内容規制と内容中立規制の区別


今回は、憲法の表現の自由の分野から、内容規制と内容中立規制の区別についてのポイントを簡単に論じたいと思います。

■定義

まずごくごく一般的な話から入りますと、内容規制とは当該表現のメッセージの伝達効果に着目する規制のことを言います。そして、内容中立規制とはそれに着目しない規制のことを言います。

そして、内容規制は厳格審査基準、内容中立規制は中間審査基準で判断するという見解が一般的です。

■ポイント①

 私が上記のように定義つけたのはある意図に基づいています。それは内容中立規制に当たるかどうかは、「内容規制ではない」ことから導いた方がよいということです。つまり、内容中立規制は「時間・場所・方法に着目した規制である」と言われることがありますが、「時間・場所・方法」に着目した規制であるか、という観点で内容中立規制かどうかを判断しようとすると、内容規制・内容中立規制の区別を間違えることがあるからです。

例えば、「日曜日の午後は公道・公園で政治的な内容のビラを配布してはいけない」という法律を作るとします。

この場合、「時間・場所・方法」に着目した規制であるかという観点で内容中立規制を判断しようとすると、上記立法は内容中立規制であると考えてしまう可能性があります。

しかし、このような法律は「政治的かどうか」という内容に着目した規制ですから、これは明らかに内容規制です。

なので、内容規制と内容中立規制を区別するときは、まず「内容規制に当たるか」を検討して、内容規制ではないと判断した場合のみ内容中立規制と結論づけた方がよいです。

■ポイント②

また、内容規制か内容中立規制の判断をする際に惑わされないようにするため押さえておくべきポイントとして、表現の自由に対するインパクトは必ずしも内容規制の方が大きいとは限らないということです。

例えば、「日曜日の午前に政治的な番組をテレビで流してはならない」という内容規制と、「日曜日の午前にテレビ放送をしてはならない」という内容中立規制では、後者の方が表現の自由に対するインパクトは大きいです。

ですから、「表現の自由に対するインパクト(規制の強度)が大きいのに中間審査基準でいいのか」…と迷う必要はないと思います。

内容規制が内容中立規制よりも厳しい基準で審査されるべき理由は、表現内容それ自体が何らかの害悪をもたらす可能性は基本的にはないため(耳に入ったり目に入ったりするだけだから)、もしくは仮にそれがあるとした場合は個人の人格的自律性を否定していることに基づいているため、内容中立規制より内容規制の方が疑わしい立法である可能性が高いという(歴史的な)経験則に基づいているからなのです。
ですから、表現の自由に対する規制効果が大きいかどうかという観点はここでは直接的には関係ないのです。


この点は、誤解されることがあるので、頭に置いておくと良いのではないかと思います。


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