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小さな願いと祈りの音

小さな祈りのサヌカイトについて

上の写真は40年前の瑠璃光寺(元79番札所金山薬師)江戸時代に札所が麓の摩尼珠院妙成就寺に移った後その奥之院として再整備された時の建物
今でも奥之院巡りの方たちが訪れます                

お遍路さん

 ちりんちりん、子供のころ私の家は四国八十八か所霊場巡りの遍路道沿いにありました。歩き遍路さんが家の前に立ち、おリンを鳴らすことが頻繁にありました。母が少額のお金か食べるものを差し上げる光景を見ながら育ったのです。ずっと記憶に残っていて、よく言われる「お接待の心」は自然に育まれていたのです。いまでも事務所が遍路道にありますので、歩き遍路さんを見かけると追いかけて何か差し上げてお話ししてしまいます。巡礼の理由など訊きませんが、若い人の場合など気持ちを感じ取って「がんばれ」と心の中で念じます。そして、自分の代わりに歩いてくれている気持ちになるので感謝しかありません。


 サヌカイトで楽器を作り始めて35年くらいたったころ、どうしてもお遍路さんにサヌカイトの音を鳴らしながら歩いてもらいたいと思うようになり、懐に入るくらい小さな楽器を作り始めました。コンサートで使っている特殊な構造を持つ楽器SOUのミニチュア版とでもいうのでしょうか。それまでも小さなSOUは作っていたのですが、楽器の音とは違う祈りに特化した音が必要になりました。歩きながら叩く(付いている小さなサヌカイト片で触るようにやさしく)と遠くからでも優しい音が聞こえてくるような。お寺で叩くと周りの空気が澄むような音です。


 小さくて余韻の長いSOUを作るのはとても困難で失敗の連続でした。10個作って納得できるのは1個。ぎりぎりまで音を追及すると割れやすくなりました。新しいドリルを作ったり、大きさを数ミリ単位で買えたり10年間試行錯誤(結局は石の質と丁寧さ)の結果、今は5割ほどの成功率に。出来上がった作品は値段は高いですが(一つのセットで3万3千円)必ず気に入ってくださる方がいて、すぐに買われていきました。でもコストが高すぎてまだまだこれからです。たくさん作らなければと思うのですが、ほかにも作りたい楽器がたくさんあって時間が取れない。悩みがありながらも少しづつ改善します。


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