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モノローグ『お腹すいたよ。』

劇作家/映画監督/舞台演出家であり、日本のモノローグの第一人者である渋谷悠氏 @yshibu97 が開催された、オンライン脚本勉強会『モノゼミ』の<やってみよう回>~告白するモノローグを習得!~(https://shibushibuya.base.shop/)で、書いてしまったモノローグ(もどき)を掲載します。

私の創作は、こんな感じでしかないですが、他の受講生のみなさんはもちろんのこと、講師の渋谷先生の作品には、素晴らしく心を動かされるモノローグが目白押しですので、こちらでぜひ読んでみてください。https://note.com/yushibuya/n/n047ea326729f

第2稿

お母さん、お腹すいたよ。
あー、なんでまだ帰ってこないの。
もう、暗くなっちゃたよ。なんだか寒い。

まだ、怒ってるのかな。
怒ってるから、まだ帰ってきてくれないのかな。
でも、なんで怒られたのかわからないよ。
お母さん、お腹すいたよ。

お母さん、私のことが嫌いなのかな。
嫌いだから、いつも怒られるのかな。
私が、悪い子だから。
いつも、いつも、悪い子だから。
「お腹すいたよ」って言ったら、また、怒られるのかな。

お母さん、私のこと嫌いなのかな。
でもあの時は、ぎゅっとしてくれたよ。
いっしょに、海にいったあの日。
初めて、海に連れて行ってくれたあの日。
ふたりで、貝殻ひろったよね。白い小さな貝殻。
今でも大事に持ってるんだよ。私のいちばんの宝物。
ふたりで、だまって、海見てたよね。
暗くなっても、ずっと、ふたりで。
お母さん、泣いてた?
でも私、うれしかったんだ。ずっといっしょで。
私やっぱり悪い子だね。

そしたらお母さん、ぎゅっとしてくれた。
そして「やっぱり帰ろっか」て笑ってくれた。
ほんとうは、大事なことするはずだったんだよね。

お母さん、お腹すいたよ。
また、暗くなっちゃたよ。
もう帰ってきてくれないのかな。
私が悪い子だから、帰ってきてくれないのかな。
そして、いらない子だから。

お父さんが、とっても悪いことしたんだよね。
だから、私が生まれたんだよね。
お母さんが気付いた時には、もう遅くって。
だから、私は悪い子で、
だから、私はいらない子で
だから私が居るだけで、お母さん、
死ぬほど忘れたいそのことを、いっつも思い出しちゃんだよね。
ごめんなさい、お母さん。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。

お母さん、私のことが嫌いだよね。
私のことなんて、大嫌いだよね。

でもね、お母さん。でもね、早く帰ってきて。
だって私、お腹すいたの。

後記

しばらく時間を空けると、なにか新しいアイデアが出るかなと思っていましたが、初稿とあまり変わりませんでした。少し読みやすくはなったかしら。
とりあえず、このお話は、いったん完成といたします。

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