【”シン・サンシン”プロジェクト01】シン・三線補完計画を考える

 さてみなさんこんにちは

 毎度おなじみ左大文字です。

 先日も、このnoteで「三味線はもう終わりかもしれない」というヤバいお話を書きましたが、

邦楽業界は、衰退の一途をたどっているようです。

 それがどれくらいヤバいのか、ということで、実際の数字を調べてみました。


 邦楽専門誌の「邦楽ジャーナル」さんは、私も取材を受けたことがある、業界では唯一といってよいほどの情報誌ですが、邦楽ジャーナル調べでは、2018年4月に記事が出ています。

■ 1970年の三味線出荷台数 18000丁

■ 2017年の三味線出荷台数 3400丁

 ちなみに箏についてのデータもあって

■ 1970年の箏出荷台数 25800張

■ 2017年の箏出荷台数 3900張

だそうです。

 いずれもひどい状態だとわかります。

 似たデータですが「全国邦楽器組合連合会」が調べたデータでは

□ 1970年の三味線出荷台数 14500丁

□ 2017年の三味線出荷台数 1200丁

というのもあります。これは組合加入のお店のデータでしょうか。


 年間1200棹しか出ないというのは、仮に一棹10万円としても1億2千万円分しか市場がないということです。私が勤めている従業員10人以下の小さな会社でも、年間売上が数億あるわけですから、これは異常な事態だとわかると思います。


 ところで、『三味線は終わり〜』の記事でも「沖縄三線はまだマシ」ということをちょっとだけ書きましたが、これもデータがありました。

 私が三線コード弾きを公開して10年以上が経つのですが、公開を始めたその頃は沖縄ブームもあって「年間3万棹」というのがひとつの目安でした。

 それに対して近年、沖縄県三線製作事業協同組合が調べた結果では、

■ 2018年の三線出荷台数 25000棹

とのこと。沖縄ブームはいったん終息しているものの、まだ需要が落ちずに続いていることがわかります。

(こちらを単価3万としてみると7億5千万の市場です。単価5万だと12億5千万です。まだ、ギリ食っていけそうな気もします)

 おなじく協会調べでは、沖縄県内に現存する三線の数は、

■ 2016年の県内三線保有台数 82万棹

だそうですので、本州サイドのブームは別にしても、こちらはまだ短期的には崩壊せずに済みそうだとわかります。


 沖縄県に限れば、三線かいわいはまだ業界が成立しそうですが、それと比較すると本州全体を含めた「三味線・箏かいわい」はもはやオワコンであると言わざるを得ません。

 これはたぶん、元には戻らないと思います。「かやぶき屋根の家」くらいの絶滅危惧種文化にならざるを得ないでしょう。悲しいけれど。


(実はピアノですら、おなじ傾向らしいです。

■ 2000年ピアノ出荷台数 5万台

■ 2017年ピアノ出荷台数 1万6千台

【ヤマハ・河合の合計データ】

 ただし、元の単価が高いので、それでも50億市場にはなる)


 こうした状況を打破するために、これまで業界関係者はいろいろ苦労や工夫をしてきたのですが、全体像としては、少子化もあるし、経済全体が右肩下がりなので、基本的には「無理ゲー」であることは否めません。

 ちなみに私は業界関係者ではなく、ただの三味線好きの変態のおっさんなので、私が頑張ってもたいした力にはならないのですが(苦笑)


 それでも大好きな三味線・三線文化を隆盛させたいので、唯一の希望を考えてゆきたい、というのがこの「シン・サンシン」プロジェクトのシリーズです。

 唯一の希望!


 それは、無謀な挑戦であることはわかっての発言ですが、

「三線を世界楽器にする」

ということです。これしか打破する道はないと思います。


 えーっと、ここで最初に残念なお知らせですが、三味線はそのままでは世界楽器にするのはしんどいと思います。(爆死)

 その理由は、なんぼでも数え上げられるのですが、いくら海外で三味線の超絶演奏がyoutubeでウケても、皮の張替えが発生する以上はしんどいです。

 うちの三味線たちもそうですが、皮がダメになる度に弾かなくなります。結局、三味線サイズは「ゴッタン」などの”皮がそのまま維持される楽器”しか弾かなくなるので、これはもし海外に出て行っても同じだと思います。

 三味線好きの私ですらそうなのだから、一般の人はもっとそうです。そうに違いありません(←断言?)


 その点、沖縄三線は、人工皮・ナイロン皮を搭載したものは、楽器の寿命と皮の寿命がほぼ同じで、ノーメンテで海外に送り出せるのです。

(三味線も人工皮がありますが、人工皮の材質や貼り付けの仕様上、「ノーメンテ」とはいかない気がします)


 とすれば、目標とするのは

「スペインの片田舎の楽器だったギターが世界楽器になったように」

「三線(系)楽器を世界楽器にする!」

というのが現実的でしょう。

 もしかすると、世界楽器になったあかつきには「蛇皮模様じゃないかもしれない」ぐらいの変化はあるかもしれませんが、それでも三線系楽器であれば、世界に通用するのではないか?とめちゃくちゃあまーい目論見で、この連載はスタートするわけです。


 これぞ、題して「三線補完計画」のはじまりはじまり〜。


(つづく)






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