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寒くなり、色んなことがしたい。




カオナシがいて、スケボーに興じる半裸の少年たちと記念撮影していた。ハロウィン。

どの店もシャッターの降りた戎橋筋商店街で、音楽が聞こえてくる。
コンガのような打楽器と、ギターの弾き語りの演奏。取り囲んで踊る色とりどりの魑魅魍魎。
自分がどこにいるのか、ちょっと不安になる。




スポーツバーで、クラシコ観戦。ベリンガムのゴラッソに湧き上がる歓声で、鼓膜がちょっと変になる。
欧米系の男が、モニターに映るベリンガムを指して、オヤブン、と片言で呼ぶ。




カウンターだけの、狭いラーメン屋。
ホストグループが入ってきて満席になる。
きらびやかな男たちのなか、俺と友人の冴えない背中が二つ。

ホストの一人、袖を捲り上げた腕にいくつもの赤い線。傷跡にしては滑らかで、口紅か何かで描いたような。
客が戯れてやったのか、それとも、流行りの媚態の一つなのだろうか。

隣席のホストの伏せた手が、落とした視界に入る。
指に一文字ずつ、LIARと刺青。




コインパーキングまで歩く、堀江のひっそりとした夜道。友人が寒い寒いとしきりに辛がる。俺は暑いのが苦手で、なにかと意見が合わない。
夏生まれの自分と、冬生まれの彼と、生まれた季節が嫌いというその一点にのみ、胸の内で静かに紐帯を感じて。



寒くなり、色んなことがしたい。冬こそ人生。
空港に泊まりたい。旅行の予定も金もないけど、目的を持たない体で空港に行くのも、きっと寂しくて、いい。
動物園に行きたい。暑いと人間も動物じみるから、檻に隔てられた獣を鑑賞する空間は冬のもののような気がする。
グラタンを食べたい。グラタンって、幸せの同義語だ。



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