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【”シン・サンシン”プロジェクト05】三線の工工四には、なぜ2つの尺があるのか

 前回の記事で、三線や三味線楽器にも「スケール」という考え方が適用できることを説明しました。

 そのスケール理論を応用すると、沖縄三線の理論の中でも、あまりはっきり説明されていない「尺」のポジションが2つある理由がきちんとわかるので、今日はそのお話をします。

 

 このお話は動画にもしていますので、YouTubeをご参考になさってください。



 まず、三味線系楽器の「本調子」はCFC(ドファド)で調弦することが多いです。これは、楽器の開放弦で言えば、

<細い弦>   C(ド)

<真ん中の弦> F(ファ)

<太い弦>   C(ド)

と並んでいるということです。


 ところが、三線の工工四は、実は

<細い弦>   G(ソ)

<真ん中の弦> C(ド)

<太い弦>   G(ソ)

に見立てて弾いている楽曲もあります。

 つまり「ド」の位置を2つ設定してあり、それは曲によって異なるということなのです。

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 ドレミの音階は「ミ」と「ファ」の間と、「シ」と「ド」の間だけが半音で上がり、それ以外は全音(半音2つ分)で上がります。

 つまり、ドを太い弦の開放弦に見立てると、尺は右側にズレます。

 逆に、ドを真ん中の弦の開放弦に見立てると、尺は、本来の工工四シールの位置に収まることになります。


  前回の動画で、スケール理論を当てはめると、”沖縄音階は、0と4と5のラインで押さえる”、という話をしました。

 ということはつまり、三線の工工四は、もともとは

「ドを真ん中の弦の開放弦に見立てて弾く設定」

だったことがわかります。

 それが、楽曲のバリエーションが増えるうちに

「ドを太い弦の開放弦に見立てて弾く設定」

が生まれたのかもしれません。


 もともと三味線楽器は、歌い手に合わせてキーを上下に変更する楽器ですから、本来の「ド」がどこにあるかなんて気にしません。ただ、音階の並びだけが重要で、上下自由に移調する楽器なんですね。

 それでも音階の並びは定まっているため、本調子の場合は3つの弦のうち、(とはいえ、2つはおなじ音なので)どこか1つを基準のドに見立てる必要があったわけです。

 なおかつ太い弦と細い弦は同じ音のため、結局「太い弦がド」か「真ん中の弦がド」のどちらかになってしまう、ということなのです。


 工工四に「尺」が2つ生まれたのは、ある意味必然だったのでしょう。

 おもしろいですね。



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