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新人PdM向けジョブ理論の実践トレーニング


自己紹介

こんにちは。営業DXサービス「Sansan」のプロダクトマネジャー(PdM)を務める乙幡(@yu_pata98)です。ビジネス職としてSansanに新卒入社し、2年目にPdMにキャリアチェンジしました。

本記事の背景

SansanのPdMは、ジョブ理論を共通言語として活用しています。ジョブ理論の概要や実践方法は以下の記事に記載しています。

SansanのPdMになった直後のメンバーはまずジョブ理論をインプットするのですが、しばしば言語化したジョブの主語が曖昧になるという問題がよく発生します。
例えば、プロダクトのSansanには商談の議事録を記載できる「コンタクト」という機能があり、商談の議事録を残し、社内で共有することができます。
この機能の登場人物としては「議事録を記載する人」と「記載された議事録を読む人」がいますが、両者を混同した状態でジョブを言語化してしまうことがあります。
最近私がメンターを務める新メンバーも同じ問題を抱えていたため、この問題はPdMとしての初期段階でよく見られるものと考えています。今回は、この問題を解決するためにSansanのPdMが採用しているトレーニング手法を紹介します。

実施しているトレーニング

私たちはSansanの既存機能に関連するジョブを言語化するトレーニングを実施しています。具体的な手順は以下の通りです。

  1. Sansanの既存機能に関連するジョブの仮説をリストアップします。リストアップされた仮説の項目には、ジョブパフォーマー、状況、動機、期待する成果、障害物、代替手段などが含まれます。ジョブの仮説フォーマットについては以下のハヤカワさんのnote記事で詳しく解説されています。

  2. 書かれたジョブの仮説をもとに、他のメンバーがレビューします。

トレーニングの効果

  • 登場人物を可視化することにより、主語の混同に気づくことができるようになる。それにより、対象の機能がどんな状況で誰に使われているかが明確になる。また、機能が開発される前のユーザーの代替手段を考えることで、ニーズの強さを意識するようになる。

  • ジョブの仮説に対して「本当にそうなのか?なぜ?」と深掘りすることにより、説明できない(=理解の浅い)内容に気付けるようになる。また、練習を重ねることにより、自分自身で批判的に考え、ジョブを深掘りできるようになる。

具体例

私たちはSansanに登録した人物が退職した事実を記録できる機能に関するジョブを考えてみました。この機能を利用することにより、営業担当者は取引先の人物が退職したことを知った際に、Sansanに記録を残し、社内で共有することができます。
以下はとあるメンバーの一例です。
最初に立てたジョブの仮説は以下の3点でした。

  1. 営業担当者は企業の引き継ぎを行う際に、新しい担当者が既に退職している元顧客担当者に誤って営業活動を行うことを防ぐため、退職した事実を記録したい。

  2. 大手企業の営業担当者は、頻繁に連絡を取っていた顧客担当者が退職した際、他プロダクトの営業メンバーが誤ってその顧客を営業対象にしてしまうことを避けるため、退職した事実を記録したい。

  3. 営業担当者は顧客担当者が退職した情報を得た際、その情報を記録しないことで起こるメール配信担当者との不要なトラブルを避けるため、退職した事実を記録したい。

他メンバーからは「ユーザーはユーザー自身にメリットのないことをやろうとしないのではないか?」とレビューされ、3つ目の仮説が最も有力だろうという結論になりました。
社内でユーザーインタビューをして確認してみると、ユーザーはメール配信の担当者に注意を受けたくないため、退職事実を記録していたという事実が判明しました。

実際に使ったジョブの仮説シートです。

おわりに

今回ご紹介したトレーニングを行うことにより、ジョブの仮説をアウトプットするだけでなく、他者のアウトプットに対してレビューをする経験ができます。そのため、自分がアウトプットする際に批判的な視点を持つことに意識を向けることができます。
多くの企業でPdMの育成に取り組んでいると思いますが、自分自身が苦労した経験から得た知見を共有することで、同じような課題を抱える方々の参考になればと思います。この記事に関して、他にも提案や意見があればぜひお寄せください。
また、弊社Sansanにてイベントを開催します。私と同じタイミングでPdMになった佐々木 寛也が一年間の自身の成長と挑戦について登壇します。PdMにチャレンジしている方、またPdMにチャレンジしてみたい方など、ぜひご参加ください。

関連情報

Sansan株式会社のプロダクトマネジャーについての情報を集約しています。Sansanのプロダクトづくりに興味がある方は、ぜひご確認ください。

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