サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!第918号『ゲーランダ・サンヒター』1:9
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サンスクリット原典で、読んで、学んで、深めるヨーガ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 2021.12.01.◆第918号◇
目次
◎ ゲーランダ・サンヒター 1:9
◆ 本文
◆ 単語の切れ目・意味
◆ 原文の語順訳
◆ 日本語訳
◆ ポイント解説
=◎ ゲーランダ・サンヒター 1:9 ==================
◆ 本文(原文)
अथ सप्तसाधनम्
शोधनं दृढता चैव स्थैर्य्यं धैर्य्यञ्च लाघवम्।
प्रत्यक्षञ्च निर्लिप्तञ्च घटस्य सप्तसाधनम् ॥९॥
atha saptasādhanam
śodhanaṃ dṛḍhatā caiva sthairyyaṃ dhairyyañca lāghavam
pratyakṣañca nirliptañca ghaṭasya saptasādhanam (9)
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◆ 単語の意味(連声を切った後の、各単語の意味)
atha さて、それでは、その時
sapta 7
sādhanam 征服、支配、成就、完成、履行、達成
śodhanam 浄化の方法、浄めること、除去、清算
dṛḍhatā 堅固なこと、忍耐
ca また
eva 実に、まさに
sthairyyam 堅固さ、定着、固定、安定性、持続、不動、恒常、忍耐
dhairyyam 堅固、恒心、荘重、頑固、勇猛
ca また
lāghavam 迅速、安楽、慰安、軽いこと、簡潔
pratyakṣam 管理、証拠、直接の知覚、認知
ca また
nirliptam 汚れのない
ca また
ghaṭasya 身体
sapta 7
sādhanam 征服、支配、成就、完成、履行、達成
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◆ 原文の語順訳(原文を原文の語順と発想ままで読むための訳)
さて、7・行法である。
浄化、堅固、また、実に、安定、安静、また、軽快、
知覚、また、非染、また、身体の、7・行法である。
◆ 便宜的な意味(上の訳を自然な日本語の語順、流れになおした訳)
以下が、7つの行法である。
浄化、堅固、また実に、安定、安静、また軽快、
さらに知覚、また非染、これらが身体の7つの行法である。
◆ ポイント解説
前節までに前説的な内容が繰り広げられましたが、ここから具体的なヨーガの行法が語られ始めます。
冒頭の「atha」は翻訳ではわかりやすく「以下が」としていますが、単語欄にあるように「さて、それでは」などを意味し、著作の冒頭や、ここで見るように著作の中でも話題を仕切りなおすような場面で用いられます。ヨーガスートラをお持ちの方はヨーガスートラがこの語で始まることをよくご存じと思い、またプラディーピカーなどハタヨーガ文献でも頻繁に登場した単語でお馴染みかと思います。
そして、「saptasādhana」が提示されています。これも単語欄にあるように「sapta」は数字の「7」、「sādhana」は「征服、支配、成就、完成、履行、達成」などを意味しますが、ここではひとまず「行法」としています。これもヨーガスートラをお読みの方なら、ヨーガスートラの第二章がこの語を用いて「sādhanapāda」と通称されることをご存じかと思います。
そして具体的に7種が列挙されています。ここではひとまず便宜的に訳語を充てています。
できればヨーガスートラ解説などで用いたように、カタカナでそのままに置いておきたいのですが、例えばヨーガをされる方の中では比較的日本語として認知されているであろう、ヤマ、ニヤマ、アーサナ・・・などの語に比べて、ショーダナ、ドリダター、スタイリャ、ダイリャ、ラーガヴァ、プラティヤクシャ、ニルリプタ、はわかりにくいと思い、カタカナで列挙すると馴染みのなくわかりにくい語の羅列になるので、ひとまず直訳的な語を充てておきました。
これらはこれからさらに個々に具体的に語られるものと思い、固定した訳語で考えるより、先を読み進めてからここに立ち返って個々の内容を吟味し、訳語を決定しても良いでしょう。
余談ながら、私のヨーガスートラ解説の『講義』には書いたのですが、このようにまず具体的に数を挙げつつ何かの事項を提示し、さらにその後に具体的に個々の事項が語られていくという手法は、ヨーガスートラはじめヨーガ文献では頻出の手法ですよね。ヨーガスートラやプラディーピカーなどをお読みの方は、ここでどんなものがあったか思い浮かべてみてください。いくつか思い浮かびますよね。
このまず初めに数を提示して、その後に個々に具体的に語っていくという手法、どこかで覚えがありませんか?
これは良いとされる話し方や、プレゼンの方法として、「まず言いたいことは3つあります。ひとつめは~、ふたつめは~、みっつめは~」と、冒頭で数を挙げて、その後に具体的に個々の事項を語っていくと良い、というようなことをどこかで読んだり聴いたりしたことはありませんか?
ここでゲーランダが、またヨーガスートラ他の文献が用いている手法と全く同じなのですね。現代において良いプレゼンの方法とされる手法を、これらの文献はとっくの昔に確立して多用しているわけです。
これらは物事を語り伝えるという作業を考えた時に、最も伝えやすく、わかりやすく、覚えやすいなどの方法として練り上げられていったら自然にこうなったのでしょう。逆にゲーランダのこの部分に接することで、よい話し方、よいプレゼン、良い発想方法などの精髄を学ぶことができるわけです。
このような文献に接する時は、内容だけでなく、このような内容の外側を形作る体裁まで読み取ってあげると内容にプラスアルファの学びができるのではと思います。
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詳細解説はブログで
https://note.com/sanskrit/n/n4ede84f58576
(第918号 完)
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発行者 誠 samskritamakoto@gmail.com
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