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まちを、あつめる

物心ついた頃から、旅先でタダでもらえる紙類を集めるのが好きだった。切符、動物園のチケット、箸袋、紅茶のタグ。思い出のかけらで、そこでしか手に入らないから、普段生活範囲が狭かった女の子にとっては貴重な品々。

中でも観光地の見所を示した地図が特にお気に入り。無料でいただけるパンフレットにのったその土地ならではの素敵な場所を教えてくれる絵地図。上から見る、ことで鳥のように自由にあちこちを見渡せる楽しさ!

なので各地に行くたびに絵地図をもらって貯めているのだけれど、年齢を重ねてそれなりの数のコレクションになってしまっている。処分してしまったものもあるけれど、捨てられない絵地図もたくさん。初期のディズニーランドの園内マップ、小田急ハイキングマップ、金沢てくてくマップ、尾道ロケ地イラストマップ、お遍路のすごろくのような絵地図。特に、歩く人に向けたものが好き。

私が旅をしていた当時は、なのかもしれないけれど、外国では意外といい絵地図はなくて、地図も適当なことが多い。そもそも、無料で手に入れることができるリーフレットのようなものがあまりない。だから、日本は地図パンフレットを集めるには最高の国かも。

そのうち素敵な絵地図は買っても手に入れるように。大好きな絵地図作家の村松昭さんの絵地図はたくさんあるし、思いがけず手に入れた久芳勝也さんの箱根の絵地図も宝物。

では、私のコレクションのなかでとっておきのお気に入りをご紹介します!

小川町散歩絵地図


◯小川町散歩絵地図 小川町観光協会発行
絵本作家として知られている菊池日出夫さんのほのぼのとした絵が最高で、見ているだけで小川町ののどかな空気が感じられる一枚。

かつて、埼玉県小川町を訪れたときにもらったもので、2色刷りの裏面には小川町伝言板として、行事カレンダーや名所の詳しい解説、おすすめコースの紹介もあって充実しています。

和紙の町だからか、(和紙ではないにせよ)とても質感のよい紙です。


花へんろMAP

◯谷中・根岸・上野 花へんろMAP
 茶房花へんろ発行 
谷中にあった喫茶店で、確か無料でいただけた絵地図で、私の大学院の先輩でもある椎原晶子さんが制作したものです。椎原さんは当時、谷中学校やなかがっこうというまちづくりの拠点でお仕事しておられたように思います。谷中あたりの絵地図にはいいものがたくさんありますが、これが一番のお気に入り。

絵地図に書かれた町歩きの作法は、私も常に気をつけていることで、大事なことだと思っているので、私の絵図にも同じような心得を入れさせてもらいました。

裏面には花ごよみや歳時記があり、花を意識した案内になっています。

このお店はもうなくなってしまったようなのが残念。


鎌倉のさんぽ道地図

◯鎌倉のさんぽ道地図
編集・企画・構成・取材
佐木宗夫、殿山晃世、長谷川隆一ほか
鎌倉をこれほどわかりやすく描いた絵地図はない、というほど簡潔に描かれた町並み。惚れ惚れするほど美しい寺院や山々。実際に描いてみると、これだけの縮尺差を絶妙に上手く1枚に収めるのは至難の業だとわかる素晴らしいバランス。

ただし、情報はかなり古いので、ハイキングのルートなど、今はない、または通れないところはたくさんあって、実用には向かないのが残念。けっこう前に鎌倉のキオスクなどで購入したような気がします。

2色刷りの裏面の散策案内のまわりに描かれた鎌倉の生き物、植物もいい感じ。

深野散策絵図

◯深野散策絵図
絵・文字:森谷あつこ 
編集:やすみやかつゆき 他
SNSで知った絵地図作家の森谷さんに私の絵地図と交換で送っていただいたご自身作の絵地図のなかのひとつです。どれも丁寧な取材がされていて、他から来た人が知り得ない情報満載。

特にこちらの絵地図は裏面の深野新聞が読み応えあり。絵地図に描かれた地域では無料配布されているようですが、まだ訪れることができていないのが残念。森谷さんは三重県の近隣地域でいくつもの絵地図を制作されています。観光地など書籍や雑誌などで紹介されることの多い地域よりも、こういうあまり訪れる人も少なく、情報も少ない小さなまちこそが、絵地図にする価値があるのだと思います。

熊野古道大辺路おはなし絵地図

◯熊野古道大辺路おはなし絵地図
絵地図制作:いこまわかこ
各地に伝わる「おはなし」に焦点をあてた絵地図で、絵巻物ふうの細長い形もユニーク。
一巻を読み通せば、時空を旅した気分にもなります。

ちらりと見かけた写真をもとに探してとりよせました。書籍ほどのお値段はしますが、それも納得の情報量。手書きの文字も素敵。

熊野古道は歩いたことがあるのですが、この大辺路みちはまだ歩いたことがありません。
歩いたからこそつくれる絵地図、本当は、ぜひ歩きながら見て堪能したいです。

同じ場所を何度も訪れていると、地図もアップデートされていて、まちがいさがしのようにも楽しめたり、別の切り口で同じ場所を描いた絵地図を比べてみたり。

まちの動きや、流行まで読み取れるのも絵地図の面白いところ。

そう思えば、絵地図コレクションはまちを集めているようにも思えて、これってなかなか王様気分にもなれる優雅な遊びだわ、とひとりごつ。

よく考えてみれば私が素敵だと思ったまちをスケッチしたり、絵地図にすることも、まちを集めていることに他ならない、と思えてきました。まちを持ち帰ることはできないけれど、絵地図なら、そうやって自分好みのまちを集めることができる!

そんな言い訳しながら、今日もどこかで無料のパンフレットを物色しています。

#私のコレクション

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