サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!第1009号『ゲーランダ・サンヒター』2:35

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  サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 2022.03.16.◆第1009号◇

  目次 

     ◎ ゲーランダ・サンヒター 2:35
◆ 本文 
◆ 単語の切れ目・意味
◆ 原文の語順訳
◆ 日本語訳
◆ ポイント解説
◆ 編集後記


=◎ ゲーランダ・サンヒター 2:35================

◆ 本文(原文)

画像1

atha uttānamaṇḍūkāsanam
maṇḍūkāsanamadhyasthaṃ kūrparābhyāṃ dhṛtaṃ śiraḥ
etadbhekavaduttānametaduttānamaṇḍukam (35)

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◆ 単語の意味(連声を切った後の、各単語の意味)

atha さて、それでは
uttānamaṇḍūkāsanam ウッターナ・マンドゥーカ・アーサナ、
ウッターナマンドゥーカーサナ
maṇḍūkāsana マンドゥーカ・アーサナ、マンドゥーカーサナ
madhyastham 中央にある、空中にある、中間の
kūrparābhyām 膝、肘
dhṛtam 把持する、支える、担う
śiraḥ 頭
 
etat これ
bhekavat 蛙のような
uttānam 広がった、上向きの、浅い、広く開いた、明白な、公開の、顕著な
etat これ
uttānamaṇḍukam ウッターナ・マンドゥーカ、ウッターナマンドゥーカ

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 ◆ 原文の語順訳(原文を原文の語順と発想のままで読むための訳)

  さて、ウッターナ・マンドゥーカ・アーサナである。
  マンドゥーカ・アーサナ・中央にある、両肘によって、把持して、頭を、
  これが、蛙のような、上向きの、これが、ウッターナ・マンドゥーカ・アーサナである。

 ◆ 便宜的な意味(上の訳を自然な日本語の語順、流れになおした訳)

  以下が、ウッターナ・マンドゥーカ・アーサナである。
  マンドゥーカ・アーサナの真中に、両肘で頭を抱えて、蛙のように
  上向きになる、これがウッターナ・マンドゥーカ・アーサナである。


 ◆ ポイント解説

マンドゥーカの次、ウッターナ・マンドゥーカ・アーサナです。間近にはクールマ → ウッターナ・クールマカ、ときて、マンドゥーカ → ウッターナ・マンドゥーカと続くという、わかりやすい構成ですね。

まず冒頭でマンドゥーカ・アーサナが元になることが説かれています。これも前節からの流れで内容も構成も理解しやすいですよね。

そしてこれまた既出の表現を用いつつ新しい単語を挿入しています。例えば「kūrparābhyāṃ śirḥ」はどこで登場したでしょうか?

これは2:21のマツヤ・アーサナで登場した表現で、そちらでは「veṣṭya 巻いて」という動詞が使われていましたが、大筋は同じと読めそうで、とするとマツヤとこちらのウッターナ・マンドゥーカとは腕の操作は共通すると読めそうですね。

動作解説はこれだけで、つまり下半身はマンドゥーカで、上半身はマツヤと同じ形になることがわかります。

問題は「ウッターナ」、つまりこのアーサナの眼目である「上向き」をどう捉えるかにあります。

James Mallisonさんの版には写真でアーサナの完成形が添付されているのですが、その写真では上体は頭が上に向いて上半身が真っすぐに立っています。試みにネットでアーサナ名で画像を検索しても、多くはこの形になっているのですね。

ところが、クールマとウッターナクールマカの形の違い、また「上向き」という点に鑑みると、これでは足りないのでは?と考えることもできますよね。とすると、このウッターナ・マンドゥーカでも、ウッターナクールマカ同様に上体は後ろに倒して、上向き、仰向けになると考えることもできそうです。むしろ流れからはこちらの方が自然に見えますよね。

また、腕の動作で共通点を見た、マツヤでもやはり「uttāna ウッターナ」という語が登場し、仰向けになったのでした。つまり、このウッターナマンドゥーカは、マンドゥーカのバリエーションであるとともに、マツヤのバリエーション(腕の形は共通で、足がマツヤはパドマであったのに対して、こちらは後ろに置く形)、であるとも考えることができるのですね。

わずかではありますが、ネットの画像でもこの形をとっているものがあり、それらが伝承によるものか、もしくはこのように文献から割り出して、「ウッターナ」を「仰向け」と解釈したうえでそのような形にしたのかはわかりませんが、少数ながら仰向けになる流れが存在するということです。

同じ文章から違った形が生まれるのもまたこのような文献の難しくも面白いところで、お読みの方はどちらが整合性を持ちそうなのか、ご検討くださればと思います。

もう一点、訳では「真中に」とした「madhyastham」は、佐保田さんは「なんのことかよく判らない」とされています。メルマガで底本に用いているChandra Vasuさんの訳ではこの語に該当する訳がなく、やはり適当な訳が見当たらずスルーしたようです。

これは底本によっては「bandhastha」となっていて、それだと2:33のクックタ解説でも同じ「kukkuṭāsanabandhasthaṃ」という表現になっていて、こちらの方がわかりやすいと言えます。

これも「madhyastham」ではどう読めばよいのか、これは誤字なのか、それとも正しい読み方があるのか、などご検討くださればと思います。
 
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  詳細解説はブログで

  https://note.com/sanskrit/n/n4ede84f58576

                       (第1009号 完)
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         発行者  誠  samskritamakoto@gmail.com

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