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パラの世界へ!!!

こんにちは。
祐和會所属の中尾有沙です。

5年前に脊髄損傷のケガをして、車いすでの生活となった私は、今、パラスポーツの一つ“パラ陸上競技”の選手として、競技用のレーサーに乗って大好きな陸上競技場を走っています。

ですが、脊髄損傷のケガからしばらくの間は、自分が車いすでもスポーツをするなんて、全く想像していませんでした。

私は、割とスムーズに脊髄損傷のケガと障がいを受け容れて過ごして(というより仕方ないことだと諦め付き合って)来たと思っています。

それは家族やまわりの人たちも同じで、ケガを悔やむより新しいことへの挑戦を一緒に楽しんでくれました。

パラスポーツへの挑戦を勧めてもらう機会も少なくありませんでした。
早い段階で、ケガをポジティブに変換しようとしてくださる方々に大きく励まされましたが、私はこれから始まる車いすでの人生で、新たなスポーツに挑戦する気にはなれませんでした。

その理由は…
「我が陸上競技(跳躍)人生に悔いはなし」
というと大袈裟ですが、ケガをするまでの競技人生を振り返ると、満足感で溢れていました。

ジュニア期から両親の元で。大学ではたくさんの仲間と。大学院以降は自分自身と向き合いながら。卒業後は会社の後押しを力に加え。

一つの“作品”を作り上げてきたようなイメージでした。

そして、2015年に夢だった日本一を成し遂げたことで、次のステップを目指し長く競技を続けたいと思う一方で、どこかで区切りを考え始めた自分もいました。

そんな時の怪我だったので、

「これで心置きなく競技から離れられるかな」

なんてことを、手術後ベッドの上で思ったのを覚えています。寂しさと、ホッとした気持ちと、すごく穏やかでした。

ここまでで、なんとなく、車いすでの競技スポーツに挑戦する気持ちになれなかった理由を感じていただけるかなと思います。

それにプラスして、そもそも「走る」「跳ぶ」以外のスポーツ(特に道具を使うスポーツ)が壊滅的に苦手だったことも大きな理由の一つです。


そんな私が、車いす陸上を始めることになった最大の原動力は、ただただ「陸上競技から離れたくない」という思いでした。

パラスポーツのことを考えもしなかった時期から、私は陸上クラブ“あそりく”の子どもたちの指導は、何があっても続けたいと思っていました。
それでも充分陸上競技とのつながりは持てるのですが…

1月にケガをして、2月に転院をして、リハビリが少しずつ進み、自分で車いすを漕いだり、筋力トレーニングをしたり、軌道に乗り始めたのが3月。


それまでの私にとって春は、もうすぐ始まるシーズンに向け、心も体も準備を始める時期でした。

「暖かい日が増えて春の匂いがしてきたな」
「桃や梅の花が咲いてきたな」
そんな感覚的な刺激で、気持ちが動き始めます。

ケガをした年も、同じでした。

ケガをして足が動かないのに心は例年通りそわそわと、動き始めました。

そして、
「私ももう一度スポーツ、やりたい!」
と思ってしまいました。

スポーツをするなら、陸上競技場で走ることができる“車いす陸上”しか選択肢はありませんでした。

「車いす陸上を始めるとなると、道具が必要だよね」
「どこに行けばできるんだろう」
「退院したらやってみたいね」
「まずは、のんびり色んなマラソン大会とかに行けたらいいね」

両親とパラスポーツの話をする機会も増えてきた、ちょうどその頃のことです。
私の病室に、車いすマラソンの第一人者である山本行文さんが来てくださいました。

驚きのタイミングでした!

山本さんも脊髄損傷で車いす生活をされていて、生活する上で不安や悩みがあれば相談に乗ってくださること、車いすスポーツも車いすでの人生を豊かにする助けとなること、などをお話してくださいました。
その後、入院中に競技用車いす“レーサー”を体験

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退院後、山本さんのもとで体づくりトレーニングを開始。自分の体に合ったレーサーも作成していただき、2017年5月にはパラの大会へ初出場。

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2019年は初の海外遠征…

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あっという間に、パラの世界へ飛び込み、時間が過ぎました。

のほほん♪とイメージしていた部分を一気に飛び越え、はじめから本格的なパラ陸上競技へ挑戦することができました。

パラスポーツに興味を持ったタイミングで、山本行文さんという偉大な方に出会えたことが、私の車いすでの人生を大きく前に進められたと思います。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

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このように振り返ると、あっという間の出来事です。
私にとって、一度足踏みを止めたスポーツに再度挑戦することは簡単なことではありませんでした。今でも陸上競技や跳躍とのつながりを探し、悩みながら走っています。それは遠回りになることもあるかもしれませんが、競技が変わっても、同じように自分のからだと向き合うことができる。
悩めることさえも、幸せです。

跳んでいた時と同じ気持ちで、スタートラインに立てる日を目指して、これからも頑張りたいです。

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長くなりましたが、新年度も目の前ですね。
気持ち新たに、健やかに、過ごせますように。

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