるように、この黒砂糖を入れても面白いはず・・・。

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これに合わせる飲み物はなんだろう?
初めに思いついたのはラム酒でした。ラム酒はサトウキビから作る蒸留酒なので、サトウキビ原料の黒砂糖と良く合うのではないかと考えました。さっそく試してみると、美味しい!間違いない!ラム酒の強い粘りのあるアルコールの濃度と、サトウキビの甘さの濃度がマッチして、より濃厚な複雑な風味となっていました。まさに大正解の組み合わせです。
しかし、少し違和感がありました。こだわり抜いた種子島の黒砂糖の味わいを、違う国のサトウキビで出来たラム酒と共に味わうことによって、種子島という風土で育ったサトウキビの味わいが曖昧になってしまっていたのです。それでは、せっかくの個性が半減してしまいます。
種子島の風土や職人のこだわりを曖昧にさせず、それでいて協調性もありながら、お互いに引き立て合えるもの・・・。それを踏まえて思いついたのが、ラム酒のようにアルコール濃度と甘い香りが特徴的な蒲萄由来の蒸留酒「コニャック」でした。黒砂糖を思わせる複雑な甘い香りがあるコニャックは、チョコレートや甘い食べ物とが良いとされています。試してみると、やはりコニャックのトロッとしたアルコール濃度と、黒砂糖を思わせる甘い香りは絶妙のバランスです。チョコレートを食べるように黒砂糖を少しかじり、口の中で甘さと旨みが広がった所でコニャックを口に含ませる。黒砂糖の香りが特徴でもあるコニャックの香りは、「種子島の黒砂糖」によってより複雑な深みになり、黒砂糖の個性とコニャックの強い香りをお互いに引き立てます。最後の余韻の香りは、口に広がった甘さと調和しつつ、絶妙な奥行で最後まで楽しませてくれました。どんなに美味しそうな言葉を並べても、どんなに言葉で表現しようとしても、実際の味わいは味わった人にしか分かりません。だから、一度でいいから試してもらいたい。そんな幸せな気持ちにさせてくれる今回のマリアージュでした。コニャック片手に種子島の黒砂糖をかじりながら、その風土に思いを馳せてみるのもまたいいかもしれません。

今回のイチオシ

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ヘネシー・コニャック・V.S(ベリースペシャル)
Hennessy Cognac V.S.
標準市場価格:2,500円(税別)
言わずと知れた蒲萄由来のブランデー「コニャック」は、アルコール分の強い食後酒などに飲まれる蒸留酒です。初めのアタックはヘーゼルナッツ、シナモン、フレッシュな林檎を思わせる香りで、徐々に甘い黒砂糖のような複雑味と樽由来のバニラの様な奥行のある香りに変化してゆきます。上品な焼きリンゴや紅茶を思わせる香ばしく芳醇な香りと、口の中に広がる深い余韻を楽しめます。その香りは、日頃の喧騒を離れ、まったりと上質な大人の時間へと誘います。コニャックとともに、様々なことに思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

今回のブランデーに合わせた商品

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共生工房猿蟹川さんの黒砂糖は、種子島が育んだ新鮮なサトウキビを使用し、収穫後サトウキビを一本ずつ手作業で洗い、圧搾後の搾り汁に不純物が混ざらないようにしています。通常は、黒砂糖を固まらせる為に石灰を使用しますが、猿蟹川の黒砂糖には石灰を使用しておらず、完全無添加ですので、純粋なサトウキビの味を味わうことができます。

共生工房猿蟹川「黒砂糖 50g」
販売価格:140円(税込)

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熊澤 大樹 KUMAZAWA Taiki

ジョンティ・アッシュ マネージャー

経歴
1983年生まれの岩手県出身。2002年より、日本ソムリエ協会の元会長である熱田貫氏がプロデュースするフレンチレストラン「サンテミリオン」で、サービスマンとしての一歩を踏み出す。その後、マキシム・ド・パリ名古屋店を経て、東京恵比寿のレストラン「タイユヴァン・ロブション(現シャトーレストラン「ジョエル・ロブション」)」に、サービスマンとして入社。2008年に、日本ソムリエ協会の資格試験に合格し、同年よりソムリエとしての修行をはじめる。2013年より、ジョンティ・アッシュのマネージャーに就任。型にはまらない新たなサービスを目指し、料理人とワイン生産者、そしてお客様を一つに繋げる架け橋となるような独自のスタイルを確立し、ジョンティ・アッシュの魅力を最大限に引き出している。

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フレンチレストラン「ジョンティ・アッシュ」
〒108-0071 東京都港区白金台5-18-17 ゴールドフォレストビル2階
TEL:03-5447-8889
※2019年8月現在、白金台のフランス料理店「レストラン ラリューム」のシェフソムリエとして活躍中! http://www.gentil-h.com/

(2015.1.27公開)


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