【特集】 トイ・レコードメーカーとLPステレオの思い出

 なつかしの「科学と学習」でおなじみの学研さんから「大人の科学」シリーズの最新作として「トイ レコードメーカー」が発売された。

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 実は発売日は2020年の3月だったのだが、先行予約分と即売れ切れ状態で、気がついた時には再販予約待ちという状況。その再販分がこの6月になってようやく届き始めた様子だ。

 私も注文した時には一足遅くて悔しい思いをしたのだが、やっとこさうちにも届いて作りはじめている。


「手作りでレコードを刻む」

というワークは、ほんもののレコードを知っている世代のおっさん(いやもう初老を迎えておじいさんに差し掛かっている人も多いかもしれない)にとっても、あるいは初めてレコードに触る人にとっても、

 なんともいえないときめきや高揚感

をもたらすものだと思う。


 団塊Jr世代である左大文字でさえ、父が持っていたステレオと、数十枚のレコードたちを「こどもの頃に」聴いただけかもしれない。

 もちろん、自分でレコード盤に針を落としたこともあるし、エチケットブラシのこどもみたいなやつで、盤のほこりをぬぐってからターンテーブルに乗せた記憶もある。

 それでも、時代はすぐに「カセットテープ」へと移行し、思春期のころにはCDラジカセやミニコンポになり、ウォークマンを経て、ipodへと変わってゆく。

 レコードは、子供のころの思い出とともに忘却のかなたである。


 その父も死んでずいぶんと時が経ち、父が使っていたSONYのLPステレオを先日ようやく処分して廃棄した。ターンテーブルはすでに故障していて、数度の引越しの都度にスピーカーが無くなり、アンプが消えしていたので、すでにレコードプレーヤー部のみになっていたのだが、それをようやく捨てることになったのである。

なぜプレーヤーのみが残っていたかというと、

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 ↑ のせいだ。

 いちばん上の、おなじSONYのHDレコーダの空き箱は無関係だが、大掃除のときの写真なのでご勘弁。

「 MBS ヤングタウン 1179」のステッカーが、レコードプレーヤーに貼ってあるのがわかるだろう。40年前のステッカーだ。

 これは1979年、私がおそらく毎日放送史上最年少?で、MBSヤングタウンに電話出演したときの、ごほうびである。

 当時私は5歳。1年制の幼稚園に入学する直前であったが、あのねのねの原田信郎さんがMCを務めるヤンタンに電話で出たのだ。


 関東では、オールナイトニッポンを知らないおっさんは”もぐり”だと思うが、関西ではヤンタンを知らないおっさんは”もぐり”である。

 当然、1970年代に新婚夫婦で、長男である私が誕生したヤングでナウなカップルであった両親は、深夜ラジオを聴いていた。

 そこで今でいう視聴者投稿のノリで、口達者な「うちのこども」をラジオ局に投稿して、めでたく出演と相成ったのである。

 その放送を、LPプレーヤーと、ラジオだけがついた大きなステレオで聴いていた、という時代であった。

 だからこのプレーヤーには、ヤンタンのステッカーが誇らしげに貼られていたのである。


 さて、プレーヤーは廃棄してしまったが、ステッカー部分はプラスチックのカバーの一部ごと切り取って、保存してある。どうしても捨てられなかったのは、私の子供時代と両親の青春時代が詰まった象徴のように思えたからである。


 さて、小学生になると、理科大好き少年となった僕は学研の「科学」のみを定期的に買ってもらっていた。これまた懐かしい「学研のおばちゃん」が近所にいて、待ちきれない僕は毎月、おばちゃんが家にやってくる前に、直接おばちゃんの家に行って「科学」を受け取っていた。

 実は親戚のおばちゃんも、以前に「学研のおばちゃん」をしていたことがあったらしく、古い「科学と学習」をもらってきては読み漁っていたことも思い出す。

 「科学のふろく」は男の子にとって宝物である。白黒カメラと現像セットやら、それこそAMラジオやら、いろんな科学教材を作っては改造したり楽しんだ。今、楽器づくりやモノづくりをしているのは、その頃の影響が多分にあると思う。

 その後、大学生ぐらいになった私は秋月電子に入り浸っては、自分でテレビを作ったり、ギターのエフェクターを作ったり、わけのわからん電子回路を組むようになったのだから、絶対にそうだ。


 トイ レコードメーカーが届いて、捨てたばかりのレコードプレーヤーのことを思ったり、ヤンタンのことを思い出したり、「科学」の思い出に浸ったりしている。

 小学生になったうちの子供と一緒に楽しんでいるが、長男が先日

「鉱石ラジオを作りたい」

と言い始めた。あるある。ゲルマニウムダイオード1N60が、たしか物置に転がっているはずだ。 


 父と僕の時代とは違い、すっかりスマホの時代になってしまったが、アナログモノづくりは、まだしばらく廃れそうにはない。そんなことを思い出させてくれた、トイ レコードメーカーであった。


(了)


 


 

 


 

 

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